ポケギアがチカチカしてる、と思って見てみればディスプレイには着信有りの表示。 「…やっぱり」 そもそも僕に掛けてくる人が限られてるから、犯人は誰なのかすぐわかるけど。 そしてディスプレイに表示された、グリーン、という文字を指でなぞる。 「…」 仕事が立て込んでいて忙しすぎて死にそうとかなんとか一昨日来たときに言ってた。 だからかけ直そうかどうか迷ったけど。 「…」 リダイヤルのボタンを押して、グリーンにコールする。 そしてコール音が二回鳴ったところで切った。 これは僕のただの自己満足。 だけど精一杯の気持ちはこめてる。 「…よし」 それに満足そうにしているとピリリっ、とポケギアが鳴った。 もちろん着信相手はグリーン。 「…もしもし？」 『…もしもし』 ポケギアから聞こえるのは、なんだか照れくさそうな声色で。 『お前な…こういうときにそういうことするなよな…』 はあ、とため息まじりで言われるそれは呆れたものではないようだ。 「…なにが？」 『なにが？じゃねーよ。 二回コールの意味とっくに知ってんだかんな』 「そうなんだ？」 『あー…レッドにすげー会いたい会いたい会いたい会いたい』 呪文のようにそう言われ、それにくすっと笑う。 僕がグリーンに二回コールするその意味。 それは「好き」という二文字をこめたもので。 でもグリーンに教えたことないはずなんだけどなぁ。 『…いま何してる？』 「え？グリーンのこと考えてた」 『っ？！ば…っ、お前これ以上おれを生殺しにするなよ…！』 「…なま？」 急に怒られたけど意味がわからない。 それに首を傾げてみるけど、グリーンはポケギアの向こうでなんか声にならない声を出していてますますわからない。 だって着信あってグリーンにかけたらグリーンからかかってきて。 グリーンのこと考えてる以外になにがあるの？ 『…なあ、いまそっち行ったらだめか？』 「え？でも仕事は？」 『うっ…ま、まだあります…』 もごもごと聞いてきたそれに至極当たり前のように聞き返してやると、グリーンがしくしくと泣いてるのが聞こえた気がした。 そっか、仕事まだあるんだ。 こういうときは僕も進んで下山はしない。だってグリーンの負担になるのは目に見えてるから。 グリーンは構わないって言うけど、僕が嫌だ。 「グリーン」 『…なんだよ』 ちょっとふて腐れたみたいな声色がなんか可愛い。 「僕にできること、なにかある？」 『…』 「…」 そばにいてあげられたら一番いいのかもしれないけど、それがいまは出来ないから。 そう思って聞いてみる。 今の僕ができる唯一のことを。 『……じゃあさ、二回コールじゃなくレッドの口から聞きたい』 「え？」 『電子音な愛の言葉もいいけど、レッドの声で言葉で聞きたい』 言われたそれは、あの二文字を指すことだ。 つまりは、言えってこと？ 「…」 『だめならいいけど』 「っ、だ、だめじゃないよ」 まさかそんなことを言われるとは思ってなくて、それにちょっとだけ焦る。 だけど今の僕にできるのがそれならば。 「……好き」 ぼそっと呟くようにそう告げる。 照れくさいからちいさい声になったけど、グリーンには聞こえてると思う。 するとグリーンは。 『もう一回』 そう言ってきて。 「……好き」 『もう一回』 「……好き」 『もう一回』 「〜〜…っ…、好き、だよっ」 何度も催促されて、僕のなかの恥ずかしさのキャパシティを越えそうになる。 たぶん、じゃなくて絶対僕の今の顔は真っ赤だろう。 そして三回催促されると。 『おれも好きだよ』 「！！」 そう返され、それに全身から火が出るほど恥ずかしくなる。 「〜〜っ」 顔が見えてなくてよかった。 いまグリーンが目の前にいて、こんな僕を見たらきっと。 『…やっぱ今からそっち行く』 「え？」 ハッピーシンセサイザ （きみの胸の奥まで届くようなメロディ奏でるよ） >もそさん 曲がかわいいのでかわいいかんじにしようと思って撃沈しました…。 歌詞からあまり連想されてないような雰囲気ですみません…！ リク有難うございました。 ハッピーシンセサイザ/巡音ルカ・GUMI |