久しぶりに熱が出た。
ふらつきながらバトルしていると、ジムトレーナーたちから帰ってくださいと言われて半強制的にバトル中断で帰るはめになった。
そして帰宅して熱を計ったら39度という数値を叩き出し、それに驚いてから記憶がない。

「…」

目が覚めるとそこは自分の部屋で。
ベッドに寝ているようだが自分でベッドに入った覚えは全くない。
大丈夫か、おれ…。いや、39度あるから大丈夫じゃねーけど。
そのとき手に触れる何かが冷たくて、手のほうを見てみれば、

「…レッド…?」

床に座ってベッドに凭れるようにして寝ているレッドの姿が目に入った。
そして冷たいものの正体はレッドの手で。

「え?何でレッドが…?」

状況はよくわからないが、ここにレッドがいることに驚く。
だってこいつはあのシロガネ山にいて、下りてこいって言っても下りてこないぐらいのやつなのに。一応付き合ってるけどそんなかんじだ。
あ、もしかして熱のせいで幻覚を見てるとか?

「…、〜〜っ」

そう思って頬を抓ってみると、すげー痛い。てことは。

「……ん、」
「!」

すると、もぞっとレッドが動いてその体勢のまま目をゆっくりと開けた。
現れる大きな赤い目におれが映る。

「…」
「…よ、よう」

何て声をかけたらいいかわからずとりあえずそう言ってみると、レッドはベッドに埋もれたままでぼーっとしていた目をぱちっと見開いた。

「…グリーン」
「は、はいっ?」

あれ、なんか怒ってる?
無表情っつーか、表情はほぼ無に近いもんがあるけど、なんか。
なので、少しドキッとしつつ返事をすると、

「………よかった」
「へ?」

ぼそっと言われ、よく聞こえなかったものの、表情を見ると怒っている気配は消えたようだ。
何なんだ、と思ってレッドを見ているとレッドと目が合い、

「!」

にこ、と微笑まれた。気がする。いや、いま笑ったよな?
えっ、ちょ、なにそれ。すげー可愛かったんですけど。
しかもおれは枕に頭を乗せていて、レッドは敷布団のうえに頭を乗せているから微妙な上目遣いで。
するとそれに照れて顔を赤くしたおれを見て、レッドがおれの額に手を伸ばしてきた。

「レ、レッド?」
「顔すごく赤い。熱、上がった?」
「っ、いや、これは…」

おれの額に手を当ててレッドが心配そうにしているけど、これは熱とは違うやつでして。あ、そういやおれ熱あるんだった。
そしてレッドが体温計を取り出しておれに渡してきた。なので素直に計ってみると、

「…38.6度」

ピピっと鳴った体温計は一回目よりも低い数値を叩き出してくれた。
でも38度とか39度とか、ちいさいとき以来な気がする…疲れか?
そんなことを思っていると、

「うおっ?!冷たっ!」

額に何かを貼られ、その冷たさにびっくりする。
するとレッドはびっくりしたおれにびっくりしたようで、目をぱちぱちと瞬きさせている。

「あ、いや、冷えぴたか。ごめん」

つーか、貼るなら貼るって言ってくれ。心の準備…するほどのものではないけど多少なりにも、うん。

「…わざわざ下りてきてくれたんだ?」

そしてレッドがここにいる理由を聞くべく、そう話を切り出してみればレッドはポケギアを取り出した。
なんだろう、と思っているとポケギアをぱかっと開かれ、

「…え?なんだ、これ…」
「…さすがに怖かった」

レッドのポケギアの着信履歴は面白いぐらいにコトネとどこかの番号が交互に並んでいて…あれっこれうちのジムの番号じゃねーか…。まじか。
つーか、こんだけ掛かる前に出ようぜ、ポケギアに。

「グリーンが熱出したからレッドさんお願いします、って」
「…あいつら…」

一番頼れない人物になに依頼出してんだ。下りてきてくれたからよかったものの。
つーか、コトネもジムトレーナーもあいつらのが近いんだからあいつらが看病してくれてもよくね?というか。

「あいつら、いつレッドの番号知ったんだよ?!」
「…」

コトネはともかくジムは何なんだ。
おれがいないとこで聞いたってのか?てことは、あいつら全員レッドの番号知ってるってことか?!
レッドを見てみるけど、さあ?と呆れたように肩を竦められた。

「…とにかく、心配してたみたいだから治ったらお礼言うんだよ?」

続けて呆れた口調でレッドがそう言ってくる。
いや、それはわかってんだけど、なんかこうすっきりしないというか腑に落ちない。
治ったら礼とともに聞き出してやろう。

「!」

するとレッドがおれの頭を撫でてきた。
それはおれがレッドにいつもしてやるようなそれで。

「早く治してね」
「…レッド…」
「じゃないと僕、シロガネ山に戻れない」
「…」

ときめきかけたそれがレッドの次の台詞で無惨に散っていく。
わかってたけど弱ってるときぐらい、いい夢見させてくれてもいいだろ。現実が厳しすぎる。
でもまああいつらに言われたとはいえ、熱出したおれを看病しに来てくれたんだし、それだけで十分だ。高望みしない。

「あ、ゼリーあるよ。食べる?」
「…食べる」

それでもいつもよりレッドが優しいというか、恋人っぽい。当社比で。
ベッドの脇に置いてある袋からガサガサとゼリーを取り出すと、レッドはゼリーのフタを開けた。
聞いてみれば、いるもの一式ジムトレーナーたちが準備しててレッドに寄ってもらったらしい。
合理的に考えると準備までしたならあいつらが来たほうが効率いいけど、あいつらもあいつらなりに気を使ったんだろうか。

「これ、グリーンアップル味だって」
「…」

使ってねーな。
でもまあ今日のところは感謝することにしよう。

「グリーン。
あーん、は?」
「…っ」

グリーンアップル味のゼリーをのせたスプーンをレッドが首を傾げながら差し出してきて、なんだかまた熱が上がったような気がした。













あまいねつびょう



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