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「なぁ、レッド、おれのこと好き?」

女々しい気持ちは一切なくて、女々しい問いをする。
言うならば、事務的に質問事項を次々と聞くというかんじだ。
すると返ってくる言葉というのは100%の確率で。

「…嫌い」

否定的なもの。
そしてそう言うレッドの顔はいつもどおり無表情で、言うなれば淡々と質問事項に答えるそれで。

「嘘つき。
好きだろ?」
「……白々しい」

レッドをじっと見つめて不敵に笑いながらもう一度聞いてみれば、レッドはどうでもいいという表情で遠くを見つめる。
何度繰り返しても同じ。
ふたりとも『好き』なんて感情は一切持ち合わせてなんかいない。
どちらかといえば、嫌悪感と無関心。
それでも一緒にいるのは、おれたちが同じ穴の狢だからだ。
同類。それは一部分であり、全体的でもある。

「白々しいのはレッドのほうだろ?」

レッドの被っている帽子をとって、自分のもとってレッドに近づいて唇に触れる。
キスというよりはただ触れるだけの行為。
レッドは無表情のままで、微動だにもしない。
これも何度繰り返しても同じ。

「好きでもないやつとこんなことすんの?」
「…ファイアも同じだろ」

皮肉をこめて口元に笑みを浮かべて言ってやれば、レッドからは無表情で無関心な声色が返ってくる。
何も考えていない赤い目。
何も映らない赤い目。
それにどうすればおれが映るだろうか、と独占欲めいたことを思って吐き気をもよおした。

「…ふーん」

レッドの台詞にそう相槌を打つと、ふたり分の帽子を雪の上に放り投げた。
そしてレッドの腕を掴んでおれのほうに引き寄せると、レッドの後頭部に手を回す。
だけどレッドはそんなことされても無表情のままで。
さらり、と指に滑る黒髪の感触にちいさく舌打ちをした。

「むかつく」

同類のくせに。
いや、同類だからなのか。

「早くおれのものになれよ」

蔑んだ目で心にもないことを言ってやると、レッドはそこで初めて無表情を崩した。

「…馬鹿なの?」

何も考えていない赤い目に、何も映らない赤い目に。
鋭くおれだけを映した。



愚か者の戯言



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