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姉ちゃんの彼氏を初めて見たとき、すげぇ悔しくなったんだ。
嗚呼、姉ちゃんはそういうのが好きなの?
俺は、好きじゃない。
俺とは全く違った彼を見て、遠回しに姉ちゃんから好きじゃないって言われた見たいで泣きたくなった。

知ってるよ。
これは抱いちゃいけない感情なんだ。
忘れなきゃ。

でも、な。
姉ちゃんの無邪気な笑顔とか、無防備な姿を見るとどうしようもないくらい苦しくなる。

どうしてなんだろう。
苦しくて苦しくて、痛くて。


「北原さん?何、もとはその人のことが好きなの?」

弟の膝の上で寛ぎながら、プリンを食べていた井浦は驚いたように固まってしまった弟の反応を楽しむように目を細めた。

昨日、掛かってきた電話。
綺麗な透き通った声の大人しそうな女の人。
嗚呼、もとにピッタリかもしれない。

内心、井浦は北原という女性に対して勝手な推測を飛ばしていく。

「えっ…あ、な…なんで知ってるの?」
「お姉ちゃん、舐めんなよ」

チラリと振り返ると真っ赤な顔をした弟がいて、やはりと井浦は笑みを深めた。
この引っ込み思案な弟が立派に恋をしていることは姉として純粋に嬉しい。
あぁ、でも、弟に恋人が出来たらこうやって膝の上に座ることは出来なくなるのか、そう思うと少しだけ寂しくなった。
弟に身長を越され、仕返しとばかりに始めた行為だったが、井浦は弟と触れあえるこれが嫌いではなかった。

「そっか…もとにもちゃんと好きな人が出来たのかぁ、大きくなったな」

プリンをテーブルに置くと井浦は向き合うように座り直し、もとの頭を包むように優しく抱き締めた。

「頑張れよ」
「…うん」

恥ずかしいのか、顔を背けたもとは小さく頷くと遠慮がちに井浦の背に手を回した。


愛しさと相対する罪悪感


その温もりと期待は重くのし掛かる。


―――――……







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