付き合う子は、いつも似たような子ばかり。

「ごめん」

黒髪。
白い肌。
性格は天然っぽい。
だけど付き合ってみて、「違う」、と気付く。
黒髪で白い肌で性格が天然っぽくても、違うんだ。
目はキレイな赤い色をしている。
そんなに喜怒哀楽ははっきりしてはいない。
猫舌。
あまいもの大好き。
あれでいて意外とかわいいものが好き。
不意打ちに弱い。
どこでもよく眠る。
笑うとけっこう可愛い。
バトルはすげー強い。
そしてなにより、おれのことが嫌いだ。

「…いや、大嫌いだったっけ」

ほら、全然違う。
付き合っていてそれに気がつくと、見た目だけで盛り上がった熱は一気に冷めていって別れてしまう。
こんなの、

「……最低だな、おれ」

わかってる。
誰かを重ねてその子と付き合うのがどれだけその子に対して失礼で、そしておれが人間として最低かってことに。
わかってはいるけど、頭はプラネタリウムのように暗闇に思い出だけを映し出して、それに見とれたおれは似たような子ばかりを求める。
そして自分で自分を追い詰めていくんだ。
この子は違う、って。
そして、ここにあいつがいないのをまた思い知るんだ。

「…」

いまでも鮮明に思い出せる。
好きなものを見てるときの、キラキラと宝石みたいな赤い両目。
冷え性なのか、氷みたく冷たい両手。
寒くなると赤くなる鼻先。
手入れなんてしてないだろうに、多少くせっ毛だけどキレイな黒い髪。
女の子みたいにキレイに整えられた爪先。
規則正しい呼吸音と静かな寝息。
天然と不思議が入り交じる頭のなか。

「…」

目も手も鼻も髪もつま先も心臓も脳も、細胞でさえも。
レッドをひとつひとつ形どるすべてのものが愛おしい。

「…つーか、」

いまどこで何をしているんだろう。
笑っている?
泣いている?
確かめたい。
あいつが生きているということを。
だから探すに探すけど、あいつはどこにもいなくて。

「…そう簡単にいかないことぐらいわかってる、けど」

グレン島から見る夕焼けが目に染みるようで。
空一面が橙色で、その橙色が沈む海も橙色だ。
あいつもこの橙色をどこかで見ているんだろうか。

「…嫌われてたしな」

まあ嫌われるようなことしてたおれが悪いんだけど。
だけど言うだろ?
好きな子ほどいじめたいって。
ぼそっと呟いた台詞が橙色に吸い込まれていく気がして、おれはすうっと息を吸い込むと、

「レッドー!!」

探しているあいつの名前を、橙色に染まった空に、海に、叫ぶ。
こうすれば橙色に吸い込まれたおれの声が、じわりじわりと橙色に溶けていくみたいで。

「…好き、だったんだけどな」

橙色に溶けたそれが、いつかあいつに、レッドに届けばいいな、と。
空に、海にのって、はるか遠いどこかへ。

「…あー…過去の自分、ぶん殴ってやりてぇ…」

がしがしと頭を掻いてため息まじりにそう呟くと、一面に広がる橙色を見つめる。
探しに探しても見つからない。
それならあの橙色の向こう側にいるのかもしれない。
だけどおれは、あれを越えることは出来なくて。

「………とっくのむかしに結末はわかってたんだけどな」

きっとまたおれは、黒髪で白い肌で天然っぽい、レッドに似た子に恋をするのだろう。














オレンジテトラポット



>かなさん
溺愛というよりは悲恋っぽいかなぁと思って書いてみたのですが解釈違ってたらすみません。グリ→レでしたがグリーンが一途なのか最低なのか微妙なかんじですね…。
リク有難うございました。




オレンジテトラポット/藍坊主



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