『一緒にいるのは辛い』
夜、俺の部屋にやってきたカノは数分迷った末にそう告げてきた。
「え……それって、」
戸惑う俺にカノはぎゅっと眉を寄せ、俯いたまま絞り出すような声で「別に、セトが嫌いなわけじゃないんだ」と言った。
なんすか、それ。意味、わかんないっすよ。
嫌いじゃない? 嫌いじゃないというなら何でそんなに辛そうなんすか?
「セトが好き、セトのこと大好きだよ。でも、一緒にいたら……壊れちゃいそうなんだ」
幸せすぎて、辛くなった。
カノの概念とか、そういうのは一切理解できないし、したいとも思わなかった。
でも、泣きそうな顔で、
「一緒にいたら、可笑しくなりそう」
なんて言ってくるカノに、俺はなんて返したらいいのか分からなくて。
知らないままでやり過ごそうとしていた数分前の自分が誰よりも憎らしかった。