「…」

最近気付いたことがある。
レッドがああ見えて大ざっぱというか適当ということに。
幼なじみだからそれなりにレッドのことはわかってたつもりだけど、おれの家に泊まるようになって生活を一緒にしていくうちにレッドのいろんな顔を見れるようになって。
そしてそれとともに今まで知らなかった一面も知ることになった。

「レッド、寝るなら布団にいけよ」

風呂上がりでソファーに座って舟をこいでいるレッドにそう言うものの返事はない。
このままだとおれがいろいろやっている間にソファーで爆睡してしまって、そんなレッドをおれが怒鳴って起こしてレッドがふらふらとした足取りで布団にいく、というのがパターンだ。
まぁ髪を乾かしてるだけ今日は合格だな。
しかしなんつーか、保護者の気分だよな。しかも小さい子のいるお母さんの。

「レッドー」
「…」

目は半分あいてるようなあいてないような。
おれの忠告を無視して眠りの世界にまさに旅立とうとしているレッドに、もう一度声をかけてみてもやっぱり反応はない。

「ん?」

と、そこで気がついたことがひとつ。

「…キレイに掛け違えてんな…」

レッドが着ているパジャマは、見事なまでにひとつずつ掛け違えている。
最後にボタンがひとつ残って疑問に思わなかったんだろうか。
こういうところがまじで大ざっぱというか気にしないというか。

「レッドー、おーい」

おれはいつからこんな大きい子どもがいるお母さんになったんだ。って、せめてお父さんか。
いや、そうじゃなくて。
ともかくはすやすやと寝息を立て始めててしまったレッドにため息をつくと、お母さんもといお父さんの腕の見せ所とばかりにレッドの前にしゃがみこむとそのパジャマに手をかける。
親になったこともねーし、小さい子の世話を焼いたこともねーのにすんなり出来るってどういうことだ。才能?
おれってばカントー最強のジムリーダーさまに加えてこういう才能もあったなんてな。
うん、嬉しくはねーよ。なんか切ないだけだ。
つーか、こいつももっとしっかりしろっての。

「…これでよくシロガネ山でひとりでいられるよな…」

掛け違えたボタンを外して元に戻して、を繰り返していきながらぼそっとそう呟く。
こんなに手のかかるやつがあのシロガネ山にひとりでいるってことに今更ながらに恐怖を覚える。
今までよく生きてたよな。
しみじみそう思う自分がちょっと悲しい。幼なじみにこれってどうなの。
はあとため息をついて最後の掛け違えたボタンを外そうとしたら、

「…グリーン…?」

ぼんやりとした声が聞こえてきてそれに顔をあげてみれば、ぼーっとした顔のレッドと目が合った。
まだはっきりと覚醒はしてないようだ。

「よし、出来た。
ほら、寝るなら布団いけって」

最後のボタンを終了して立ちあがると、寝ぼけ眼のレッドの頭をかるくポンポンとたたいてそう言ってやる。
するとレッドはまだぼーっとしたままおれを見てくるだけで動こうとしない。
ただ、うん、とちいさく返事をしただけで。

「うん、じゃねーよ。
こんなとこで寝たら風邪引くだろ」
「……グリーン」
「なんだよ」
「……だっこ」

ぼそっとそう言われたかと思うと、レッドがおれに両手を伸ばしてくる。
それはまさに小さい子がお母さんにするように。
つーか、寝ぼけてるにもほどがあるだろ。普段こんなこと死んでもしねー性質なのに。

「ばか、自分で歩いていきなさい」
「…眠いもん」

レッドの言動に呆れて、思わずお母さんのような口調になってしまう。
それでもレッドは手をひっこめようとはせず、ふあああと大きな欠伸をしている。
それにもう一度ため息をつくと、仕方ねーな、とレッドに手を伸ばし返した。

「よっ、と。
うわ、軽…っ。お前おれと同じ男だよな?」
「んー…一応」

ひょい、とレッドを抱っこしてみると思いのほか軽くてびっくりしてしまう。
多少の重さを覚悟していたわけなんですが、コトネとかと変わらねーんじゃねーの?まぁコトネを抱っこしたこととかねーけど。
でもまぁ重いより軽いほうが運びやすくていいけどな。
そしてレッドは落ちないようにおれの首にぎゅうと抱きつく。

「つーか、レッドじゃなく女の子でお願いしたかったな」
「…文句言わない」
「いっそレッドが女の子だったらなー」
「…文句言わない」
「すみませんでした」

遠慮もなしに髪をぐいっと引っ張られてその痛さに思わず謝ってしまう。
やめて、禿げたらどうしてくれるんだ。
そしてレッドを抱っこしたまま寝室へと入ると、床に敷いてある布団へと進む。
最初の頃はリビングに布団を敷いていたけど、布団をわざわざリビングに持っていくのがめんどくさくなって一緒の部屋になっている。
というかこいつ朝起きるの遅いから、朝の忙しいときにリビングでのんきに寝られていると困るからってのも理由のひとつだけど。

「レッド、着いたぞ」

そして布団の上にしゃがみこむと、抱っこしているレッドを下ろそうとした。
すると抱きついている手にきゅっと力が込められたのがわかった。

「レッド?」
「…んー…グリーンあったかいからもうちょっとこのままがいい…」
「はあ?ひとを湯たんぽみたく言うなよ」

たぶんおれがあったかいんじゃなくて、レッドがつめたいんだと思うけどな。
低体温だもんな、こいつ。
そしてぎゅうぎゅうと抱きついてくるレッドにため息をつくと、レッドを抱っこしたままレッドの頭を何度か撫でるとおれは時間が過ぎ去るのを待った。









惚気るのも大概にしろ


「でさー、ってコトネ聞いてるか?」
「っ、聞いてますよ…!」

(なんでこれでこのふたりは付き合っていないの…?!)



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