「よぅ、レッド」

いきなりトキワジムにやって来たレッドに軽く挨拶すると、おれはジムトレーナーたちのほうを向いた。
ちなみにいま、ミーティング中だ。
ジムトレーナーたちはレッドのいきなりの登場に驚愕しているようで、ミーティングを続けようとしているおれにざわついている。

「…」

するとレッドはズカズカとおれのところまでやって来ると、いつになく不機嫌というか怒っていて。
それはジムトレーナーたちにもわかる雰囲気(無表情だけど)だったから、ジムトレーナーたちがさらにざわつく。
そしてレッドがおれの腕を掴んだ。

「…グリーン、話がある」
「いま、ミーティング中なんだよ」

声色はいつもと変わらないというかどすの利いた声とかでもないし、レッドが怒ってる理由なんてまったく思い浮かばないし、いまは仕事中だとレッドの話を断ろうとすると、

「グ、グリーンさん!あとはおれたちでしますから!」
「報告はグリーンさんが戻ってきたらします!」
「な、なんかレッドさん用事あるみたいだし…ど、どうぞ!」

なぜか緊張しているジムトレーナーたちから遠慮するなとばかりに送り出された。半分追い出されるようなかんじで。
あれ?いつもだとサボるなって怒られるのに?

「…」
「…で?話ってなんだよ?」

腑に落ちないものの仕方なく、ミーティング室からおれ専用の個室に移動するとレッドに話を聞いてみることにした。
振り向いた先のレッドはまだ怒ってる雰囲気もろだしで、レッドがこんなになるの珍しいなとかのんきに思ってみる。
だってまったく見当がつかない。

「……っ……言ったのに、」
「は?」

するとぼそっと喋るレッドにキッと睨まれた。
見てみるとレッドは怒ってるけど、顔が真っ赤だ。一体何なんだ?

「……あ、痕つけるなって…言ったのに…っ」
「へ?」
「…〜〜っ…こ、ここっ」
「!」

真っ赤な顔で目を潤ませてそう言ってくるレッドが指差したのは自分の首で。
痕ってなんだろう、と思って見たらレッドの首にはちいさな絆創膏が貼られていて。
それになんの痕なのか、ああなるほどと納得なんかしてみた。キスマークか。

「…絆創膏、貼ったんだ?」

逆に目立ちそうな気がするのはおれだけか?
そしてレッドの話を聞いておれがそう聞き返すと、レッドは口をぐぐぐと歪めた。
不服そうな顔してるなぁ。質問、間違えたか?

「…〜〜っ…グリーンが、あ、痕つけるから、だろ…っ」

おれに言われて状況を思い出したのか、レッドがますます顔を赤くして怒る。
あ、かわいい。
不謹慎だけど、真っ赤な顔で目を潤ませて怒ってるレッドにキュンときてしまった。
いや、だって滅多に見れない表情だし、レッドの泣き顔とか嫌がる顔ってツボなんだよなぁ。あ、発言が変態くさい。

「いいだろ、虫除けになって」
「…虫?
…虫タイプ、会うけど…」
「そっちの虫じゃねーよ」

え?と言いたそうな顔でレッドが天然めいた台詞を言ってきて、それに少しばかり呆れる。
怒っているときでも天然は発揮されるんだな…。

「で?痕つけるなってわざわざ言いに来たのか?」

ため息まじりに聞いてみれば、レッドはコクコクと勢いよく頷く。
キスマーク見つけられて指摘されたら適当に流す、とかレッドには出来なさそうだし、それが恥ずかしかったんだろうな。つーか、誰に言われたんだろう。絆創膏貼ってるあたりコトネとかか?

「痕つけたらだめなんだ?」
「…だ、だめに決まってるだろ…っ」

おれの質問にレッドが首を縦に振って、厳しい表情で答える。
そう言われても、つけたい。
おれのものだって周りにわかりやすく知らせるためでもあるし、キスマークつけるときのレッドの声とか反応かわいいし、何より今みたいなレッドが見たい。

「……じゃあ、見えないとこだったらいいんだ?」
「…え?
、っ?!」

レッドの台詞を上手く利用すればそういうことになる。
だからそう言って、レッドを壁に追い込み、レッドの背中が壁にドンと当たった。

「…グ、グリーン…?」

さっきまでの怒りはどこへやら。
形勢逆転ってわけじゃないけど、レッドからは怒りのオーラは消えて代わりに戸惑ったような声色が聞こえてきた。

「そういうことだろ?」
「…何がっ、〜〜っ!」

にこ、と笑みを浮かべて言えばレッドがまだわからないという顔でおれを見てくる。
それに相変わらずだなぁと思いつつ、そんなレッドにキスをした。唇に触れるだけのキス。

「っ、…何す…っ」
「あ、ここならキスマークつかないし、いくらでもしていいよな?」
「え…?
っ、んっ、んんーっ」

顔を赤くして慌てるレッドを押さえ込むようにして、唇を何度も重ねる。
最初は軽く啄むようにして、次に唇を食むようにして、さらには噛みつくみたく大きく口を開けてレッドの唇を貪る。
何度も何度もキスを繰り返せば、レッドの体からは抵抗の力が抜けていって、最後にはとろんと蕩けた目でおれを見てくる。

「…っあ、は…あ…っ」

顔を真っ赤にして目はうるうるで蕩けてしまって声もあまさを含んでいて。
こんなにかわいいんじゃ、虫除けとおれのものだって意味でキスマークつけて当たり前だろ。
あ、そうだ、キスマーク。

「…見えないとこならいいんだっけ」
「え…、っ?!
グリー…っ、んんッ!」

ぼそっとそう呟くと、おれはレッドの服を捲し上げて露になった胸の、心臓あたりにキスマークをつける。
レッドの白い肌に、赤い痕がじわりとよく映える。

「っ、…痕はだめって言ったのに…っ」
「そんなとこなら誰も見ないだろ?
それとも誰かに見せるつもりかよ?」

捲し上げた服をおろして、くすくすと笑いながらレッドの首に貼られている絆創膏を指でつつく。
するとレッドはむっとしたように頬を膨らませると、

「…………見せるよ」

怒ったようにちいさくぼそっとそう言ってきて、それにおれが「え?」と聞き返そうとすると、レッドは顔を真っ赤にして。

「…グリーンに見せる」











あいのしるし



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