1、異性に触れられると性転換してしまうカノの話。
2、触れた相手の性格を一定時間コピーできるカノの話。
どっちかの設定で一本書きたいなぁ。
→表にアンケートを置いときました。
1
「あれ? カノさん寝てる」
午後三時、おやつの時間、紅茶とクッキーを共有スペースに運ぶと先ほどまで雑誌を読んでいた筈のカノさんが雑誌を頭に被せた状態で眠っていた。
「よくもまあ、こんな短時間で寝れたな」
団長さんが遅れながらやってきて、ソファーを見て大きな溜め息を吐く。それから団長さんはテーブルにティーポットを置くとブランケットを取り出した。夏とはいえ、冷房の効いた室内では適切な処置といえよう。私はちょうどカノさんの近くにいたこともあり、団長さんからブランケットを受け取るとカノさんに被せた。
「カノさんの分、どうしましょう?」
「クッキーなら冷めても食えるし、アイスティーだから問題ないだろう」
「そっかぁ……そうですよね」
紅茶を注ぎ、カップの中で持参していた小豆を溶かしながら頷く。それにしてもよく寝てる。隣で寝息を立てているカノさんはよほど疲れていたらしい、雑誌のページも表紙近くで、然程進んではいなかった。
普段あんなのでも頑張っているのだろうな、なんて思うとこの身長も年齢もそれほど違いのない小柄な少年が堪らなく愛しく思えた。
思わず手を伸ばし、頭を撫でてしまう。柔らかい猫毛が掌で跳ねるのが気持ちいい。そうして撫でているとカノさんも気持ちいいのか、手に擦り寄ってくる。それがまた可愛らしい。
何度も繰り返しているうちに、カノさんの顔を覆っていた雑誌がパサリと落ちた。
「「あ、」」
団長さんと声が重なる。
カノさんを見ると、
「えぇええええっ!?」
そこには桜色の唇の首が細い、可憐な少女が眠っていた。手触りの良さそうな猫毛は先ほどまで撫でていたものの筈なのに、肩口まであるそれは全くの異質の存在のように思える。サイズの合わないシャツを押し上げる緩やかな傾斜は間違いなく女性のそれ。
「だ、だだ、団長さん! カノさんってカノちゃんだったんですか!?」
「いや、カノさんはカノちゃんでもあるが、カノくんでもあるっていうか」
慌てたようにフォローする団長さん。だが本当に驚いたようで説明がまるで要領を得ない。
「ど、どどどういうことですか!? ていうか――」
可愛い! 可愛すぎる!! ふわっとカールした亜麻色の髪が白い頬に掛かり、くすぐったいのかカノくんは眉をひそめて小さく呻く。
ちょっと不機嫌そうな顔もまた新鮮で、そしてやはり可愛い!!
うわっもう私よりアイドルっぽいじゃん!
2、能力を捏造してます、鵜呑みにせず読み流してください。
その日のカノは何時もより少しだけ不機嫌そうで、何故かそれと比例するようにキドが大人しかった。
カノをちらちらと伺っては溜め息を漏らす。なんだ二人は喧嘩でもしたのかと思いたくなるような雰囲気だがそんなことはなく、いたって普通に会話をしている。どういうことだってばよ。
意味も分からず混乱していると不意にカノが「あ、戻った」と声をあげた。
カノの見ると、先ほどまでの不機嫌そうな顔が嘘のように消えている。キドはホッと息を吐いた。
「なあ、戻ったって何の話だ?」
自分で考えても結論ができるわけではないだろう、キドに尋ねるとキドはああそうか、と頷く。
「カノの能力が≪欺く≫なのは知ってるよな? カノの能力は使用者にしか作用しないが、その分出来ることの幅が広いんだ」
俺は広範囲に出来るが、代わりに出来ることは強度別に認識を薄くすることだけだ、とキドは付け足す。
確かに、カノの能力は人の認識に作用するが使い方によっては沢山の応用が出来るだろう。俺も何度かカノに化かされたことがある。
「カノは自分の能力で自分を≪欺く≫ことができるっていえばいいのか? 他人の性格をベースに別の人格を形成することができるんだ。まあ、これはカノもかなり力を浪費するらしく自由に解除できないって縛りがあるんだがな」
一定時間が過ぎればさっきみたいに元に戻る。と、キドは言う。
何だかややこしい話だ。カノはにこにこしているがその実、疲れているのは事実らしく欺いていない。微妙に疲れを感じさせる顔だ。
キドの話をまとめると、カノの能力は対人の認識に作用して自身の姿を変えられるが、この認識の範囲の中に自分を含めることが出来、他人の性格をベースとした人格になれると。わかりずらいが、何やら面白いことの予感。
「それってどうやったらなるんだ? やっぱ条件とかあるわけだろ?」
「条件か。条件らしい条件はないらしいが、ただ強く意識して触れるとなるらしい」
ふぅん、それってさ、セトの能力で読み取ったのをベースにしてやったら最強だな。とは言わないが、露骨に嫌なことを知られたというカノを見て、何もしないという選択肢はなかった。
「カノってさ、顔は良いんだし大人しかったらモテんじゃね?」
キドをちらりと見ると、キドは分かってるとばかりに頷いた。
「そうだな。顔は悪くない」
「それなりの性格にしたら意中の相手もイチコロだったりしてな」
「え、なにちょっとこの空気」
カノが及び腰になるが、逃がさない。カノのパーカーのフードを掴み、ソファーに押し付けた。無論、自分は触らないように。
「あっ、ちょ、やめてよ! 今は無理だから!!」
「大丈夫だ、安心しろ。悪いようにはしないから。なあ?」
「ああ、そこは保証する。マリー、こっち」
「ん?」
嫌がるカノにキドがマリーを近付け、カノに微笑んだ。あ、菩薩みたいな顔……なんて此方までもが見とれてしまうキドの笑顔にカノも頬を赤らめていた。
そしてそんなカノにキドは甘く声をかける。
「出来るよな、カノ?」
「「――っ」」
こ、これはヤバい! これが所謂ギャップ萌えなのか! 腰の辺りが重くなる声音にねだられ、カノは赤くなるどころか目許を潤ませながら頷いた。
「で、できる!」
こういう変に素直なところは可愛いと思う。男だけど。
カノはマリーの手を優しく包み込むと集中するように目を閉じた。マリーはどうしたものかとおろおろしていたが、キドに撫でられると大人しくなる。
「……終わった、と思うよ?」
カノが小さく告げた。カノが不安げにキドを見上げると、
「……――ごふっ!」
キドは口元を押さえ噎せながら踞った。マリーも何故かやや頬が赤い。
どういうことだ。首を傾げているとカノはパーカーを掴んだままだった俺の手に、触れるか触れないかのギリギリの位地に手をやり、俺を見上げた。
「もう、いいかな……」
「――ぐぼぁっ!!」
クリーンヒット。上目遣いは上目遣いでも伏せ目は反則だっ! マリーで見慣れてる筈の仕草なのに、何故だろうこの悪戯っ子な猫が悪戯をしたら怒られちゃって何時もは許してくれるのにどうして、機嫌悪いの、と様子を伺ってくるかのようなそこはかとない罪悪感!
か、かわいすぎるだろっ!
思わずカノを抱き締め頬擦りをしてしまう。カノはびくりと身体を震わせ、じわじわと目尻に涙を溜め出した。
「やばいやばい、お前これはちょっとやばいって。だってもう可愛いってレベルじゃないもん、俺がもし他人で道でカノに擦れ違ってたら間違いなく誘拐するレベルだよ。すげぇ可愛い。一緒にお風呂に入って冷蔵庫に仕舞いたいくらい可愛い」
「ひぃっ!? ご、ごめんっ……や、やぁっきどぉ……っ!」
ぎゅっと抱き締めているとカノがもがきながらキドに手を伸ばしていた。ああもうっそんなところまで可愛い!
キドも同じ意見らしく、カノの手がギリギリ届かない距離で「とーどーかなーい」と棒読みで言っている。マリーはキドのスマホで誰かを呼び出しているようだ。
前半と後半でシンタローのキャラが違いすぎるのはきっと何やら新しい扉を開いたからです←
うん、機会があったら1か2のどちらかを書きたいかなぁって淡い願望。
二択アンケート