「グリーンさん、最っ低です」

昼下がりの午後のカフェでコトネからぎろっと睨まれた挙句に蔑んだ声色でそう言われ、さすがにおれも反省…って悪いこと何もしてねーのに!

「だからあれはだなー…」
「レッドさんが聞いたら『ぜったいれいど』ですよ」
「…」

悪いことはしてない(と思う)けど、レッドの『ぜったいれいど』は例えるなら「別れる」と言われるよりもダメージがでかい。
それをコトネに言われ、なんとなく冷や汗が流れてきてコーヒーを飲むものの、コーヒーが熱くてそれに悶える。

「って、だからあれは違うっつってんだろ!」

舌が火傷したようにヒリヒリするのに半泣きになりそうになる。
なんだよ、今日踏んだり蹴ったりじゃねーか。
そして改めてそうコトネに言ってやると、コトネの冷たい目と合った。

「ちょーセクシーな大人のお姉さんを見て鼻血を出したことの何が違うとでも?」
「うっ…」

そう。さっきセクシーな大人のお姉さんに声をかけられて、振り向いたときに鼻血が出たんです。
その大人のお姉さんは大きな胸の谷間がよく見える服に太もも露わなミニのタイトスカートをはいていて、なんつーか、うん。
そりゃ確かに普通の、いや、純情すぎる思春期の少年だったら見て鼻血のひとつやふたつ出すかもしれねーけど。
こう言ったらあれだけど、一応女の子は慣れてるっつーか、うん。

「だけど違うんだって」
「えっ、見てたのは胸じゃなくお尻ってことですか?!」
「ちげーよ!」

やだぁ!と完全にどん引きなうえにおれを変態扱いなコトネにイラッとくる。
まぁ確かにそう思えるような行動したおれも悪いんだろうけどさ。出たもんは仕方ねーだろ。
つーか、あのセクシーな大人のお姉さんはなぜにあんなセクシーな格好でこんな街ん中をうろうろしてたんだ…。
結局、鼻血を出したおれを見てくすっと笑うと、「ごめんね」と言って去っていったし。
はっ、もしかしてドッキリだったとか?!あ、いやでもドッキリだったら仕掛けたやつが「ドッキリでした〜」って来るよな…。

「…さん、グリーンさん!」
「おわっ、な、なんだよ」
「レッドさん来ちゃいましたけど。
あんなことあったくせに呼んだんですか?信じられない」
「はあ?!」

さらっとそう言われ、コトネが指差すほうを見ればレッドが立っていて。
ひとがドッキリについて考えてた数秒でレッドがやってくるとか、まじでドッキリなんじゃねーの?
そしてコトネに手招きされて、おれたちがいるテーブルへとレッドがやって来た。

「グリーン、なんの用?」
「へ?」

そしておれの顔を見るなりそう言ってきたレッドに、今日レッドとここで待ち合わせしてたんだと思い出した。
うん、ドッキリじゃねーや、ガチだガチ。
でも待てよ、何の用で呼んだんだっけ?
下りてこいって言ってもなかなか下りてこないレッドがこうもあっさり下りてきたってことはそれなりの用があったようなないような…。

「レッドさん、聞いてくださいよ!
グリーンさんったらさっきセクシーな大人のお姉さん見て鼻血出したんですよ!」
「?!」

何の用があったのか思い出している隙に、コトネがよりにもよってレッドにそう報告なんざしていて、それに体がフリーズする。
お、女って怖えええええ…!!

「…グリーンが?」
「最っ低ですよねー!」

きょとんとした顔のレッドと、眉間にシワを寄せたコトネが対照的すぎる。
コトネは女子だからそういうのに厳しいのかもしれねーけど、ほら、レッドだって同じ男だしいまいちピンときてねーじゃん。
って、でもまじであれは大人のお姉さんを見て鼻血出したわけじゃねーんだってば!

「詳しくはグリーンさんに聞いてくださいね!
なんだったらシメるとき手伝いますから!」
「…う、うん?」

レッドの両手を掴んで力強くそう言うコトネに、レッドが少し押されるように頷く。
するとコトネは用があるから、と言って不機嫌なままさっさと帰ってしまった。
コトネはレッドのことだいすきだから、レッドになにかあるとおれにすげー厳しいんだよな…。
つーか、爆弾落とすだけ落として帰ってくって、それってありかよ…?

「…」
「…」

そして案の定というか、おれとレッドの間には微妙な空気が流れる。
まぁその空気がわかってんのはおれだけみたいだけど。
レッドはというとのんきにメニューを見ると、何か注文してるし。いや、いいけど。

「…で?タイプだったの?」
「は?」
「セクシーな大人のお姉さん」
「っ、ばか、んなわけねーだろ!」

まさかレッドが話題を戻してくるとは思ってもいなかったから、おもわず飲んでいたコーヒーを噴出しそうになった。
え、やっぱり気になってんのか?

「だ、大体な、鼻血が出たのはその大人のお姉さんは関係ねーからな!」
「…そうなの?」
「なんつーか、その…」

意気込んで否定したはいいものの、真実を言うのはちょっと気が引けるというか。
本人目の前にして言っていいようなことじゃねーし。
だけどレッドは続きを待っているような顔をしていて。
まぁ確かに彼氏がほかの女見て鼻血出したとか有り得ないし、理由があるなら聞きたいだろうし。たぶん。
…でもまじでちょっと…。

「まさかチョコの食べすぎとか?」
「それで大人のお姉さんの前で鼻血出たらタイミングよすぎだろ」

はっとしたようにレッドが言ってくるものの、なぜにチョコ。
つーか、鼻血が出るほど食べるってどうなの。
でもレッドの思考回路じゃそれが精一杯なんだろう。天然だし鈍いし。

「じゃあなに?」
「…言ってもいいけど引くなよ?」
「?」

そしてレッドが注文したヨーグルトパフェとかいうのがやってきて、レッドが首を傾げつつ、パフェをスプーンでつつく。
おれだってわかってんだよ。
レッドがパフェ食べてるときに言う台詞じゃねーってことぐらい。
でも聞きたいなら言うしかねーだろ?

「……ヤってるときのレッドを思い出したら、鼻血出たんだよ」

そしておれの顔面にヨーグルトパフェが飛んできたのは言うまでもない。








だって思春期真っ盛りですから



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