面白い映画を借りてきた、とグリーンがそう言ってそれを見始めたのは30分ほど前のことで。

「…」

そのグリーンはソファーに座って、隣にいる僕の肩にもたれかかって爆睡している。
そう言えば、映画が始まって5分ぐらいですでに寝てた気もする。
雰囲気出そうぜ、とか言って電気消したのが拍車をかけたらしい。
ちなみに映画は、サスペンス要素のあるアクション映画だ。

(…けっこう音量というか爆発音とかすごいのによく寝てるなぁ…)

ただでさえ忙しいのに、なんか学会が近々あるとかで資料作りとかしてるって言ってたし。
だから、なるべくグリーンに負担かけないように下山しないでいるのに、今日はわざわざシロガネ山にグリーンがやってきて、半強制的に下山させられた。

「…ひとの気も知らないで…」

ため息まじりにちいさく愚痴が零れる。
というか、グリーンが僕の肩にもたれかかってるから動くに動けないからリモコンがとれなくて音量下げることもできないし、停止ボタンを押すこともできない。
あ、今更だけど、これぐらい爆睡するならもうベッドにいったほうがいいと思う。

「…グリーン」

なので、グリーンを起こすべく声をかける。
でも、反応はなにもない。
ほんとに爆睡してる…。

「…グリーン、こんなとこで寝たら風邪引くよ」

僕が言うのもなんだけど、な台詞を言ってみると少しは効果があったのかグリーンがううーんと唸る。

「寝るならちゃんとベッドで寝なよ」
「……んー…」

いつもは僕がそっち側だから、グリーンに迷惑かけてたんだなぁとしみじみ思う。
そしてグリーンをかるく揺さぶってそう言ってみると、グリーンがもぞもぞと動いた。

「…」
「…起きた?」

すると目を覚ましたっぽいグリーンが僕の肩から離れると、ぼーっとした顔でテレビを見ている。
映画気になるのかな?でも、だいぶ進んだから話わからないだろうなぁ。見たことないって言ってたし。
やっぱりどうにかしてリモコン取って、停止ボタン押せばよかった。

「…グリーン?」

そうしたらグリーンがテレビから視線を僕へと移してきて、じっと見つめられる。
それに、なんだろうと首を傾げると、

「!」

目の前が急に真っ暗になった。
ただでさえ電気を消していて暗いから、まさか停電?とかのんきに思っていると、唇に何かが触れた。

「…」

それがグリーンのだと気付いたときにはグリーンは離れていて。
そして、突然のことに僕は硬直してしまっていて、瞬きもない。

「!」

するとグリーンの手が僕の頬に触れてきて、指で頬を擦るように撫でてくる。
それに体がびくっと震え、瞬きも戻る。

「っ、んっ」

グリーンに触られたところが、ぞわぞわと不思議な感覚を生む。

「っ、グ、グリーンっ」

慌てるようにグリーンの体を押しのけ、一歩後退してグリーンを見ると、

「…あっ」

我に返ったのかグリーンが驚いたような顔になったけど、すぐにその顔は決まりが悪そうな面目なさそうな顔になった。
それに僕もつられて、なんだか雰囲気がぎくしゃくする。

「あ、いや、今のは、その」

グリーンがしどろもどろになりながら、何か言い訳を探そうと視線も泳がせながら言葉を濁す。
僕は僕で、ぞわっとしたあの感触が今になってどきどきと心臓の音を速くさせていて混乱している。

「……わりぃ、寝ぼけてた」
「…っ、ベッドで寝てください…」

頬をカリカリと照れくさそうに掻くグリーンに、なぜか敬語でそう言うと、僕は後ろにあったクッションを捕まえてぎゅっと抱きしめる。
グリーンはそんな僕を見て、そうだな、とちいさく呟くと、ソファーから立ち上がった。

「…えっと、」
「……映画終わったら寝る」
「…わ、わかった」

ちらり、と僕を見てきたグリーンに、クッションに顔を埋めながらそう宣言すると、グリーンはぎこちないかんじでそう言って部屋へと入った。
パタン、とドアを閉める音がして、それにほっとしてクッションから顔を離すと、

「?!」

さっき閉まったはずのドアがガチャっと勢いよく開いて、安堵していた僕はびくっと大げさなほどに体を震わせた。
というか、びっくりした。本当に。

「???!?」

びっくりしすぎて、さっきどきどきしていた心臓がさらに速くリズムを刻み始めて、僕の心臓は壊れてしまうんじゃないだろうか。
普段、びっくりすることとかそうないから尚更。
それぐらいうるさくなった鼓動に落ち着かない僕は、ドアを開けてこっちにずんずんと歩いてくるグリーンを目をぱちぱちと瞬きさせて見つめる。

「…な、なに?」

そして僕の目の前で止まったグリーンを、クッションをぎゅうっと抱きしめて見上げる。
するとグリーンは、

「思ったんだけど、恋人なんだからキスしてもいいよな?」
「え?」

そんなことを言い出して、僕に顔を近づけてきたから、僕はクッションをグリーンの顔に押し付けてやった。

(恋人って言っても、今日なったばっかりです!)













レベルアップに経験値が足りません


今日シロガネ山にやって来たグリーンに告白されて、いいよって返事したら半強制的に下山させられたわけです。



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