「っく、ひっく」
「…」
「っ…っく」
「…あー!集中できねー!」

ただいまレッドとゲームなんざしているわけですが、隣りのレッドから聞こえてくるそれが気になってしまってゲームに集中出来ず、おれはコントローラーを床に置いた。

「あ、勝った。っひっく」
「…」

そんなおれを無視してゲームをしていたレッドが勝つものの(ちなみにマリ○カート)、今はそんなことどうでもいい。

「しゃっくりどうにかしろよ、気になるだろ」
「…気にしなきゃいいのに。っく」
「気になるわ!」

隣りでひっくひっく言われるとなんかこっちまでつられてしゃっくりが出そうになる。
そしてしゃっくりを止めるわけでもなく、ひっくひっく言いながらレッドがゲームを続けようとしていたので、レッドの手からコントローラーを取り上げた。

「…何?」
「だーかーらーっ、ちょい休憩!」

怪訝そうな顔でおれを見てきたレッドにそう言うと、キッチンに行ってコップに水を注ぐとそれをレッドに渡した。

「ほら、水」
「…何で水?っひっく」
「しゃっくり止める方法のひとつだろ」

コップを受け取ったものの首を傾げるレッドに少し呆れてそう言うと、レッドはこくん、と水を飲んだ。

「っ…ひっく」
「…もう少し飲んでみようか」
「、ん」

全く効果がなかったのでもう一度飲むように促してみると、レッドはうなずいて残りの分を一気に飲み干した。
これなら止まるだろ、そう思っていたものの。

「…っく」
「…」
「…残念ながら、っく、止まりません。
っ、ひっく」

空のコップをおれに渡してきながら、レッドが淡々と事務的にそう言ってくる。
そしてコップを受け取ったおれがもう一度水を注ぎに行こうとすると、

「…っく、…他に方法ないの?」

レッドがそう聞いてきた。
まぁ確かに止まるまで水を飲み続けるのも如何なもんかと思うので、コップをシンクに置くとレッドのところへと戻った。

「じゃあ、息止めてみるか」
「…1分ぐらい?」
「えっ、そんなに息止められねーだろ?
レッド、出来んの?」

次の方法として息を止めてみることを提案してみるとレッドがそう聞いてきて、それに少しだけ驚いてみる。
1分って結構長いぞ?いや、こいつなら出来る、のか?

「ううん、無理」
「…出来ねーのに何で聞いてきたんだよ。
10秒ぐらいでいいんじゃね?」
「10秒…」

即座に否定してきたレッドに呆れつつも、たぶんそんなに長いこと止めなくてもいいだろうと思って10秒と言ってみると、レッドは息を吸い込むと口を閉じた。
そして指を折りながら数をかぞえている。
つーか、かぞえるのエライゆっくりだな。

「…っ、10秒経った」
「お、今度こそ止まったか」

ぷはっと口を開いてそう言ってきたレッドがしゃっくりをしてなかったのでやっと止まったか、と思ったものの、

「…っ、ひっく」
「…」
「…20秒のがよかったんじゃない?…っく」
「…たぶんそういう問題じゃねーと思う」

10秒でだめだったんだから20秒でもだめだろ、たぶん。
それとあと10秒増えたら苦しいだけだと思うぞ、息止めるの。

「うーん、他には…驚かすとか?」
「驚かす?」
「…悪りぃ、一番難易度高かった」
「?」

ベタなものを言ってみるものの、今から驚かします、とかだったら絶対に驚かない気がする。
忘れた頃に後ろからこっそり大声出して驚かすとかならまだしも、きょとんとしたレッドを目の前にして驚かすってある意味難易度高いだろ。うん、これ後回しにしよう。

「っく、…しないの?」
「面と向かって驚かすっておかしいだろ。
これ最終手段な」
「…ふーん」
「他は…うーん…」

やっぱり水を飲んでみるのがいいのかもしれない。
いろいろ考えて最初に戻るってのもどうかと思うが、とりあえずはまた水飲んでみてダメだったらしばらく放置で驚かそう。

「…っく、…ひっく…」

そうおれが考えている間も、レッドのしゃっくりは続く。
てか、自然に止まったりしないんだろうか?

「…レッド」
「なに、…っ?
ん、んんッ?!」

ひっくひっく、としゃっくりしながら再びゲームをしようとコントローラーに手を伸ばしたレッドの腕を掴んで引き寄せると、それに不思議そうな顔をしたレッドの顎を掴んで固定させると、そのままキスをしてみた。
それも唇に触れるだけのキスじゃなくて、レッドの薄い唇を抉じ開けて舌を捩じ込ませて。

「っ、ん、…ふ、ぁ…ッ」

鼻に抜けるかのようなあまったるい声がレッドの口から漏れていく。
逃げるレッドの舌を追いかけて捕まえ、絡めて吸い上げてやるとレッドの体がびくびくっとちいさく震えた。

「ぁ…は、あ…っ」

舌を引きずり出すようにして引っ張ってやってから唇を離すと、レッドの濡れた唇をぺろりと舐める。

「んんっ」
「…どう?」
「…っ、どうってなにが…っ」

いきなりキスをされてどうしていいかわからないという顔を真っ赤にしたレッドがおれの体を押し返すが、おれはその手を拘束するとレッドをそのまま床へと押し倒す。
そして、さっきまでの雰囲気と全然世界が変わっていることに気付いたらしいレッドはそれに慌てておれを見上げてきた。

「グ、グリーン?」
「だめならもう一回する」
「…だ、だめ?」
「…」
「…グリーン?」

意味がわからない、と頭にたくさんのハテナを飛ばしながら困惑した表情でレッドがおれを見てくる。
それをじっと見つめ返していると、根気負けしたのか、レッドがおれから視線をすっと逸らした。

「よし、大丈夫そうだな!」
「…え?」

そんなレッドに声を明るくして言ってやると、レッドがまだ困惑した表情でおれを見てくるから、とりあえずは簡単に答えてみた。
だって今までの目的はこれだろ。

「しゃっくり、止まっただろ?」
「………え?」
「キスでしゃっくりが止まるとか聞いたことはねーし根拠はねーけど、やってみた」
「…」











理不尽だけど世界は廻る

「…グリーン、いい加減退いて」
「なぁ、レッド」

キスでしゃっくりを止めてしまったおれを呆れた顔で見上げているレッドに、そういえば、と思って聞いてみることにした。

「もしかして、期待した?」
「…期待?」
「えっちなことされるんじゃないかって」
「っ?!」

にこ、と笑って言ってやると、意味を理解したレッドがだんだんと頬を赤く染めた。
そんなレッドを見てもう一度笑みを浮かべると、首を横に振って否定の言葉を口にしようとしているレッドの唇に噛み付くようにキスしてやった。

とりあえずは、しゃっくりが止まってよかったです。



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