うわ、なんだこの戻り難い空間は。
先生に教材を頼まれ席を外した隙にキジが来ていた。カノと会話できるのが堪らなく嬉しいと全身で物語っているキジにカノは少し引き気味だった。
カノはセトが好きだが、時折酷く苦しそうな顔をする。それは恐らくカノの曖昧な態度とセトの変な意地のせいだろうが、ずっと擦れ違ってきたせいで最近ではメールのやり取りすらしていないらしい。
カノもセトも互いに一番勘違いしちゃいけないところを勘違いしてるのに気付いていない。それを教えるのは簡単だろうが、二人の為にはならない。
ただ言えるのは、中学の前半まで彼らは仲良くしていたということだ。
カノ、お前が見落としているものは何だ?
セト、お前は何か思い込んではいないか?
もし二人がそれに気づかないというならそれまでだ。今回のこの一件でカノに逃げ道が出来てしまったようにセトにも向かい合わないままに終わらせるという選択肢が生まれた。
だから話が動くのだとすれば今を置いて他にはないだろう。
カノに見付からないように教室に戻り、パンを片手に背後に回り込む。キジと意図的に目をあわせ、出ていくとジェスチャーするとキジはありがとうと気付かれないように手で送った。
カノにメールを送る。
『用事ができた。先に食っててくれ』
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気持ち的にはセトだけど、これからも片思いを続けるかもしれないカノのことを考えたらキジを推してしまうキドさん。
基本的にカノ寄りの中立です。