「いしかわー!!いしかわー!!」
目を開けるとそこには小さくて可愛らしい緑の猫がいた。
いや、猫というより、「秀+猫耳」みたいな。
「おはよ…」
「爆睡だったな!!」
お前はいつも元気だな。
恐らく夢であろう空間でお前に会おうとは。
只でさえ、某ガリガリした猫に休めない夜を過ごしているのに。
夢なのにな!!
寝ぼけているという比喩も形無しの環境に苦笑しながら、ゆっくりと上体をあげるとそこにはいつもの二匹とイレギュラー緑の三匹。
「石川?もしかして、疲れてる?」
何も言わない俺に不安を抱いたらしい秀は心配そうに顔を覗き込んでくる。
そうそう、こいつは昔から無駄に空気を読むんだよ。
意外とな。
「いや、ちょっと起きたばっかりだから、ボーッとしてただけだ」
だから、安心させるのも俺の仕事だろう。
可愛らしく頭に乗せられたふわふわの触り心地の良い耳や髪に指を通すと気持ち良さそうに目を閉じた。
うん、平和。
なんだろう。
一番、うるさいと予想していた奴に一番、和まされた。
くるくると上機嫌そうに動き回る尻尾に何となく手を伸ばした。
「ひゃっ!?」
唐突に上がった高い声と目の前で小刻みに震える秀。
心なしか、目が潤んでいた。
「もしかして、尻尾か?」
「ち、ちがっ…!てか、手…放してっ…」
ゆっくりと倒れ込んだ秀はおもむろに俺のシャツを握ると首筋に顔を埋めた。
ぷるぷると震えている耳と尻尾を握っている手に巻き付いてくる尻尾を交互に見て、視界の端に映る赤と黒に気がついた。
ヒソヒソと何かを呟いている。
「…これが所謂肉食系男子って奴ですかねぇ…」
「怖いわねぇ…猫まで食べる気よ」
「猫だけにーとか、寒いこといいながらさぁー」
「うわぁーマジ、見損なったわ」
「きっと無差別の無節操よ」
何処の女子だよ!!
なんで、ちょっとオネェ言葉なんだよ!!
一気に身体の熱が引いたような気がした。
ん?
熱?
チラリと視線を前に戻すと何かを堪えるように身体を左右にくねらせ、悶えている秀がいた。
なんか…こう…、ムラッとした…何かが。
……………………………。
「って、俺は秀をどうしたいんだ!!」
石川透。
XX月XX日(日曜日)、午前2時ジャスト。
本日の目覚めは人生史上最悪であった。
と、だけ、記憶しておこう。
早く忘れろ!!
―――――…