「あー…つかれた…」

バタン、と家のドアを閉めると玄関で靴を脱ぐ。と、玄関におれのじゃない靴があった。
そういや今日下りてくるって言ってたっけ。
まあそれで明日無理やりに近いかんじでオフを勝ち取った代償が、今日のぎっしぎしに詰められたジムバトルだったんだけどな。つーか、分単位でスケジュール入れるか、フツー。あとジムトレーナーのやつら、最近手ぇ抜いてねーか。回ってくる数が半端ないんですけど。

「レッドー」

そんなことを思いながら、リビングにいるであろうレッドに声をかけながらそのリビングに入っていく。

「…なにしてんの」
「……お、おかえり」

レッドはというと、ソファーのうえでクッションを抱えて体育座りなんかしていて。
おれにそんな光景を見られてもレッドは構わずクッションをぎゅうと抱えている。
ちょ、なに、このかわいいの。
疲れきっている心と体に癒しの波動が一気に沁みわたってくる。

「お、お風呂わいてる」
「え、まじで?」

やっぱ疲れてるときはレッドに癒してもらうに限る。
とか思っていると、レッドがぼそっとそんなことを言ってきた。ちょっと頬が赤いのは自分のその体勢に恥ずかしくでもなったんだろうか。

「…さ、先入った」
「じゃあおれも入ってくるかなー」

えらいえらい、と言いながらレッドの頭をよしよしと撫でる。
レッドはそれにまた顔を赤くしている。
なんか今日かわいいな。いや、いつもかわいいけど。
そして、うーん、と背伸びをするとそのまま風呂場へと向かう。
風呂わかしてるとかレッドも気が利くようになったよなーって、もう22時だし、レッドにしてみれば風呂入って寝たいとこだろうから妥当か。むしろこの時間帯で起きているのが珍しいぐらいだし(大抵この時間帯だ寝てることが多い)
そして風呂にはいり、今日一日の疲れをとるべく長風呂なんかしてみる。

「あー…なんか一気に年とった気分…」

風呂のなかで体をマッサージしつつそう呟く。
って、まだ10代でそんなこと言っててどうすんだ、おれ。
自分で自分につっこみをいれつつ、鼻先あたりまで湯船にぶくぶくと浸かる。
明日なにするかなー。今日早く寝れば明日普通どおり大丈夫だろうし、レッドはなにかしたいこととかあるだろうか。バトルはともかく、買い物でも行くかな。そろそろ冬物揃えとかねーと。

「あれ?まだ起きてんの?」

風呂からあがってみればレッドはまだリビングにいて。
しかも帰ってきたときのまま、ソファーのうえでクッションを抱えて体育座りだ。

「………うん」
「別に先に寝ててよかったのに」

それかあれか、ベッドの右と左どっちとる、みたいな。
つーか、いつもだったら遠慮しないで真ん中寝てるくせに。
それともまだ眠くないとか?

「…グリーン、ご飯は?」
「え?あ、ジムで軽く食べたしいい。
あっ、もしかしてレッドまだ食ってないとか?!」

レッドに食事のことを聞かれ、はっとして聞き返してみる。
いつここに来たかは知らねーけど(合鍵あるからいつでも入れるし)、帰りが遅くなるってのは言ってたからたぶん大丈夫とは思うけれど。
それでもどきどきしながらレッドからの回答を待つ。

「…ううん、食べた」
「食べた?」
「うん」

首を横に振って肯定するレッドに安堵する。
そしてもう一度念を押して聞いてみれば、レッドは素直にこくんと頷いた。

「よかった…。
あ、明日の朝はパンでいいよな?」

買ってきたのがあるし、なによりもう寝たい。いくら炊飯器が炊いてくれるとはいえ、米研ぐのもごめんだ。
それにこくんと頷いたレッドを見ると寝室へと足を進める。と、まだソファーのとこにいるレッドを振り返る。

「レッド、まだ寝ないのかよ?」
「……グリーンは、もう寝るの?」

膝を抱えてクッションに顔を埋めてレッドがそんなことを聞いてきたもんだから、もしかして逆に眠すぎてそこから動けないとか言うんじゃ…とか思ってみる。
でも眠たそうな顔ってわけじゃなさそうだ。なんかちょっとおどおどしてるっぽい?いや、おどおどっつーか、挙動不審?

「今日すげー疲れたんだよ、ジムバトルがものすごくて」
「……そうなんだ」

あくびをしつつそう言ってやると、おれの返答を聞くと少し戸惑ったみたいながっかりしたような表情でレッドがクッションをそこに置くとソファーから下りた。
なんだ、眠たすぎて動けないとかそういうわけじゃなかったんだな。とかのんきに思ってみるものの、今日のレッドの行動に首を傾げる。
いや、かわいいのはかわいいんだけど、なんつーか。

「レッド?」
「…寝る」

そしてレッドは俯いておれの横をすいっと通りすぎていく。
それにまた首を傾げつつ、リビングの電気を消すと寝室にはいる。
すると、レッドがベッドの前に突っ立っていて。

「どうした?寝ないのか?」
「……グリーンは今日、疲れてるんだよね」
「?
ああ、スケジュール、ハンパなかったからなー」

どうしたんだ、レッドのやつ。なんか寝ることにすげー躊躇してる?
いや、おれが疲れてるって言ってるからもしかして、おれに広々とベッドで寝て自分は床で寝るとか言い出すんじゃ…。
とか思っていたら、レッドがゆっくりとおれのほうを向いてきて。

「……グリーン、」
「ど、どうした?」
「…グリーンが疲れてて、眠たいってのはわかってるんだけど…」
「だけど?」

ぼそぼそっと話し出し、そしてなんか顔を赤くしてもじもじとしていて。
どうした、まじでなんかあったのか?
でもそのなにかがわからない。
そしてまったく見当もつかずにレッドの次の言葉を待っていると、

「今日、ずっと…なんていうか…その、」
「お、おう?」
「お、おかしいのかもしれないけど、その…グ、グリーンに触ってほしくて…」
「…え?」
「……っ………えっち、したい」

欲情に戸惑って潤んだ目でかわいく見つめてきて、おれの世界にトドメをさしてきた。









真夜中は純潔



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -