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酔っ払いナイトメア


※大学生設定、下ネタ注意


ビールは苦手だけど甘いやつはジュースみたいだから飲みやすい。だからお酒は基本的に美味しいと思う。私はお酒に強くもなければ弱くもなく、適度に飲める程度だ。自分でもそれが分かっているから飲み過ぎたりしないように注意している。そのおかげで今までお酒で失敗したことはなかった。今日だってちゃんとセーブして飲んだから、ふわふわ気持ち良い程度でちゃんと帰宅できている。


「おかえりー」
「あれ?今日来るって言ってたっけ?」
「いや。終電逃したから泊めて」
「ああ…そういえばそっちも飲みだって言ってたね」


一人暮らしの我が家に電気が点いているからおかしいなとは思ったけれど、なるほど、合鍵を持っている彼氏がいたのなら納得だ。電気を点けっぱなしで出たわけじゃなくて良かった。
彼氏である鉄朗は、たまにこうしてふらりと泊まりにくる。大体は今日のように終電を逃したからという理由で。お互いの家の合鍵を持っているので行き来は自由だけれど、大学にも駅にもほど近い私の家に鉄朗が来ることの方が圧倒的に多い。
冷蔵庫を開ければ、飲みから帰ってきたばかりだというのにまだ飲むつもりなのか、コンビニで買ってきたと思われるお酒が何本か入っていた。鉄朗もそんなにお酒に強い方じゃなかったはずだけどな、と思いながら水を飲む。そこへのっそりと現れた鉄朗が、なんか取って、と手を伸ばすので、とりあえず私の家に残されても困るビールを手渡した。


「まだ飲むの?」
「んー、今日あんま飲んでねぇもん」
「ふーん。私、シャワー浴びてくるから」
「はいよー」


まるで自分の家であるかのように寛いでいる鉄朗を残し、私はさっさとシャワーを浴びる。汗を流してさっぱりして、軽く保湿ケアをして、歯磨きをして。さてこれで寝る準備は万端だとリビングに戻ったところでどっと疲れが増した。
私がシャワーを浴びている間にどんなペースで飲んだのか。机の上には空き缶がいくつか転がっていて、どこから取り出したのかおつまみのゴミまで散乱している。しかもこの状態を作り出した犯人は堂々とラグマットの上に寝そべって寝ている始末。もの凄く蹴り飛ばしてやりたい。
沸々と怒りが込み上げてくる中、ふと私の頭を過ぎったのは今日の飲み会での話題。女友達ばかりで騒いでいたこともあって会話の話題は恋愛絡みのものが多かった。そしてお酒が回ってきた頃に出てきた話。
男の人は寝ている時にアソコを触られても反応するのか。そもそも触られていることに気付くのか。
本当にくだらない内容すぎると思う。ぶっちゃけそんなの反応しようがしまいが、気付こうが気付くまいがどうでも良いことだ。だからその時の私は、その話題に食いつくこともなく枝豆を貪っていたのだけれど。今のこの状況。実験するには打って付けではないか。
本当に、ただの興味本位だった。もしかしたら少し残っているお酒の力もあったのかもしれない。とにかく私は、何かの衝動に駆られるまま、寝転がっている鉄朗の股間に触れてみた。
薄い布越しにそっと触れたそこは最初こそ何の反応も示さなかったけれど、撫で続けているうちにむくりと勃ち上がり始めて、まるで生き物のよう。どうやら意識がなくても、男の人というのは反応するらしい。
へぇ…無意識でもこうなるんだ。途中から段々と面白くなってきた私は、暫くその動作を続けていた。そうして、触られていることに気付くのか、というもうひとつの疑問を思い出す。
ゆっくりと撫でる動作を続けながら、恐る恐る鉄朗の顔の方へと視線を移し起きているかどうか確認。そして、激しく後悔する。ニヤニヤと笑う鉄朗とバッチリ目が合ってしまったからだ。


「ナニしてんの?」
「…実験?」
「へぇ…興味深い実験シてんね?」
「もう終わったけど」
「実験結果教えてほしいなあ?」
「何言ってんの。そんなことより、ここ片付けてから寝てよね」


非常に気まずくはあったけれど、強引ながらも話題を逸らすことに成功した私は、そそくさと寝室に向かう。そう、私は寝ようと思っていたんだ。さっさと寝よう。
枕元に携帯を置いて布団に潜り込んだら準備はバッチリ。おやすみなさーい…なんて、都合よく夢の中に旅立たせてもらえるわけもなく。ぎしりとベッドのスプリングが軋む音がして、大きな身体が布団の中に侵入してきた。
酒臭い。ていうか布団に入ってくる前にシャワーぐらい浴びてきてほしい。デリカシーってもんがないなこの男は。


「片付けは?」
「終わった」
「シャワー浴びてきなよ」
「明日の朝でいい」
「私がよくない」
「えぇ〜…でもヤル気にさせたの名前チャンの方だしぃ〜」
「何のことだかさっぱり」
「欲求不満ってわけじゃねぇの?」
「断じて違います」


そりゃあまあ冷静に考えてみれば男の人の股間を触っていたら欲求不満だと思われてもおかしくないと思うけれど、こちらとしては全くと言っていいほどその気がなかったのは事実だ。
ぶーぶーと背後から不満そうに訴える鉄朗がうざったくて面倒ながらも事の経緯を説明すれば、なんだそりゃ、と呆れ半分で笑われた。どうせ馬鹿ですよ。
しかしこれでやっと眠りにつけるだろう。と、安心していた私の身体に回されたままの手が不穏な動きを始めた。おい。今日は眠たいから無理だぞ。その気はないって説明したばっかりなんですけど。


「さっきの私の話きいてたよね?」
「きいてたけど」
「じゃあ…」
「分かってないねぇ名前チャン」
「何が?」
「誰に触られてもこうなるわけじゃなくて、好きなコに触られたからこうなんの。実験結果に付け加えといて」
「は?え?」
「つまり…責任は取ってくだサーイ」


そんな男事情なんて知らないし!私、ほんとに眠たいの!飲みの日って楽しいんだけど最高に疲れてるの!お酒入ってるから!ていうかシャワー浴びてって言ってんのに!
どんな言い訳をしたって、どんな抵抗をしたって、私以上の酔っ払いには通用しない。ついでに力でも敵わないし、もっと言うなら「好きなコ=私」という、彼女としてはちょっぴり、否、かなり嬉しいことを言われてしまって、抵抗の手が緩んだことは否めなかった。悔しい。
後から気付いたことだけれど、お酒に酔った時の鉄朗はいつも以上に手加減を知らないしネチっこいから疲れは倍増。もう2度と興味本位で、特に酒の入った鉄朗の身体には触れないようにしなければと、心の底から誓ったのだった。