「グリーン、どこ?」

ちいさい頃、かくれんぼをしたときにレッドはなかなかおれを見つけることが出来なかった。
5歳だからそんなに難しいところに隠れることが出来るわけないのに、レッドが探すのが下手なのも手伝ってかおれは見つけてもらえないままだ。
というか、目の前にいるんだけどな。
そう思いながら、しゃがみこんだ垣根の向こう側でちいさくため息をつく。
覗きこめばすぐ見つけられるはずなのにレッドはそれをしない。

「…グリーン…いない…」

挙げ句の果てには、ぐずっと泣き声が聞こえてきた。
それに仕方なく立ち上がると、垣根の隙間からガサガサと出ていく。

「レッド」
「グリーン!
…みつけたぁ」

レッドに声をかけるとレッドが振り返っておれを見ると、嬉しそうに笑ってそう言う。
というか、かくれんぼしてたのにわざわざ見つかりにいくとかないと思う。
だけどじわりと涙目だったレッドが笑ったから、まあいっか、とも思った。
5歳とはいえ、好きな子には弱い。
そう、おれの初恋は、保育園の先生でもおなじ組の女の子でもなく、レッドで。

「…どこにかくれてたの?」
「あっち」

レッドが聞いてきたから垣根のほうを指差してみれば、レッドは驚いたように目を丸くさせた。

「グリーンはかくれるの、じょうずだね」

だけど感心したようにそう言うと、にこ、と笑う。
涙目も泣き声も消えて、いつも通りのレッドに戻ったみたいだ。

「レッドがみつけるのへたなだけだろ」
「…そんなことないもん」

レッドにたかがかくれんぼのことで誉められたのがちょっと恥ずかしくて、素直に頷かずにそんなことを言ってしまう。
するとレッドはむっとして口を尖らせた。
でも、おれが隠れるのが上手いわけじゃない。
レッドが見つけるのが下手なだけだ。
そしてそれは、昔もいまも変わらない。

「…グリーンの初恋っていつ?」
「…なんで?」

ソファーに座ってテレビを見ていると、隣で雑誌を読んでいるレッドがそんなことを聞いてきた。
まさかレッドの口から初恋という文字が出てくるとは思ってなかったから内心びっくりした。
それに、まさか初恋の相手からそんなことを聞かれるとも思ってなかったから。
そう、おれは、レッドが好きだった。

「…なんか、初恋は実らないんだって」

そう言うと、レッドはそうなの?と首を傾げながら読んでいた雑誌をおれに見せてきた。
つーか、そんな雑誌どこにあったんだ?おれ、買ったっけ?

「あー…よく言うな、それ」
「ふーん…」

適当に合わせるように言うと、レッドが感慨深く頷いている。
そんな恋愛の話とか興味ないくせに、突然どうしたんだろうか。

「そう言うレッドは初恋いつだよ?」
「…僕?うーん………わからない…」

レッドが首をひねって考えるものの、考えることを放棄してしまったようだ。
でも恋愛事とか疎いし、初恋があってもそれが初恋だということに気付いてない可能性もある。
そう思うと、好きだという気持ちを隠したらレッドはずっと気づかない気がする。
かくれんぼも見つけるの下手だったし。

「…」

初恋は実らない。
知ってる。
だけどおれの場合は、初恋を隠してしまっているから実るも実らないもわからない。
でもたぶん、実ることはないんだろう。

「あ、このケーキ美味しそう」

雑誌に載っているケーキ特集なページを見て、レッドが目を輝かす。
それにくすっと苦笑すると、そんなレッドの頭をよしよしと撫でた。

「…なに?」
「そういやさ、昔かくれんぼをしておれを見つけることが出来なくて泣いたよな」

昔もいまも変わらない。
レッドは見つけるのが下手だ。
それがおれ自身でも、おれの気持ちでも。
まあおれが隠しているから見つけることが出来ないのもあるけど。
一番近くにいるレッドに一番隠してた。
好きだっていう気持ちを。
言わなかった。言えなかった。
言っていまの関係が壊れたら怖かったから。
子どもなりにこれでもいろいろ考えたんだ。
どうするのが一番いいか。

「…泣いてない、と思う」
「泣いてたって。
可愛かったなぁ」
「…グリーン」

するとレッドが記憶にはないけれど否定はしておく、みたいな微妙な表情でそう呟く。
だから笑いながらそう言ってまたよしよしと頭を撫でると、レッドが怪訝そうな顔になった。

「今かくれんぼしたらどうだろうな」
「…見つけられるに決まってるでしょ」
「…どうかな」

なに言ってるの、とむすっとなるレッドに、否定でも肯定でもない台詞を返す。
見つけてほしいような、見つけてほしくないかのような、複雑な笑みを浮かべて。













かくれんぼ

「もういいかい?」

まだだよ。
幼い初恋は、実らない。

(おれはきみを見つけられたけど、きっときみはおれを見つけられない)



>かいりさん
レッドさんが見つけるまで初恋のことを言わない。でもレッドさんが見つけられないとわかってるグリーンの話になりました。だけどレッドさんがいつか見つけてくれると思います。
リク有難うございました。




かくれんぼ/Whiteberry



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -