現在進行形 | ナノ


再開のお知らせ
2013/04/26 23:17

なんか、もうってか、まだなんですけど、葬式が終わって遺骨になって骨箱に納められた祖父を見てもまだ全然実感湧かなくて駄目ですね。
三四週間前に祖父を見たときは全然いつもと変わらなくて、先週先々週くらいに危篤だと告げられた時も祖父ならまたいつものように数日後にはけろっとした顔で戻ってきてくれる気がしてて、でも結局戻ってきてはくれませんでした。
朝、祖父が危ないと連絡をいただき急いで電車を降りて、十分後に亡くなったと聞いて、私はまだ二十分後には生き返ってるんじゃないかなって連絡を馬鹿みたいに待ってました。そんな連絡は来なかったです。普通に考えて来るわけがないんですが、そのくらい祖父はしぶとい方でした。
もう駄目だと何回も医者に言われて入院しても次の月にはけろりと実家の炬燵で煙草をふかして、酒でも注げとリモコンのチャンネルをコロコロ弄っては祖母に鬱陶しいと怒られる。半世紀以上の付き合いっていうのは会話のテンポでわかりますよね。殺しても死にそうにない印象でした。人の書庫を荒らしてBLとか同人誌を雑誌と一緒に廃品回収に出そうとしたこともあります。その為、スライドの本棚を買って奥に隠したのは良い思い出です。もうそんな必要もないと思うと胸の辺りがもやっとします。
祖父の死に顔は綺麗なものでした。寝ているみたいに安らかで祖母は泣き笑いのような表情で祖父に近付くと何時ものおどけた口調で「ほら、じいちゃん。目でも開けてみなさいよ」と変わらぬように言うのです。出来るものならやってみなさいという風な口調はよく酒を飲んでべろんべろんに酔った祖父をからかうように言っていたそれでした。しかし祖父は目を開けませんでした。
もう本当に嘘みたいで、結局最後まで涙なんて一つも出てきやしないんですよ。祖父はよく俺が死んでもお前みたいな薄情なやつはシラッとした顔で線香をあげそうなものだと言っていたのですが、まさにその通りでした。無駄にプライドが高くて人前で泣くのが嫌で祖父の死に実感が湧かないほど鈍い。目頭が痒くなって、頭の奥の方が重くなるけど泣くには至らないのです。
棺に入った祖父を小窓にのっかかるようにして覗き込んだ祖母の背中は小さくて、祖父との残りの時間を噛み締めるように寄り添う姿が不思議でした。ああ私まだ実感湧かないんだなって、祖母はお前はそのくらいでちょうどいいって。私の中の祖父母はまだ一緒にいるわけです。だから別れを惜しむ光景に違和感を覚える。
朝、お茶を祖父の湯飲みで出してしまっても祖母は笑いながらありがとうと言って祖父の前に供えてくれました。凄く自然な動きでした。
後から聞いた話ですが祖父は最後に祖母にありがとうと告げ、祖母は夫婦でしょうがと短く答えたらしいです。なんか夫婦ってこういうものなのかなって思いました。二人の話は聞いていて胸がほっこりするんです。
まだ泣くのには時間が必要なようです。

と、一応辛気臭い話をしましたが、以下はお前ってやつは……ってノリのエピソード厳選。もうさ、これ以上発掘することは出来ても新しく増えることはないんですよね。もっと話聞いとくんだった。
○無愛想な豆腐屋次男×勝ち気で器量よしな旅籠の長女。
これと決めたら絶対に譲らない祖父は豆腐を届けに行った先で祖母を見初め、半ば強引に口説き落としたという話を聞いて……私は…………。というか豆腐屋だったなんて聞いてない!祖母の実家は平成に入って老朽化が進み建て直したらしいですが、多分まだやってます。私は祖父が折り合い悪かったのと実家が近かったのもあり一度も泊まったことないんですけど(ぎりぃ
○お洒落。
祖父は寡黙キャラのくせにお洒落でした。祖母は動きやすけりゃいいじゃんって方なので祖父が結婚前に一度買ってきた装飾付きの靴の装飾を全部取っ払って、気に入って使ってると言ったことがあるらしいです。祖父は大層喜んだらしいのですが、もちろん後日やたらシンプルになっていた靴を見て一週間旅籠屋への配達をサボったとか。
○酒。
祖父は日本酒が大層お好きな方で、酒がないとあっちこっち隠してないか探し回りました。前に祖父と二人で留守番をしているとき、トイレからなかなか戻ってこない祖父を捜していたら台所に青い顔で踞っていて慌てて駆け寄ったら横に料理酒が置いてあったことがあります。祖父曰く、あんなの酒じゃねぇ。って本当に酒じゃねぇんだよ、ばかやろう!とこのときばかりは叫びたくなりました。

とりあえず今日は遅いのでおやすみなさい。



(0)





「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -