現在進行形 | ナノ


萌えすぎて
2013/03/19 22:37


朝、鹿野修哉が目覚めてまず最初に確認するものは時計だ。
今が何時なのかが知りたいのではない。枕元に置かれた古い型のデジタル時計は正確な秒数と共に鹿野に今日の日付を教える。本当に新しいものだと日付以上のことを教えてくれたりもするらしいが、鹿野にとってこれ以上の機能が搭載されるのは経済的に美味しくない上、携帯で十分だとすら思える。
二度寝したい欲求を堪えながら鹿野は時計を手に取り、日付を確認した。昨日から一日経ってない。当たり前のことだが、酷く安心する。
昨日はあまり休めなかったし、能力を酷使した。もしかしたら起きられないかとも思ったがそんなことはなかったようだ。
ほう、と息を吐き、鹿野はもそりとベッドから足をおろした。カーペットの敷かれていない剥き出しのフローリングが足の裏に触れ、ひんやりと熱を奪う。
寝起きの火照った体にはちょうど良い。そのまま床に寝転がりたい欲求を押さえつけ、鹿野はゆっくりと立ち上がった。
生地の薄い黒のスラックスにタンクトップという寒々しそうな服を次々と脱ぎ捨て、下に一枚だけの姿になると鹿野は鏡の方へと向かう。小さな、子供一人を映す程度の鏡の前に立ち、鹿野は自身の跳ね上がった短い前髪を弄る。相変わらず寝癖が酷い。
そして目元にくっきりと隈の残る愛想と目付きの悪い顔。骨の浮いている不健康で不恰好な姿。何時見ても不愉快以外の何者でもない自身の姿に鹿野は目を逸らし、鏡の傍の畳まれた衣類に手を伸ばす。
惨めだとすら思う。こんな欠食児のような姿で、同情すらも湧かない、死骸のような自分が。
愛してくれてありがとう、どうして僕なんかになんて下手なことは言わないよ。僕は愛されたかった。
それがどんな形でも良かった筈なのに、予想以上に心地好かったから僕はますます手放せなくなる。
セトは能力を嫌うけれど、逆かな。僕は能力がなかったら生きていけない。
ティーシャツに袖を通しながら鹿野はベッドの近くに落ちている筈のにベルトを探す。穴が余分に何個も錐で空けられたそれはベルトというには無惨なもので、察しの悪い者だろうと一発でそれが何かに気が付くことだろう。
普通にベルトを買ったとしても、錐がなかったら使えない気持ち、セトは知らないんだろうなぁ。
手櫛で寝癖を押さえつけながら鹿野はデジタル時計を再度確認した。時間的にセトはもういないだろう。キドはどうだろう。
何時ものパーカーを羽織ながら鹿野は目を閉じた。
それからゆっくりと目を開き、鏡を除き込む。そこにはもう先ほどまでの欠食児のような体型ではない、健康体といっても過言ではない適度に肉のついた体が映っていた。
上出来上出来、と繰返しながらカノは伸びをする。

「さて、今日も今日とて道化師宜しく欺くとしますか」

今日はきっと良い日になるはずだ。



――――――――――――――――


外向きの顔は仲間にも適用されてたりして。
やっぱりキドたちにも素顔を見られたくないのって、だって朝から僕なんか見ちゃったら凄く可哀想じゃない?とか無駄なことを考えてたり。
心を許したからこそ、見せられないものがあって、カノにとってその見せられないものの中に自分が入ってるんだろうなぁ……。大切にしたいから汚しちゃいけないという意識が働く。不気味なもの、気味の悪いもの、汚いもの、決して自分が綺麗じゃないことを知ってるから汚いことも知ってる。それを見せたくないと思うのもまたカノの愛情。寂しいことなんだけど、それがカノにとっては正しいことで、周りがなんて言っても直せないことなんだと思う。
よくある一種の病気の話なんかで自分で決めたルールを簡単に破ることはできないってあるんですが、その通りなんですよね。要らないなって思うと意識とかとは関係なく遮断されちゃうんです。
カノにとって欺くことは当たり前で、当たり前のことだから止められないし罪悪感もない。仮に息をするなと言われても出来るわけがないし、息をすることを悪いことだと思う人はいないのと同じです。
カノには罪悪感を抱かないのと同じレベルで、欺かないという選択肢が存在しません。
小さなことからこつこつと、素で笑わせていくホモが読みたいです。てか、最終的にそれで落とされたカノの話を書いたような気がしないでもないですね……はい。
結局、カノの萌えポイントが地味に作品に繋がっていく(笑)
まあ、ある程度サイト内の話を踏まえて書いてるのもあるんですがね。


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