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黒尾とデート


今日は前々から楽しみにしていた黒尾とのデートの日。本当ならウキウキワクワクドキドキしながら待ち合わせ場所に向かっているはずなのに、私は憂鬱だった。原因は全て、昨日の出来事にある。


◇ ◇ ◇



デートを翌日に控えた昨日の夜。私は舞い上がっていた。友達から恋人になってまだ2ヶ月ほど。部活で忙しい黒尾とデートに行くのは初めてのことだった。恋人なら、手を繋いだりするのかな。どうしよう!ドキドキする!そんな胸の昂りを抑えるために、友達にメッセージを送った。


“明日、黒尾とデートなんだけど!どうしよう!手とか繋いだりするのかな?ドキドキするー!”


彼氏持ちの女友達だから、何かアドバイスをもらえるかもしれない。そんな淡い期待を胸に返事を待っていると、待ち侘びていたメッセージ通知の音。急ぐ必要はないのに、慌ててスマホに指を滑らせて、私は固まった。
メッセージの送り主は女友達ではなく、黒尾。まさかと嫌な予感がして自分が送ったメッセージを確認すると、そのまさかで。私はあろうことか先ほどの内容を黒尾に送っていたのだった。
穴があったら入りたい。何なら、明日のデートなんて行かない方がマシだ。そう思いながらも恐る恐るメッセージの内容を確認する。


“可愛いメッセージどーも。ドキドキしてくれてんだな?笑”


私はとりあえず、間違えて送信してしまったことと、無理だとは思うが今のメッセージの内容は見なかったことにしてくれと返事をした。
なんという軽率な行動を取ってしまったのだろう。私は馬鹿なのか。こんな有り得ないことしちゃったんだから馬鹿ですよね。1人で落ち込みまくっていると、またメッセージの通知音。


“明日、楽しみにしとくわ。”


思っていたよりもからかわれずに済んだことは喜ばしいが、だからこそ嫌な予感がした。それでも、楽しみにしとく、と言われてデートをドタキャンすることなんてできなくて、結局私はデートに着て行く服のコーディネートを考え始めたのだった。


◇ ◇ ◇



自分で蒔いた種とは言え、あんな恥ずかしい内容のメッセージを送ってしまったら会うのはどうも気まずい。少しでも可愛いと思ってもらいたくて、悩みに悩んで決めた洋服を身に纏ってはいるものの、気持ちは浮上しない。
待ち合わせ場所に着くと、その背の高さからすぐに黒尾を見つけることができてしまって、益々パニックに陥る。好きになった相手だからフィルターがかかっているのかもしれないけれど、すらっとした高身長の黒尾はどこにでもありそうなジーパンを履いているだけなのに非常にカッコよく見えた。
どうしよう。昨日のこともあって恥ずかしいし、よく考えたら黒尾ってモテるしカッコ良いし、私が隣を歩くのはおこがましいような気がしてきた。そう思い始めてしまうと、すぐそこに黒尾がいるのに足が動かなくなってしまう。
暫く行こうか行くまいか迷っていると、とうとう私がいることに気付いてしまったらしい黒尾が近付いてきた。万事休す。もう逃げることはかなわない。


「なんでこっち来ねーの?」
「いや…なんとなく……」
「つーか、元気ない?」
「そんなことは、ない、と思う」
「昨日のアレのこと気にしてる?」


1番触れてほしくない話題を振られてしまった。黒尾とは友達の延長みたいに付き合っていたから、急にこんな恋する乙女モードに入られても困るに違いない。またどうせ、らしくないとか言って笑われて、散々からかわれまくるのだろう。
そう覚悟して俯いていたのに、黒尾は何も言ってこない。私の態度に呆れてものも言えないのだろうか。不安だけれど顔を上げる勇気はなくてそのまま俯いていると、そっと、自分の手に何かが触れるのが分かった。ゴツゴツしていて大きくて、それが黒尾の手だと認識するまでに少し時間がかかる。


「え…なんで、」
「こうしたかったんじゃねーの?」
「う、ん…そう、だけど、」
「じゃあもっと嬉しそうな顔しろよなー。俺もそこそこ緊張してんだから」


全然緊張している素振りなんて見せてくれないくせに、そんなことを言う。けれど、握られている手は少し汗ばんでいるから、本当に緊張しているのかもしれない。
やっとのことで黒尾の顔を見上げればニィっと口角を上げるいつもの表情があって、なんとなく安心する。なんだかんだで優しいよなあ、なんて思いながら、今更手を繋いでいることにドキドキしていると、黒尾がその大きな身を屈めて顔を近付けてきた。


「その服、俺好み。すげー可愛い」
「へ、え?あ、う、」
「ドキドキした?」


耳元で囁くなんて反則だ!と思いながらも、その言葉が嬉しくて堪らなくて。不覚にも、更にドキドキが増してしまったのは言うまでもない。