現在進行形 | ナノ


輝くのかモブ男
2013/08/26 23:27


 カノと別れて二年の教室に向かう途中、ふとアヤノが立ち止まった。

「どうした?」
「ん、いや……なんか」

 らしくもない。アヤノは歯切れの悪い反応を示し、その場で考え込んでしまう。

「木地……千晃くん、ね……彼が嘘を言っているようには思えなかったけど、」

 朗らかで交友関係が広いアヤノだから何か引っ掛かるものがあるのかもしれない。アヤノは頭を抱え唸っていたが、暫くするとハッと顔を上げた。

「シンタロー、先に行ってて。私、ちょっと生徒会室に――「いや、俺もいくよ」

 戻ろうとするアヤノの手を握り、引き留める。アヤノはむず痒そうな顔をしてバッと俺の手を振り払うと先に進んでしまう。

「……シンタロー、何してるの。早く行くよ」

 二歩進んで立ち止まり、アヤノはそう言った。




「セト、」

 教室に入ると一番最初に目につく窓際の席を陣取る男に声をかける。セトは気だるそうに振り返り、そして俺の顔を見て笑った。

「ぶっ! 男前になったッスねぇ!!」
「うるせぇ」

 セトの前の席に座るとセトが肩を叩いてくる。言われなくても向くっつーの。

「それ、誰にやられたんスか?」

 野次馬根性丸出しのにやけ面。ムカつく。ムカつく。でもそれもこれで終わりだ。

「カノ。スカート捲ったら蹴られた」
「あ、」

 セトの笑顔が凍り付き、一瞬にして殺気を帯びる。カノが嫌いだからか、それとも。

「水色のレースだった。どうせキドのをベースに欺いてるんだろうけど、此方としては二度美味しい」

 カノのパンツを見てキドのパンツまで見れるっていうのは素晴らしいシステムだと思う。
 なんて下着談義を続けてしまうとセトの機嫌が見る見る悪くなっていくので本題に移る。

「で、どうだった?」
「は? なにが?」
「来たんだろ? カノの新しい王子様」
「なんで?」

 セトは純粋に首を傾げた。その様子にクロハも首を傾げた。
 可笑しい。彼奴は確かにカノの元を去る際、セトのところに行くと……いや、待て、セトとは断言していない。
 でもあの状況で当てはまる奴なんてセトの他にいたか?
 嫌な予感がふっと頭を過る。そんなわけがない。けれど確証があるわけではなかった。だが昔から嫌な予感ほどよく当たる。
 考えろ。彼奴の発言を思い出すんだ。そもそも彼奴は何故あのタイミングで出てきた? カノがそこにいたからか? 違う、カノは正門をくぐって校内に入った。そして掲示板に向かったのだとしたらルートはほぼ直線。途中で見つけない方が不自然だ。部活動の帰りだったのか? いや、あの時間帯はまだ朝練のはずだ。朝練をサボったのか、それとも練習がなかったのか。
 教室内を見渡す限り、後者はまずない。ということはキジは練習をサボったのか。妙に潔癖なところがあるカノが至近距離まで近付かれても無反応だった。だとしたら彼奴は汗をかいてはいなかったということだ。つまり部活を途中で抜け出したわけでもない。
 練習を休んで掲示板を見に行ったらカノを見つけた……いや違う、掲示板の混みいった中、あの小柄なカノを見つけるなんて出来るか? そんなのカノが声を出さない限り不可能だ。現にセトも気が付いてなかったじゃないか。
 そしてタイミング。彼奴はカノがセトに声をかけるタイミングで話しかけた。分かっててやったとしか思えない。
 しかし、それならば彼奴の敵はセトになるはず。なのに未だに現れていないとなると、

「セト、少し……いや、かなりヤバいことになりそうだ」


―――――――――――――――

はい、きな臭くなって参りました!
ちなみにクロハはセトと登校してます。だいたいの場合はカノが見えたら姿を隠す確信犯です。
だって挟まれたくないもんね。我が家のクロハさんは若干コノハと対比して下品な設定のようです。




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