性転換パロディ
キド+カノパートのみ抜選
「カノ、お前また旧市街に行くのか?」
アパートの階段を降りるとちょうどポストを確認していたらしい幼馴染みのキドがいた。今日はオフなのか、何時もは綺麗に整えられている緑色の前髪が可愛らしいカチューシャで上げていた。
「うん」
「ちょっと待ってろ。今車出してやるから」
「えっいや、いいよ! キド休みなんでしょ?」
「いいんだよ、たまに女連れて歩かなかったら変に張り切る奴いるし」
キドは煩わしそうにそう言うけれど、本当は連れて歩いた方が後々面倒なことを知っている。
キドは所謂ホストという仕事をしていて、繁華街ではわりと売れている方らしい。時々幼馴染みのよしみで色々と奢ってもらってるし、良くしてももらっている。キドは格好良いし面倒見も良いからモテるのも頷けた。
しかし、私は何時もそんなキドの好意に甘えているのを後ろめたくも思っている。私がこんなだから、キドがもし婚期を逃してしまったらどうしようとか余計なことばかりを考えてしまうのだ。
「キド、やっぱり悪いよ。それに、僕最近運動不足気味だから」
「運動不足?」
キドがぎろりと此方を睨んだ。
「お前の何処が運動不足だって? お前はアスリートにでもなるつもりなのか? 大体、旧市街までの通りは人通りだって少ないし、何かと変質者が出ると聞く。一人で出歩くなと、」
「あーっもうっ! 説教ならシンちゃんに言ってよ! あの子、昨日酔ったとか言って僕の部屋に来たと思ったら、散々のろけ聞かされた挙げ句に吐いて、しかも爆睡し始めたんだよ!?」
思わず怒鳴り返すとキドは疲れたようにまたか、と額に手を当てる。そう、泥酔した彼女が私の部屋にやってきたのは一度や二度ではないのだ。
特別アルコールに強いわけでもないのだから止めればいいものを。まあ彼女の場合は止めたくても周りが酒豪だから仕方なくなのかもしれないが。
「兎に角! 送迎はいらないから!」
「あっ待て、こら!」
言い逃げ上等、ヒールの低い靴で良かった。走り出すと後方では郵便物を抱えたキドが私を追うか荷物をどうするかで挙動不審になっていた。