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いきなり始まり、終わるクオリティ


「本当はずっとこのまま一緒にいれたら、良かったんですがね」

空の木の実のようなものを見つめ、拾ってくれたのがお兄さんで良かったと、
零になってしまった腕の模様を眺めながら、北原が呟く。
悪用されたら、どうしようかと思ってました、なんて。
そんなこと、どうだっていい。
それより、

「…未来に帰れないってことは、ずっとここにいれるってことじゃないの?」

喉に貼り付いた言葉を絞り出し、無理矢理平静を装った顔に北原がゆるく首を横に振る。

「駄目です、このことは絶対に過去の人に知られちゃいけないんです」

険しい北原の横顔は事の深刻さを嘆くようだった。
もし、過去の人に…つまり、俺に知られてしまった今、北原は何らかの罰を受けることになるのか。
それだけが気掛かりだった。

「僕はお兄さんの前から姿を消さなきゃならない」
「俺、絶対…絶対に誰にも言わないからっ!」

…だから、どうか、俺の前からいなくならないで。

その一言がどうしても言えなくて、無駄だと分かっているのに唇を噛んで、俯いて、「大丈夫、僕はいなくなりませんよ」その言葉と笑顔を待っていた。
それでも北原がその言葉を言うわけがなく、

「…お兄さん」
「絵、…そうだよ、あれ、もうすぐで見れるようになるんだっ…そしたら、そしたら、一緒に見に行こうっ…北原と俺と…」
「お兄さん!」

ぴしゃりと響いた言葉に顔を上げると、そこには真っ直ぐ此方を見つめる北原の顔があり、その目に映る俺の姿は情けないくらい間抜けだった。
それが悔しくて、そんな顔を晒すことしかできないのが悲しくて、目頭がつうっと熱くなった。

「いやだ…や、…なんでっ…なんでっ…」
「僕、お兄さんのこと、大好きです。それこそ、ずっとここにいてもいいんじゃないかってくらいに。でも、それじゃ、やっぱり駄目なんです」
「…な、でっ…!」

ぽたぽたと溢れてくる液体を北原は愛しげに拭いながら、微笑んだ。

「お兄さんは可愛いんですから、もっと素直になった方がいいですよ?」
「おまっ!こんな時にどうして、そんなこと!!」

北原に言われた言葉にカッと頭に血が上る。
頬に触れていた手を振り払い、距離を置くと北原はガッカリしたように肩の力を抜き、

「さようなら、お兄さん」

と呟いた。




ちょっと飛ばして、



「はっ!?なんで!!」

腕を見ると、確かに零になったはずの数字が1になっていた。

「あ、もしかして…」

あの時、北原が時間を戻して、それで。
もしかしたら、北原の時間を戻すことが出来るかもしれない。
そしたら、北原は無事に未来に帰れる。

「…また、会える」

気が付くと足は勝手に外に向かい、家族の制止も振り切って外へ駆け出していた。
思いっきり息を吸い、踏み込んで、膝を曲げ、伸ばす!
坂道の加速も手伝い、身体は大きく宙へと投げ出された。
ありったけの力を、酸素を吐き出す。


「いっけぇええええ!!!!!!」


身体がふわりと謎の感覚に包み込まれ、そして投げ出された。
ごろんっと勢いよく転がり、柱に頭を強くぶつけ、ずきりと後頭部が軋んだ。

「…ってぇ!あ、」

手前に落ちていた木の実のようなもの。
痛みに悶えながらも、ふらふらとする身体を支えながら立ち上がり、そしてまた駆け出した。

北原!北原!北原!


「きたはらぁああ!!!」

やっと見つけた北原の姿に安堵しつつも、不安で間違っていたらどうしようなんて考える。
戸惑う北原の手を掴み、数字を確認する。

1。

「あ、…よかった…」
「お兄さん?」

怪訝そうな北原。
そうだ、この北原はまだ知らないんだ。
さっき拾ったものを北原に見せる。

「これはっ!…どうしてこれを…」
「全部、知ってる」

手のひらの中の物を握り潰すと北原が驚いたように顔を上げ、俺を見つめてくる。

「全部、お前から聞いた」
「え…」
「未来のお前が全部、教えてくれたんだ」
「どうして」

北原の顔がくしゃりと歪んだ。

「お前が消えちゃわないように」

口をぎゅっと結び、俯きながら押し黙る北原の手を引き、座るように促した。
それから、北原がゆっくりと口を開き、ぽつりぽつりと言葉を紡いでいく。
長い長い、それでも、本当に少ない時間しか共有してないことに気がついた。
思い出話は早々に尽き、互いに話題を探しながら無理矢理会話を続けさせる。
本当に話題がなくなってしまった時、北原が口を開いた。

「…僕、お兄さんたちと一緒に過ごす日々が凄く楽しくて、すぐに帰るつもりだったのに、気が付いたら…夏になってました」

お兄さんと一緒にいるのが楽しかった。
もう戻らなくていいんじゃないかって思えました。

「…うん」

「でも、もう帰らなくちゃいけないんですね」

「………」

「それじゃ、僕、行きますね」

立ち上がり、北原が離れていくのを感じる。
遠ざかる足音。

嫌だ。
帰らないで。
駄目、それだと北原がいなくなっちゃう。
どのルートを辿っても、結局、北原は俺の前からいなくなってしまう。
それなら、未来に帰ってしまうのが一番の解決策に思えた。
今は会えなくても、

「…ぅ、あぅ…ふっ…きたは、らっ…」

嫌だ、嫌だ。
離れないで、一緒にいよう。
なんで、そんな簡単なことが言えないんだろ。
本当、素直じゃない、素直じゃないけど。
無理なことを言って困らせたくないという思いが阻む。

「きた、はらぁっ…きたはらぁっ!…ぅぐっ…ぅぁっ…ひ、ぅうっ…きたはらぁ…」

溢れるものを止めることが出来ず、膝を抱え、泣き崩れる。

不意に肩をぽんと叩かれ、振り向くとそこには北原の顔があった。

呼吸が止まる。
近づいてくる顔は耳元までくると、

「未来で待ってます」

と呟き、頬に唇を落とし、パッと離れた。

「きたはっ」

もつれながら、立ち上がり、回りを見渡しても、もうそこに北原はいなかった。





――――――……


なげぇよ!
かなり短くしたつもりがこの長さ!
文才の無さに泣きたい!
柳浦もやりたかったけど、ダウン!



おまけの日記会話文


「おい」
「ん」
「井浦」
「んー」
「緑」
「ん、」
「ばか」
「んー…」
「起きろ、」
「ん…」
「秀!」
「…はは、…やっと呼んでくれたね」
「…起きてるなら、」
「寝てる、寝てるから起こして」
「…―たっく、めんどくさいなぁ」ちゅ
「んっ、」
「おはよう、秀」
「うん、おはよう」








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