夏期限定更新〜まだまだ延長戦!〜 | ナノ







雨降り小僧


08/02 Fri 00:44:00




 傘を開きながら一際大きな菩提樹の幹に足をかける。太い枝の上には、黒いパーカーを深く被り込んだ線の細い少年が危なげに座っている。
 菩提樹の枝の下は葉に隠れているというのに絶えず雨が降っていた。
 傘を片手に木を登り隣に並ぶと少年は呆れたように肩を竦める。
「懲りないね、君は。滑り落ちても知らないよ」
「夏はやっぱり此処が一番涼しいッスね」
 半ば無視するように言い放つ。少年は不満げに顔をしかめ、同時に雨足が強まった。
 少年の気分に合わせるように降っている、否、実際に合わさっているこの雨は少年の真上から降っていた。
「さっき狐とすれ違ったッス」
「うん、知ってる」
「狐の嫁入りにでも?」
「そう、最近ずっと雨が降ってないとかで頼まれたの」
 だから明日は出歩かない方がいい。少年はそう告げると足を伸ばし、木の下へと飛び降りた。途端、雨脚が弱くなる。
「魃(日照り神)を見つけたら二三日は山に近寄らないように頼んでおいてくれるかい?」
「いいッスけど、あんまり無下にすると拗ねられるッスよ」
「やだなぁ、無下にするわけないじゃん。僕はこう見えて、彼に依存しているからね」
 近寄ろうともしないくせに。
 言いかけて、しかし口に出してしまえば露骨に不機嫌になってしまいそうな少年の性格を知っているが故につぐんだ。代わりに手に持っていた傘を閉じ、少年に投げる。雨はもう止んでいた。
「弥の明後日、菩提樹をもう一度見に来るよ。その頃には花が咲いているだろう」



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特に意味はない注訳

魃(ひでりがみ)と読みます。
水木先生の本には魑魅※の一種として書かれてますが、私は黄帝の娘としての姿を推したいです。詳しくはWikipedia先生を。
雨降り小僧に対抗して干魃の魃でした。まあ小僧が敵うわけがないのですが。
※魑魅魍魎の魑魅の方です。分け方は魑魅が山の怪、魍魎が川の怪らしいです。見た目も異なりますが省略。詳しくはWikipedia先生(笑)先生曰く魑魅は人を迷わし魍魎は人を化かすって感じですかね。

雨降り小僧が狐の嫁入りの手助けをするという話が好きです。
配役は深く考えず、カノが雨降り小僧。セトは色々考えてたけど、とりあえずそこにいるだけの怪で、人間ではありません。サトリとかでも美味しかったけど、カノが近寄らなそう←
魃は今のところ男体化で考えてます。まあそれについては書く機会がありましたら。




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