グリーンと買い物をして一緒に帰りながら、澄み切った透明な冬の空を見上げる。
いつも見上げている空よりも高いそれに、はあと息を吐き出せば薄いわたあめが一瞬にして消えていく。

(…だいぶ冷えるなぁ)

息が白いから空気が冷たくて寒いけど、グリーンは寒がる僕を見るとシロガネ山にいるくせになんでこっちのが寒いんだと呆れることが多い。
そう言われても、慣れてない寒さには僕だって弱い。
そう思いながら冷たくなった手を擦る。
荷物はグリーンが持っているから、僕の両手は空いていて。
そして冷たい手を擦ると、グリーンの手ももしかしたら冷たいのかな、と思う。
だから僕のななめ前を歩いているグリーンの後ろ姿に声をかけてみる。

「グリーン」
「んー?」
「手、繋いで帰ろう」

寒いから、とちいさく付け加えて言ってみればグリーンがぴたっと立ち止まる。
そして僕のほうを振り向いてくると、空いてるほうの左手で僕の右手をがしっと掴んできた。
それに驚いて体がびくっとなる。

「うわっ、すげー冷てぇし」
「…グリーンは意外にあったかい」
「ばか、お前が冷たすぎるんだっつーの」

呆れたようにため息をつくと、グリーンはそのまま、僕の手を掴んだまま歩き出した。
引っ張られるようにして歩くそれに、慌てて歩調を合わせる。

「つーか、氷だな、氷」
「え?」

すると急に主語のない台詞を言われ、なんのことだと隣のグリーンを見つめる。
と、グリーンが腹立つような笑みを浮かべて僕を見てきた。

「この手の冷たさ。
夏だったら大歓迎なんだけどなー」
「…心が冷たいグリーンに言われたくない」
「手があたたかったら心もあたたかいんだよ」
「それは聞いたことない」

皮肉めいたことを言われたから、むかっときてそう言い返してみる。
手が冷たかったら心があたたかくて、手があたたかったら心が冷たいって言うし。
だから減らず口のようにして言ってくるグリーンに、むすっと頬を膨らませてそう対抗してみる。

「…」
「…」

すると急にふたりの間にふわりとした空気が振ってきた。
今更ながらに手を繋いでいるということをふたりとも再認識したみたいで。
ふたりとも、ぼふん、と湯気が出るように顔が真っ赤になる。
なにこれすごく恥ずかしい。

「……グリーン」
「…なんだよ」

手を繋いだままだと、名前を呼ぶのもなんかちょっとてれくさい。
今まで手を繋いだことがないわけじゃないけど、ここは外で歩道で僕たちのほかにもひとがいて。
そんなところで手を繋ぐなんて。

「…早く帰る?」

我に返ってみると、けっこう恥ずかしい。
嬉しいのは嬉しいんだけど。
だからグリーンにぽつりとそう提案してみると、

「…寄り道して帰るか?」

と逆に聞かれてしまって。

「…」

呆れた顔が見たくて、時々邪魔をしてすごい怒られたりもするけど。
でもグリーンといるのが楽しくて、グリーンと過ごす時間が嬉しくて。
そんな時間がいつまでも続けばいいな、と思えて。
きっと大切なのは、このふたりのかんじ。

「…っ」

だから僕は、うん、と答えるかわりに、引かれている手に、繋がれている手に、ぎゅっと力を込めて笑った。











マカロニ

(もし最後のときがいつかくるのなら、)
(それまでずっときみをまもりたい)



>あきさん
愛情に近い友情というか友情にちかい愛情というか。
最後の別れを思っても相手のことを想うのっていいなぁと思います。
リク有難うございました。



マカロニ/Perfume



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