現在進行形 | ナノ


隊長!
2013/02/26 23:32


早乙女隊長×兵部少年


※少佐の過去捏造、少佐が撃たれる一年くらい前のつもりです。



「隊長、」

そこはかとなく幼さを残す青年は大きめの軍服を翻しながら前方を歩いていた丸い眼鏡の男の元まで駆けていく。
男は自身を呼ぶ声に顔を上げ、青年の姿を視界に捉えると表情を弛めた。

「兵部か、どうした?」

男――早乙女は兵部が追い付けるように足を止めると兵部は一気に顔を明るくしながら隣へと並ぶ。
軍に入ってから暫くし成長期を迎えた兵部の身長は早くも早乙女の胸の辺りまで迫ってきていて、早乙女はふと兵部に身長を抜かれる日も近いな、と思った。早乙女も身長が低い方ではない(寧ろ、大きい方に当たる)が、兵部はもっと大きくなるのだろう。
どんどん成長していく我が子を見守るような心境で早乙女は今はまだ小さい頭を撫でた。

「た、たいちょう?」

兵部が驚いたように顔を上げる。早乙女は何でもない、と言いながら兵部から手を離し、

「兵部少尉」

と畏まった敬称で呼んでみせる。兵部はびくっと肩を揺らしながら「は、はい!」と上擦った声で返事をする。それが心底可笑しく、早乙女は必死に笑いを堪えながら固い声で話す。

「最近、軍の内部も不穏な空気に包まれているのは知ってるね?」
「……は、い」

意図が掴めないのだろう。戸惑いがちに頷く兵部に庇護欲を駆られながら早乙女は勿体振るように「これは重要任務だ、失敗は許されない」と伝える。ごくり、と兵部が喉を鳴らした。

「軍部まで私の警護をお願いしたい」

じっと真剣な瞳で見つめていた兵部の顔に一瞬迷いのようなものが生まれたのを見つけ、早乙女はふっと笑った。

「折角ここで会ったんだ、軍部まで一緒に行かないか、京介」

ポカンとしていた兵部の顔がみるみるうちに赤く染まっていくのを早乙女は悪戯が成功したとばかりに目を細めた。それから「ちなみにこれは任務だ、君に拒否権はないぞ」と笑かしながら手を差し出す。
兵部はその手に一瞬、肩を揺らしたが、ゆっくりと手をとり「あんまりからかわないでください」と俯いた。
今はまだ小さい手のひらを包みながら、早乙女は兵部と並んで歩く。

今はまだ、と繰り返しながら。





(0)





人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -