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タイムマシーンを発明した石川がタイムマシーンに乗って、未来に行ってしまったのはもう十年も前の話だ。
あの馬鹿が、と最初は笑って。軽く試してくると言って出ていってしまったのを笑顔で見送って。
1ヶ月目は時間がずれているのかもしれない。2ヶ月目は少し遊んでいるのかもしれない。
半年が過ぎると少しだけ寂しくなって。
一年が過ぎてしまうと、どうして止めなかったんだと後悔した。
二年泣き続け、残りはただ呆然と流されるままに過ごしていく。
もしかしたら、石川は未来で待っていてくれているのかもしれない。なんて僅かばかりの希望を持ちながら。

「…もう、十年になるんだぜ?馬鹿みたいだろ」

石川透と彫られた墓石を眺めた。
これは五年目に立てられたものだ。止めてくれと再三頼み込んだが最後には泣きながら謝られた。

『お願いだから、分かって』

どうしようもない裏切りに感じられたそれも今では、息子をなくした両親なりの一区切りだったのかもしれないと思ってしまえる。
俺も歳をとってしまった。もう少しで××だよ。
こうやって、此処にくると石川が来てくれるんじゃないかって期待してしまう。
諦めないでいられる。それだけが今の俺の生き甲斐。
もう今日は帰ろうかと立ち上がると、

不意に後ろからガタンと物音がした。


驚いて振り返るとそこには、

「……しゅ、う?」

紫の髪が、最後に見た姿のまま、目を見開いていた。
それから俺の背後を確認すると納得したのか、寂しそうに笑った。

「…ただいま、」

俺は何も言えなくて、そうこれは息苦しいんだ。
つんと鼻が痛くなって、目頭が焼けるよう。

「遅いよ、ばかっ」

苦し紛れに呟くと、堪えていたそれが溢れだして。ぼやけた視界の先には慌てながら此方に向かって走ってくる石川。

ぎゅっと抱き締められる感覚に夢じゃないんだと、嬉しくなった。


今度は、過去にも戻れるタイムマシーンを作ってよ?








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