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「あ、」

俺が声を上げると谷原くんは不思議そうに首を傾げた。
口元には、煙草。未成年者が吸ってはいけないものである。

「な、なんすか?」

まだ気付いてないらしい谷原くんに少し呆れつつ、口を指差しながら注意する。俺はどうやら長年兄をやっていたせいか、こういうのは見逃せない質らしい。

「タ・バ・コ。谷原くん、まだ未成年でしょ?」
「あ、すみません」

注意するとサッと煙草の火を消してくれる辺り、彼らしい。だが、俺はそこまで甘くはないのだ。

「はい」
「え?」

手を差し出すと訳が分からないと此方を見つめてくる谷原くん。

「煙草。自分で持ってるとまた吸っちゃうでしょ?」

ちょーだい、なんて砕けた口調で促す。谷原くんは暫く考えるような素振りを見せたが、首を振り、拒絶を示した。

「だ、だめですっ!こんなの持ってるところをもし大人に見られたら、井浦さんに迷惑が掛かりますから!!」

そんな必死に否定されると、なぁ。ていうか、それなら吸わなきゃいいのに。

「大丈夫だから、ほら」
「絶対に!駄目です!!」

凄い剣幕で返されると、少しだけムッとした。

「ちょ・う・だ・い」

語感に力を込めながら言うと僅かに勢いを無くした谷原くんが困ったようにポケットから煙草の箱を取り出す。うん、最初からそうしてれば…って、

俺が手を伸ばし、受け取ろうとすると巧みに谷原くんの手が避けるように動く。

「…ちょっと」

じろりと視線をやると谷原くんがたじろぎながらも言い返す。もちろん、煙草を取られないよう両手に抱えて。

「や、やっぱり…駄目です」
「…まっきー」
「うっ…だ、だめですからねっ!」

いつもは呼ばない愛称で呼んでも頑なに断る。

「煙草、まっきーの体に良くない」
「分かってます、井浦さん…秀さんが駄目というならもう吸いません。ですが、」

俺が愛称で読んでいる為か、珍しく下の名前で呼ばれた。なんか、気恥ずかしい。
真剣な改まったような顔をした谷原くんはやっぱり格好良くて、じっと此方を見つめられると不謹慎にも頬に熱が集中した。

「…俺、秀さんにどんな形でもこんなもの持ってほしくないんです!俺、秀さんのこと守るって決めましたから!」

「……っ!」

ぼふんっ

なんて、音がしても可笑しくないくらい自分でも耳が熱いのが分かった。
不覚。
何を言うかと思ったら、


「〜〜ばかっ!!」

真っ赤に染まってしまった顔と、確実にニヤけている顔を隠すように腕を顔の前に交差させる。

「えっ…あ、しゅ、秀さん!?」

慌てたような谷原くんの声が聞こえたけど、知らない!本当、もう知らない!
ていうか、

「名前で呼ぶなぁああ!!!」

「え、えぇえええ!?」

俺を殺す気か!恥ずかしい!恥ずかしい!!恥ずかしいし、嬉しいし、俺絶対に真っ赤だし、にやけてるし!!

「なんで、今日そんなに格好いいんだよ!」


ジギタリスよりも熱く


「ばかばかばかぁっ!!はずいはずいはずいぃい!!!なんで、まっきーそんなに格好良いんだよ!!大好きだよ、ばか!!」

「えっ…あ、えええ!?ちょ、もう一回お願いします!」

「二度も言わすな!ばか!!」



―――――――……

え…何があったの…
このキャラ崩壊っぷり、シリアスにし損ねました
もうこの二人が可愛すぎて死ねる(笑)

この話には勿体ない花です、ジギタリス



ジギタリス(digitalis[別名:キツネノテブクロ])

『熱い胸の想い』
『隠しきれない恋』


他にも沢山の由来がある花なので逸話など面白いので時間があれば、読んでみて損はないかなぁと思われます^^








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