「レッドー、朝だぞ、起きろー」

ベッドでまだすやすやと寝ているレッドにそう声をかけるものの、反応はいっさいない。
まぁ昨日ちょっと無理させたし、起こすのはなんか悪い気もするけども。
そんなことを思いつつ、ベッドに腰掛けると寝ているレッドを見下ろす。

「レッドさーん」
「…」
「…起きねーとちゅーするぞ」
「…………ん〜…」

するとレッドがもぞもぞっと動く。
だけど目はしっかり閉じられたままだ。
つーか、かわいいよなぁ。
レッドにかわいいって言ったら、かわいいは男に褒め言葉じゃないって怒られるけど。
閉じた目の睫毛は長いし、肌は透明なぐらいキレイだし、頬はほんのりピンクで、唇もさくらんぼみたく瑞々しいし。

「…」

やべぇ。レッドの顔をまじまじと見てたら、なんかムラッときた。
幼なじみだし見慣れてる顔だってのはわかってるけど、それでもレッドを見てたらどきどきするしムラッとするし、可愛いと思う。
別にレッドの顔が好きってわけじゃない。いや、好きだけども。
なんつーか、うん、レッドの寝顔が可愛すぎるから悪いんだよ。

「……ん〜……グリーン…」
「なんだ?」

頭のなかがごちゃごちゃしてきたもんだから、レッドがおれを呼んだのが寝言だということを忘れて普通に返事をしてしまう。
すると、

「…グリーン、だいすき…」
「!!」

ぽつり、と呟くようにレッドがそう告げてきた。
いや、寝てるから寝言なんだけど。
そしてむにゃむにゃと口をもごもごさせると、レッドはまたすやすやと寝息を立て始めた。

「…〜〜〜っ!!」

おれはというと、その現場をばっちり目の前で見てしまったため、ただ悶絶するほかない。

(つーか、可愛すぎるだろ!!なに、おれの夢でも見てんのか?!でもって「だいすき」って……、現実で言われたことねーな…)

嬉しさと悲しさが入り混じる複雑な心境になるものの、それでもさっきの効果はおれには抜群すぎるほどで。
これがバトルだったら、おれ一撃必殺でやられてるわ。むしろ本望だ。
そして過呼吸になりそうなほど興奮すると、一旦落ち着くべく深呼吸をする。

「…くっそ、朝じゃなかったら襲ってんのに」

レッドが聞いたら、ばかと言ってきそうな台詞を呟いてみる。
でも、可愛い。かわいい。可愛すぎる。
にやける口元を押さえるものの、緩んでしまったのが元に戻らない。
このままにやにやしてトキワジムに行ったら、絶対ジムトレーナーたちから白い目で見られる。まあある意味慣れてますが。互いに。

「おれも好きだよ」

にやける顔で、すやすや寝ているレッドにそう返事をしてやると、レッドの閉じられている瞼がぴくっと動いた。
かと思うと、ゆっくりとその目が明いていく。

「…」

目は明いたけど、はっきり覚醒は出来ていないようで、レッドはぼーっとしている。

「おはよう」

さっきのにやにや続きで、にやにやしながらそう言ってやると、ぼーっとした顔のままでレッドがおれを見つけ、そして上半身を起こしてきておれに手を伸ばしてきた。

「へ?」

それから胸倉を掴まれたかと思うと。
ちゅ、とキスをされて。
それにおれの世界が止まる。
するとレッドはそんなおれを見て、

「起きたからちゅーしてやった」

えへへ、とちいさい子がお手伝いをして褒められたときのようなそんな得意気なかんじで笑って、そんなことを言ってきて。

「!」

だけど次の瞬間には、上半身がぐらりと傾いて、おれの胸元に頭突きをしてきた。

「っ、レ、レッドさん?」

短時間で起きた事件が多すぎておれが慌てていると、当の本人からは、ぐーと寝息が聞こえてきて。

「…」

え?さっきの起きたわけじゃなくて、ただ寝ぼけてただけってことか?
本人は起きたって言ってたけど、これは起きてないしな…。
規則正しい寝息を立て始めたレッドを見て、肩の力が一気に抜けていく。
つーか、どっちにしろ。

「…可愛すぎる」

寝言でおれのことだいすきって言ってみたり、寝ぼけておれにキスしてきたり。
可愛い。可愛すぎる。
つーか、どんだけおれのこと好きなの。夢見るぐらい?キスしてくるぐらい?

「後で聞いても答えてくれねーだろうなぁ」

いま起こして聞いてやりたい衝動に駆られるものの、また寝ぼけて違うことになっちゃいそうだし。逆に、無理やり起こされて不機嫌になるかもしれねーし。
つーか、なんで今日はオフじゃないんだ、と全力で悔しがってみるものの、今日一日このことで乗り切れそうだ。
つーか、にやにやが戻らないんですが。

(…帰ってきたら、どうしてくれよう)

そんなことを思いつつ、おれはにやけた笑顔で、すやすやと寝ているレッドの髪にキスを落とした。









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