「ん?」

データ修正が終わって作業用のメガネをしたまま、リビングに行ってみれば、ソファーに座っているレッドが目に入ってきて。
いや、ソファーに座って図鑑見たり雑誌読んだりしてるのはいつものことなんだけど。

「…なにしてんの」

図鑑片手にレッドは何度も目をぱちぱちと瞬きさせていて。
…もしかして見えづらいとか?
でもレッドの視力はどこの狩猟民族かってぐらいいいのに、見えづらいってことはなさそうだけどな。

「…グリーン」

そしておれに気付いておれを見てきたレッドにメガネを外して、それをレッドに渡してみる。
そんなに度は入ってねーけど、一応。つーか、視力悪くなったかどうか知らねーけど。

「…なに?」
「かけてみろよ」
「?」

でもこれでメガネかけて見えづらいのが見やすくなったら視力悪いってことだし。
そして首を傾げつつも、レッドがメガネをかける。

「どうだ?」
「…どうって…」

メガネをかけたレッドが戸惑ったような顔でおれを見てくる。
そんなレッドは今メガネ装着中で。

「…」
「…グリーン?」

そしておれはメガネ装着中なレッドから目が離せなくなっている。
コンタクトしてなくてもレッドの顔がよく見えるのは愛ゆえですか。
つーか、可愛い!!メガネかけただけでかわいさアップしすぎだろ!!

「?」

いつぞやコトネがメガネ萌えとか言ってたのわかるような気がしてきた。
うわ、可愛い。すげー可愛い。
目の前のメガネなレッドにひとりで盛り上がっていると(心のなかでな)、そんなおれを見てレッドがきゅっと眉を寄せた。
不審ものを見るかのようなその目に多少どきっとする。

「な、なんだよ」

邪まな気持ちで見ていたのに気付かれたか?
いや、邪まっつーか、ただ可愛いと思ってただけなんですが。
するとレッドが眉を寄せて怪訝そうな表情でおれを見たまま、

「…グリーンがふたり見える…」
「…はい?」

ぼそっとそう言うとメガネを外して、また目をぱちぱちと瞬きさせる。
ふたり見える?え、なにそれ。
あ、もしかしてメガネの度が合わなかったってことか?
だけどふたりっつーか、そんなふうに見えるってことは…。

「見えづらいわけじゃねーの?」

視力のいいやつが度の入ったメガネかけるとクラッとするって言うし、ふたりというか二重に見えたりするとか言うし。
まぁ極端な話だけど。
だからそう聞いてみれば、レッドの何のこと?という表情で、

「しないほうがグリーンのことよく見えると思う」

そう言ってきた。
なんだ、見えづらくて瞬きしてたわけじゃねーのか。

「…グリーンはメガネしたほうがよく見えるんだ?」
「え?いや、今コンタクトしてねーから。
作業してたし」

そしてレッドからメガネを返してもらうと、それを装着する。
コンタクトしてなくてもメガネしてなくてもそれなりには見えるんだけど、したほうがやっぱはっきりと見えるしな。
あ、さっきのメガネ姿のレッドは別として。つーか、コンタクトしてるときにもう一回見たい。
するとまだ目をぱちぱちとさせているレッドが目に入ってきて。

「つーか、何でそんなに瞬きしてんの」
「…ゴミ入って痛い」
「…ゴミかよ…」

最初から聞けば早かったような。
でもレッドのメガネ姿を見れたし、まぁいいか。

「とってやろうか?どっち?」
「…右」

親切心でそう言うと、右と言ってきたレッドの顎を掴んで固定させるとレッドの右目をじっと見る。
そして瞼と下瞼をかるく引っ張ってみる。
すると下瞼を引っ張って現れた眼球の下のとこに睫毛がついてて。

「あ、あったあった。動くなよ」
「…」

レッドにそう宣言すると、そーっと指の腹でその睫毛をとる。
その間、レッドはというと固まったように動かない。いや、動かないでいてくれたほうがいいけども。
まぁ自分の目に他人の指が迫ってきたらそりゃ動くに動けないよな。

「…よし、とれた!」

そして無事に任務を全うすると、確認のためなのか目をぱちぱちと瞬きさせているレッドを見る。
するとそんなレッドと目が合うと、無表情なレッドからじっと見つめられた。

「なんだよ?」

ちゃんとゴミっつーか、目に入ってた睫毛はとってやったんだし、文句言われる筋合いはねーぞ?
とか思っていると。

「…メガネかけてるグリーン、かっこいいかも」

思わずそのメガネが落ちそうになるような台詞をぼそっと述べてくれた。










その魔法は5割増し


え、レッドにもメガネ萌えっつーか、メガネ効果通じんの?まじで?
ということで、そのあとしばらくコンタクトじゃなくてメガネで過ごしました。



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「見えない臓器の名前は」
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