昼に飲んだ牛乳が少し悪くなっていたのかもしれない。
うっすらと額に浮かんだ冷や汗をワイシャツの袖口で拭う。
「あれ?井浦くん、どうしたの?」
宮村が顔を上げる。
つられるように集まっていたいつもの面々も此方を見た。
「え?何が?」
誤魔化すように浮かべた笑みに周りが不審そうに首を傾げたが、特に気にする必要もないと思ったのだろう。
また、それぞれの会話へと戻っていく。
「あ!俺、ちょっと用事頼まれてんだった!」
ガタンと大きな音をわざと立て、席を立つ。
うるさいだと散々言われたが、気にしない。
おそらく、これが一番自然だからだ。
「ごめんっ!俺、今日はもう帰るわ!」
ぱたぱたと忙しなく荷物をまとめ、生徒会室から出た。
「え?何が?」
秀が浮かべた笑みが一瞬だけ歪んだのを感じたが、追求する暇もなく本人は立ち去ってしまった。
生徒会室を出る直前に見えた秀の横顔は少しだけ青白く、うっすらと汗が浮かんでいるようにも感じた。
「…いしかぁーくん」
宮村が舌っ足らずな声で名前を呼ぶ。
その声には僅かに不安のようなものが感じられ、周りを見渡すとやはり皆、同じだった。
それでも追いかけないのはきっと秀の性格上なのだろう。
彼奴は普段、ヘラヘラしているからいざというとき、距離が図り辛い。
俺は仕方なく、立ち上がり軽い鞄を片手に生徒会室から出ることにした。
「…はぁっ」
熱い息を吐きながら生徒会室から離れた場所にある壁にずるずると腰を落とす。
痛い。
ぎゅうっと内蔵を締め付けられ、鋭利な刃物でいたぶるように突かれているようだ。
これ以上、歩けないかもしれない。
いや、それは絶対に嫌だけど。
「…秀?」
「っ!?」
唐突に聞こえた声に驚いて顔を上げるとそこには心配そうな顔の石川がいて、少しだけ涙腺が緩んだ。
――――……
しかし、この井浦、●●●●フラグしかない