※セト→カノ
「ごめん、ずっと好きだった」
過去形。
一拍と置かずにカノは笑い出した。
「ありがとう。僕は、そんなに好きじゃなかった」
セトはくしゃりと顔を歪ませ、やっぱりと呟く。
「何時も俺のこと避けて、目を合わせようとしなかったでしょ?」
「うん」
「好きな人ができたの?」
「うん」
「誰? 俺以外?」
「うん、君以外」
僕は君には嫌われていると思ってた。だから君は確かに仲間で大切な家族ではあったけど、僕は意図して君に好意を抱かなかった。
だって、失恋以上に辛いものはないもの。好きになることはできても好きでいられる自信なんてなかった。
けれど、彼は違った。彼は僕に自信を持たせてくれた。それが純粋に嬉しかった。
「僕ね、好きな人ができたの」
「うん」
「君以外の、もっと優しい人」
「うん」
「今更だけど、僕は君のことを嫌いにはなれなかったよ」
セトがカノを好きだったのは過去形で、カノがセトを好きじゃなかったのもまた過去形。
前者は見栄で、後者はなんでしょうね。