「レッド、遅くなった」

トキワジムの自分の管理室から出ると、ジムのロビーでおれを待っているであろう恋人のレッドにそう声をかける。
と、そこにはレッドだけではなくコトネもいて。

「コトネ?なにしてんだ?」
「あっ、グリーンさん!
これ、頼まれてたやつです」
「ああ、サンキュ」

レッドとなにやら楽しそうに話していたコトネから紙袋を受け取る。なかに入っているのは、いかりまんじゅうだ。
母さんと姉さんから買ってきて、と頼まれたものの買いに行く暇なんてなくてコトネに買ってきてもらったわけだ。ちなみに前払い。

「というか、聞いてくださいよ!
レッドさん、こちょこちょ効かないんです!」
「…なにしてんだ、お前ら…」

楽しそうにしてはいたけど、まじでなにしてんだお前たち。
コトネは、すごくないですか?!となぜか目をキラキラさせながらおれにそう報告してくる。けど、それ昔からそうだからな、そいつ。

「ちなみにグリーンさんは、」
「は?ちょっ、待てまて!」
「…あ、けっこう弱いんですね」

そしてコトネからいきなり脇腹をくすぐられ、それに身を捩ってみるとコトネがちいさくため息をついた。
遠慮なしにひとの脇腹をくすぐってきといて、引いたような目するってなんなの。

「あ、そういえばこういうのって、好きでもないやつからされたらくすぐったくないって聞いたけど、」

いつだったかジムトレーナーの女の子たちが話してたことを思い出して言ってみると、コトネの顔がさーっと青ざめていく。

「わ、私にはレッドさんがいます!」
「うん、きっと噂っつーか気のせいだ、それ」

涙目でレッドにくっつくコトネに、大きなため息をついてそう返す。
おれから好かれてたらそんなに嫌なのか、お前は。まぁおれも好意だとしても後輩としてだが。
つーか、レッドはお前にくすぐられても無反応だったんだろ。

「つーか、帰るぞ、レッド」

呆れつつ、へぇそうなんだみたいな顔をしているレッドにそう言う。
お前、けっこう厳しいな…。

「あれ?今日、お泊りですか?」
「そ。
で、明日これ持ってマサラに帰るからこいつも連れて帰るんだよ。おばさん心配してたしな」

コトネに買ってきてもらったまんじゅうを掲げてそう言うと、そこでコトネとはわかれてレッドとふたりでおれの家へと帰った。





「レッド、寝るならベッド行けよ」
「………うん」

風呂上りでソファーでウトウトしているレッドにそう声をかける。
つけられているテレビは完全に子守唄だ。うるさいバラエティだけど。
と、そこでさっきのことを思い出す。
そういやこいつ昔からくすぐられるのとかどうもなかったよなぁ。

「…でも一応、えいっ」
「?!」

結果はわかっていたものの、なんとなくしてみたかったというか。
レッドの隣に腰かけてレッドの脇腹あたりをくすぐる。
と。

「っ、ちょっ、グリーン、やめっ」
「…」

あれ?

「〜〜ッ、グリーンっ」

あれ?

「〜〜…っ」

おれの手から逃げるようにしてレッドが身を捩る。
これってもしかしなくても、くすぐったい、のか?

「…なに、コトネのときは我慢してたのかよ?」
「……コトネのときはくすぐったくなかっただけ…」

コトネは、レッドはくすぐっても無反応だって言ってた。
それなのにこれはおかしいだろ。明らかにおれと同レベルな弱さだぞ?

「もっかい」
「…え?」

そしてレッドに圧し掛かるようにしてレッドをソファーに押し倒すと、そのうえに覆いかぶさって再度脇腹をくすぐってみる。

「っ、ちょっ、しないでって!
やっ、…〜〜〜ッ、グリーン!」
「…」

うん、これは弱い。
おれが見下ろすレッドは、悔しいのか何なのか、ぐぐぐと唇をかんで涙目でおれを見上げてきていて。
そしてくすぐっていたおれの手を掴んで止めさせるという行動にまで出ている。
まぁここで蹴り上げられなかったのは不幸中の幸いなんですけど。

「…レッド、こういうの弱かったっけ?」
「し、知らないよっ」

あれ?と首を傾げて聞くおれに、レッドはむっとして顔をぷいっと横へそらす。
その子どもっぽい仕草がきゅんときてしまう。

「………それとも、おれのこと好き?」
「っ?!
な…っ、何し…ッ」

レッドに顔をずいっと近づけて耳元で囁くようにそう言うと、レッドに押さえられている手をもぞっと動かせるだけ動かして脇腹をくすぐる、というよりも今度は手を這わせてみる。
するとそれにレッドが体をびくんと震わせた。

「やっぱ当たってたんだな、好きなやつにされるとくすぐったいって」
「ちょ…っ、グリーンっ、なんか触り方、や…ッ」

耳元で囁くのは止めずに続け、耳朶、首筋へとかるくキスなんかしてみる。
そして手はレッドの抵抗のおかげですんなりとは動かないけれど、逆にそのおかげでギリギリのところを触っていて、それにレッドがぞくぞくっと体を粟立たせて震わせる。

「んー?」
「っ、ひ、ぅッ」

鎖骨あたりを強く吸い上げて赤い痕を残すと、レッドがびくっと大げさなほどに体を震わせた。
その拍子におれの手を押さえつけていた力が抜け、チャンスと思ってその隙にレッドの両手首をまとめて頭のうえに掴み上げる。

「い、や…っ」

空いたほうの手でレッドの服を胸あたりまで捲り上げて、露わになった肌を滑るように触れていく。
おれが触るたびにレッドは体をちいさく震わせていて、顔は横にそらしたままで目をぎゅっと瞑っている。
こういうとき抵抗しないっていうか、抵抗しても無駄だって思ってんのかな。まあいいけど。
そして手をするするとうえのほうへと移動させると、こつん、と指にぶつかった乳首をくりっと捏ねるように触ってみた。

「ぁ…っ、グリーンっ、もう、やめ…ッ」
「んー?おれはくすぐってるだけだぜ?
なに、感じちゃった?」
「〜〜〜…ッ」

くすくすと笑いながらそう言うと、レッドは真っ赤な顔でおれをキッと睨んできた。
ほんと毎回毎回なんつー煽り方すんだ、こいつは。

「好きでもないやつからくすぐられても、くすぐったくないんだろ?」
「っ、んんッ!それ、やめ…ッ」

人差し指の腹で乳首を擦りあげてやれば、それは主張するようにぷっくりと尖ってくる。
そしてレッドの抵抗はだんだんと弱まっていく。まぁ最初から抵抗らしい抵抗はないけど。
それでも、と思ってレッドの服を脱がせるようにして手首あたりで捩じってそれで拘束してみる。
おかげで、空いた両手でレッドの肌をくすぐるように触っていく。

「…っ…ふ…ッ、
〜〜〜っ」

レッドは目と唇をきゅっと締めてそれに耐えている。
その表情といったら、加虐心がぞわぞわと湧いてくるようなたまらないもので。
ああ、でもそういう趣味はねーんだけど。
自分でそう自分にブレーキをかけておくと、耳まで真っ赤なレッドを見下ろすと、

「なぁ、レッド、おれのこと好きか?」

舌舐めずりしながらそう聞いてみる。
手はレッドの脇腹やら腹部やらを撫で上げながら。

「…っ……く、くすぐったい、」
「好き?」

レッドは好きとは言わずに、好きなやつにされたらくすぐったい、というのを持ち出してそう言ってくるがせっかくだからレッドから好きという台詞が聞きたい。

「〜〜っ、んっ、ん、」
「くすぐったいんだろ?
おれのこと好きか?」
「…っ」
「口で言えって」

誘導するように聞けば、レッドは顔を赤くしてコクコクと頷いた。
だから言葉にするようさらに促す。
そして口元に笑みを浮かべると、レッドの唇を指でなぞり、脇腹を撫で上げていた手を腰あたりに滑らせた。
すると。

「…っ、…好き、だからっ、もう…いじわる、しないで…っ」

顔を真っ赤にして目には涙を滲ませて、プルプルとちいさく震えながらレッドがおれを見上げてきて。
それにプツンと何かが切れる音がすると、レッドの肌に手を這わせると噛みつくみたいなキスをした。









痺れるみたいなタッチアウト



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