「ん?」

書類作成が終わり、コーヒーでも飲もうと思ってリビングに行ってみると、リビングではレッドがカーペットに座りこんでシューティングゲームをしていて。
そして眠いのか目を擦っている。あ、もう22時半過ぎてるな。

「レッド、寝るなら布団行けよ。
またそこで寝ても運んでやんねーからな」

コーヒーを淹れるのが面倒で、コップにミネラルウォーターを注いでそれを飲むとレッドにそう告げる。
レッドがゲームしながら寝オチしたのは一回や二回じゃない。
そのたびに甲斐甲斐しく布団に運んでやってたけど、これが常習になっても困る。
なので、何度目かわからない注意をレッドに告げたわけなんだが。

「……米がない」

明日の朝食のために米を炊飯器にセットしようと思ったが、その米がない。そしてレッドからの返事もない。まぁここで「わかった」とか返ってきたことは一度もないからいいけども。
仕方ない。朝イチでパンでも買いに行くか…。
今から行くのは面倒なので明日に全てを放棄すると、おれも寝ようとキッチンから出ると部屋に戻ろうとリビングに足を進める。

「ん?」

するとレッドはまだリビングにいて(コントローラー持ったままだ)、目をまた擦っている。

「レッド、眠いならゲーム終わりにしろよ」
「…そこまで眠くない」
「少しは眠いんじゃねーか」

ため息まじりに忠告したおれに、レッドは首を横に振って否定する。
それに呆れていると、レッドがさっきから右目をしきりに擦っているのに気がつく。

「どうした?」

眠いならそれにプラスで欠伸がついてきてもおかしくはないが、それはない。
なので、レッドの隣まで行ってしゃがみこむとレッドを覗き見る。

「……何か入ったっぽい」
「は?
待て待て、それなら擦ったらだめだろ」

目をぱちぱちと瞬きさせたりしているレッドがぼそっとそう言ってきて、ゴミかと思うと、また目を擦ろうとしているレッドの腕を掴んで止めさせる。
あまり擦ってゴミで眼球傷つけたりしたら大変だしな。

「見せてみろよ」

そしてレッドの右目の上瞼を少し持ちあげて目を覗きこむようにして見てみる。
擦ったせいで少し赤くなっているけど、ゴミは入ってなさそうだ。
それなら下は、と思って下瞼を親指で引っ張って見てみると、目尻のほうに睫毛が一本。これか。

「睫毛、見っけ」
「っ!
…ま、待った、グリーン!」
「ん?」

見つけたついでにとってやろうと指を目に近づけると、レッドが体をびくっと震わせてストップをかけてきた。
それもいつになく素早く。

「じ、自分でとる…」
「大丈夫だって。
端にあるからすぐとれるだろうし」
「…ッ、い、いいってば…っ」

レッドを見てみれば、緊張というか少し怯えたようなかんじなので、安心させるべくそう言って指の動きを再開させようとする。
が、レッドがおれの体を押し返してきた。

「誰もレッドの目を取り出そうとか思ってないっつの」
「?!」

あれか、コンタクトを入れられないあれと同じかんじなんだろうか。いや、自分で出来たらそれは違うか?
でも眼球触るとかそういうわけじゃねーのに、信用されてないってことか?
そう思ってみても、レッドはおれの一言(冗談のつもりだったんだけどレッドには通じてないらしい)を聞いて、さーっと青ざめている。
こういうときに大変不謹慎だとは思うけど、いつも大体どんなこともポーカーフェイスというか、表情が変わらないのに、なんかちょっとこういうのかわいいと思う。
決して、泣きそうな顔にぞくぞくきているとかいうわけではない。変態だからな、それ。

「あ、でもレッドの目って綺麗だよな。
宝石みたいだ」
「…っ、グ、グリーン…っ?」

何もかも見透かすかのように透き通っているかと思えば、誰も踏み込むことが出来ないぐらい深く深く色づいていて。
ふとそう思ったから声に出してみれば、レッドはこれ以上ないぐらいに顔を青ざめている。
宝石みたいに綺麗ってやっぱり取り出そうとしているんでしょ、と言いたそうな非難めいた泣きそうな顔だ。

「…かわいい」
「?!!」

くすっと笑ってそう言うと、びくびくとしているレッドの右目の目尻をなぞるようにべろりと舐める。
レッドは声にならない声を出していて、おれを押し返そうとしていた手はおれの服をぎゅっと掴んでしまっている。

「〜〜〜ッ」

そして唇を離すと、レッドはぎゅっと目を瞑ってしまった。
開けてたら大変だとでも思ったんだろうか。
その反応、可愛すぎる。

「〜〜…っ、
グ、グリーン、寝るなら早く行けば?」

目を瞑ったままレッドがおれの部屋のほうを指差してそう早口で言ってくる。
が、目を瞑っているせいで指差したほうはおれの部屋ではなく廊下だ。
それがまた可愛くてくすくすと笑うと、レッドは不安そうな顔で何だろうとドキドキしているようだけど、目は開けない。

「そうだな、早く行かねーともったいない」
「え?
えっ?、??」

そしてレッドの手からコントローラーを奪うと、それを床に置いてゲームは電源を消した。
それからそれに戸惑っているレッドをひょい、と抱え上げた。いわゆるお姫さま抱っことかいう横抱きで。

「っ?!
?、??」

相変わらず軽いなーと思いつつ、いきなり抱え上げられてびっくりしているレッドを見つめる。
レッドは驚いた拍子に目が開いてしまっていて、その宝石みたいな赤い目を大きく見開いておれを見ていた。

「あれー?
ちゃんと閉じてねーと取っちゃうぞ?」
「?!」

くすくす笑って意地悪くそう言ってやれば、レッドは慌てたようにまた目をぎゅっと瞑って。
それすげーかわいいんだけど、おれはどんだけ信用されてねーんだよ。まじでそんなことすると思われてんのか?

「……ま、いっか」

複雑なかんじだが、大人しくおれにお姫さま抱っこなんかされてるレッドなんて珍しいにも程がある。
だから、目をぎゅっと瞑っているレッドの前髪にちゅっとキスをすると、それにびくっと体を震わせたレッドをおれは甲斐甲斐しくベッドへと運んでやった。












盗難防止の対策なのです


ちなみにゴミというか睫毛は、目尻を舐めたときに取れました。



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