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柳浦…?

一応、進学してます



例え、出会った時にはもう終わることの決まっていた話だったとして。
残された時間が僅かだったとしても、僕は何度でも君を愛してしまっていたと思う。


高校を卒業して、各々の進路へと歩んだ僕ら。
仙石くんや堀さん達は大学へ、吉川さんは専門学校へ。中には就職をしてしまう者もいたけど、それで縁が途切れる訳でもなく、たまに意味もなく当時のように集まっては近況報告をする、みたいな流れが自然と出来上がっていた。


最寄りの大学に無難に進学した僕は入学から二ヶ月くらいが経った頃、時折見かける緑色の頭に、その帰り道が井浦くんと被ることに気がついた。
確か、井浦くんは此方の大学じゃなかったような、そんなことを考えながら聞くタイミングを逃し続け、いつの間にか習慣となっていたホームでの挨拶を行う。

「井浦くん、」

声をかけると驚いたように顔を上げ、でも次には安心したように弛緩させる。
冬でも厚着を好まない井浦くんの服装はいつも薄く、よく鼻の頭を真っ赤に染めている。それは今日も例外ではなかった。
「なんだ、あかねか……今日は早いんだね」
「はい、井浦くんも早かったみたいですね」
いつもより三十分だけ早く切り上げてもいるということは井浦くんも早くに終わったということだ。
何が、とは言わないが。
でも井浦くんは僕の言葉にピクリと眉を動かすと、気まずそうに視線を左右に揺らしながらゆっくりと口を開いた。
「……いや、その……今日は、あかねを待ってた」
恥ずかしいのか、頬を染めながら言う井浦くんに不覚にも此方まで恥ずかしくなる。
目を見るのが照れ臭くなり、つ、と視線を下に落とすとそこには、指先を袖口に隠しながら寒そうに擦りあわせる姿。
そこでふと疑問が起こる。
待ってた、とは具体的に何時くらいからなのだろう。今はもう冬といってもいいくらいの時季だ。外の、こんなホームに長時間いろと言われたら僕だって断るような、そんな寒さだ。
「井浦くん、何時から居ました?」
ぎゅっと手を握り込むと、案の定冷たい手。
井浦くんは申し訳なさそうな顔をしながら、「一時間くらい」と呟いた。
少なくとも一時間以上、それだけ頭にインプットしておく。
「自販機、何か温かい物を買ってきます」
「え、」
「そんなに冷やして、身体を壊したらどうするんですか。僕が帰ってくるまでじっとしていてください」
井浦くんが変に理屈をごねる前に巻いていたマフラーを首に回して、そのまま自販機へと移動した。





前に一度、皆で集まった時、井浦くんが席を外したのを見計らって石川くんに訊ねたことがある。

『井浦くんは、バイトしてるんですか?』

でもそれに石川くんは歯切れの悪い、罰の悪そうな顔をしながら、苦虫を潰したよう、憎々しそうに、つまりあんまり話したくないと言わんばかりに呟いた。

『彼奴、最近なんか付き合いわりぃんだよな。
この間なんか、俺が会おうって言ったのに忙しいとか言いやがってよ。でも、皆でこうして集まる時は何とかして都合付けてるみたいだけどさ。
あぁ、でも、一回だけ遊びに行った時、血相を変えた北原くんが追い掛けてきたことがあるっけな』




―――――――………


続くかなぁ…







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