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2nd Anniversary
thanks a lot !


※大学生設定


うーん。どうしよう。食券機の前でかれこれ2分ぐらいは悩んでいるだろうか。昼休みも後半に差し掛かったこの時間帯は後ろに並んでいる人がいないので悩みたい放題だ。それゆえに、私はなかなか決められずにいた。Aランチ(唐揚げセット)にするべきかBランチ(エビフライセット)にするべきか。これは非常に悩ましい。


「名前、まだ決まんないの?」
「だってどっちも食べたいんだもん」
「そんなこと言われたってねぇ…」
「こんなとこで何してんの?」
「あ、貴大だ。やっほー」


友達に呆れ半分で早く昼食のメニューを決めろと催促されているところにふらりと現れたのは、私の彼氏である花巻貴大、と、その友達だった。同じ大学に通っている彼とは学部が違うのだけれど、大学構内であれば結構な確率でこうして出くわすことが多い。この時間にふらふらと食堂に現れたということは、彼も3限目の授業は空きコマになるのだろう。そういえば昨日そんな話をしたかもしれないとぼんやり思い出す。
私は挨拶もそこそこに、絶賛悩み中の出来事について彼に説明した。唐揚げとエビフライどっちも食べたいんだけどどうしたら良いと思う?という、傍から見れば我儘かつどうでも良い内容であるにもかかわらず、彼はふむふむと私の話に耳を傾けてくれる。ノリが良いのか優しいのか、たぶんその両方。こんな馬鹿な私に付き合ってくれるのは貴大ぐらいのものだろう。


「そんなん簡単じゃん。どっちも頼めば?」
「さすがにそれは食べきれないよ」
「じゃあ俺がAランチにするから名前はBランチ買って。おかず交換すりゃ一石二鳥だろ?」
「え!いいの?」
「一緒に食っていいなら」


彼の言葉に目を輝かせつつ友達に確認の意味を込めて視線を送れば、勝手にどうぞ、と言わんばかりの生温かい眼差しを返された。なるほど、一緒に食べてもいいらしい。
というわけで、ラッキーなことに唐揚げもエビフライも食べられることになった私は、意気揚々と食券を購入した。私と私の友達と、貴大とその友達の4人は、それぞれの昼食を持って窓際の空いた席を確保する。私の隣には友達、目の前の席には貴大、その隣に彼の友達という配置で腰を下ろしたら、遅めのランチタイムのスタートだ。
いただきます、と手を合わせたら、2本あるエビフライのうちの1本を彼の皿の空いたスペースにお裾分けする。彼もそれに倣って私の皿の空いたスペースに唐揚げを2つぽいぽいとのせてくれたおかげで、私の念願である唐揚げとエビフライセットはめでたく完成した。非常に満足である。


「そんなに嬉しい?」
「え?何が?」
「唐揚げとエビフライ食えんの」
「勿論!どっちも食べたかったんだもん」


私はどれだけ満ち足りた表情を浮かべていたのだろうか。正面に座る彼がおかしそうに尋ねてきたものだから当然の如く質問に答えれば、そりゃ良かった、とつられたように顔を綻ばせる彼に胸がきゅんと疼く。悪戯っ子みたいにちょっぴり無邪気なその表情が、私はかなり好きだ。いや、いつもの普通の顔も好きなんだけど。ていうか相手が貴大ならどんな顔されても好きなんだけど。
付き合い始めて半年ほど。だから、まだまだ熱が冷めていないだけなのかもしれないけれど、私は今のところ、彼との付き合いが長くなればなるほど「好き」が増していっていた。3の倍数はカップルにとって不吉だとか危険だとか気を付けなければならないとか、そういう一般論は私達には無縁のように思える。だって私の場合、彼のことを嫌いになれる要素がひとつも見当たらないのだ。不穏な空気など流れるわけがなかった。


「2人ってどんな付き合い方してんの?」
「ん?」
「どんな、とは?」
「例えば2人きりの時とかデートの時とか、どんなことしてるのかなって」


私の隣からとてもふわふわとした曖昧な問いかけをしてきた友達は、オムライスを口に頬張りながら私と彼を交互に見遣る。
どんな、ときかれても、答えるのは難しかった。きっと他のカップルだってやっているようなことだ。特別なことは何もしていない、と思う。うーん…と答えを考えながらエビフライを齧る私と、唐揚げに齧り付く貴大。ほら、貴大も答えに困ってる。


「甘いもの食べに行くことは多いかなあ…」
「食べ物は大体こんな感じでシェアしてるよな」
「そういえばそうだね。私悩むことが多いから」
「名前、ソースついてる」
「あれ、どこ?」
「ここ」


話をしている最中に彼の長い腕がこちらに伸びてきて、私の左側の唇の端に指が滑らされる。どうやらエビフライのタルタルソースがついていたらしい。彼は指についたそれをぺろりと舐める。
タルタルソースに限らず、私は口元に何か付けがちだ。子どもみたいで嫌だから気を付けているつもりなのだけれど、大体彼に指摘されてしまう。アイスクリーム、生クリーム、チョコレート、ケチャップ、マヨネーズ、その他諸々。だからこんなのは私達にとって日常茶飯事だったのだけれど。


「そんなこと、いつもやってんの?」
「え、うん」
「…ふーん」


なんだ、この少し引いた感じは。これぐらい普通じゃないの?彼は私にとって初めての彼氏だから、何が普通なのかイマイチ分からない。だから、彼がすることは全部、恋人として「普通」のことなのだと勝手に思い込んでいたけれど、違うのだろうか。


「おかしい?」
「おかしいっていうか…ラブラブなんだなと思っただけ」
「そうそう、俺らラブラブなの」
「お前そんなこと言うキャラだったっけ?」


それまで会話に参加せずラーメンを啜っていた彼の友達が、少し驚いたように口を挟んできた。彼の言う「そんなことを言うキャラ」がどのようなキャラかはよく分からないけれど、 少なくとも今の貴大はいつも私と一緒にいる時の貴大なので、これが通常運転なのだとすれば貴大は「そんなことを言うキャラ」ということになるのだろう。私の友達同様、彼の友達も少し引いている気がするのは私の思い違いだろうか。全然変なところなんてないんだけどなあ。


「今までとちょっと違うんですよこの子は」
「あっそ」
「そんなことより名前、今日何限までだったっけ?」
「4限目が休講になったから今日はもう帰るよ」
「マジ?俺も今日この後フリー」
「え!じゃあ一緒に帰れる?」
「ん、オッケー」
「貴大の家行きたーい!」
「いーけど。そういえばメイク落としなくなったって言ってなかった?」
「そうだった。買い物してから帰ろ」
「夜ご飯何にすっかなー」
「肉じゃが!」
「作れんの?」
「たぶん大丈夫」
「おーっし、じゃあ行くか」


残っていたおかずとご飯をぱくぱくとたいらげて、ごちそうさまでした、と手を合わせる。お互いの友達に、そういうわけで…と断りを入れれば、末永くお幸せに、と手を振られた。理解があって助かる。食器を片付けて彼の隣に並ぶと、特に何の意識もせずに自然な流れで手が触れて指が絡んだ。


「やじゃない?」
「何が?」
「手繋ぐの」
「やじゃないよ。なんで?」
「んーん。人に見られんの嫌かなと思って」
「いつも繋いでるのにそんなこと思わないよ」
「…そっか」
「貴大?どうしたの?」
「いや、なんでもない。名前のこと好きだなと思って」
「私も好きだよ」
「うん…うん」


ぎゅっと、私の手を握る彼の手の力が少し強くなった。見上げた横顔は幸せそうで、私もつられて幸せな気持ちになる。後ろで友達が私達の言動を見て溜息を吐いていたとしても、帰り道に同じ学部の人に会って繋いだ手を凝視されても、嫌だなんてこれっぽっちも思わない。これが私達の日常であり普通だから。これから先もこうでありたいと思うのだ。

メロウ・メロウ

はまゆさま、この度は2周年企画にご参加くださりありがとうございました。
砂糖吐くほど甘い話ってどんなのでしょうか?って自問自答しながら書いたんですけど、マッキーってこんなことしますかね?ベタすぎですか?どう思います?そもそもこれマッキーでした?ヒロイン溺愛しすぎ?最近彼の夢を書いてなさすぎて迷子になっててごめんなさい…ぶっちゃけかなり自信がない笑。リハビリしなきゃですね…マッキー好きなんだけどな…おかしいな…
私もはーちゃんのこと大好きだよー!いつも絡んでくれてありがとう!これからも仲良くしてね!