「レッド、お願いがあるんだけど」

グリーンの家でグリーンの作った晩ご飯をふたりで食べているときに、グリーンが真剣な表情でいきなりそう話を切り出してきた。

「…内容次第では断ります」
「おま…っ、ひでーな、幼なじみのよしみだろ」

ごはんを口に運びながらそう返すと、グリーンがショックを受けたかのような声色でそう言ってきた。
だって今までグリーンが、お願いなんて言ってきたことないからお願いの想像がつかない。
するとグリーンはため息をつくと、そのお願いを言ってきた。

「その…告白の練習相手になってほしいんだけど」

言っておいて恥ずかしくなったのか、グリーンは顔を少し赤くしている。
そして僕はというとそれに、動きも思考も停止するだけだった。

「…」
「…」
「…」
「…って、何か言えよ、こら!」

一旦停止状態な沈黙に耐え切れずに、グリーンが吠えるようにそう言ってくる。顔は真っ赤だ。
そうは言われても、だってグリーンが、あのグリーンが告白の練習って…。

「…何の告白?黒歴史の?」
「なんでだよ!」

それは確かに恥ずかしいと思って聞いてみれば、グリーンからは怒ったような声が返ってきた。
あれ?違うの?それなら付き合ってあげようと思ったのに。

「告白だよ、告白!
えーと、その…あ、愛の!」
「……グリーン、大丈夫?」
「お前が聞いてきたんだろーが!」

堂々と愛とか言ってきたグリーンに心配になって、グリーンの額に手を当ててみる。
うん、熱はなさそう。顔は真っ赤だけど。

「…でも何で僕?僕、男だけど」
「ばか、女の子に頼んでその子がおれのこと好きになったりしたら困るだろ」
「…」

フッと微笑を浮かべて自意識過剰な台詞をはいてくるグリーンを冷めた目で見つめる。
だけどこう見えてグリーンは女の子にすごくもてる。
ジムリーダーをしているのもあるけど、それなりにイケメンだし(黙ってればイケメンなんですけどねってコトネも言ってた)、それになんやかんやで優しいし(女の子には特に)。

「…じゃあ、コトネは?
コトネは絶対そんなことならないでしょ」
「…お前は…おれに自ら処刑台に上がれと…?」
「…」

…グリーンはコトネのことなんだと思ってるわけ?
だってコトネはグリーンのこと何とも思ってないみたいだし、けっこう辛辣に喋るからいいと思うのに。何より女の子だし。
だけどグリーンは青い顔をして首を横に振るだけだ。

「…というか、グリーンに告白されて振る子なんているの?」

女の子にもてもてなくせに。
だから呆れたようにそう言ってやれば、グリーンがはあと大きなため息をついた。

「強敵なんだよ」
「……敵なんだ…?」

好き、なんだよね?その子のこと。
グリーンはため息をついて、顔は真剣に思い煩っている。
というかグリーンって好きな子いたんだ、と今さら気付く。

「だから練習に付き合ってくれよ」
「…あまりというか、全然役には立たないと思うけど」

僕を練習相手にするなら壁に向かって言っても変わらない気がする。
だから否定的にそう言ってみるとグリーンは、

「いいんだって。
レッドぐらい鈍いやつが心に響く告白ならいけると思うんだ」
「…それさりげなく僕のことばかにしてるよね?」

そんなことを言ってきて、少しだけムカッとした。
鈍くて悪かったね、鈍くて。

「ばか、褒めてんだよ!」
「……いいよ、暇だし付き合ってあげる」
「まじか!
よし、じゃあベタなのからいくか」

慌てたようにそうフォローしてきたグリーンにますますムカッとするけど、確かに暇なので了承してあげた。
するとグリーンは箸を置くと、嬉々とした顔になる。

「…ご飯食べながら練習するの…?」
「善は急げって言うだろ」
「…」

せめてご飯終わってからでも遅くないと思う。
だけどグリーンがなぜかすごくやる気出してるから、仕方なく付き合うことにした。さっき了承しちゃったし。
ため息をついて箸を置くと、グリーンを見る。するとグリーンはとても真剣な顔をしていて。

「好きだ。
おれと付き合ってほしい」

今まで見たことないぐらい真剣な顔で、真剣な声で、グリーンがそう告げてきた。

「…」
「…」
「…レッド、無反応だと困るんだけど」

するとちょっとの沈黙のあとにグリーンが困った顔をして僕を見てくる。

「…あ、ごめん。なにか続きがあるのかと…」
「ねーよ。
で、どうだった?」

だってグリーンの台詞遮ったりしたら悪いし。終わったなら終わったと言ってほしい。
そしてグリーンが照れくさそうに感想を僕に聞いてきた。

「…どうって……普通?」
「…普通」

ちょっと考えてからぼそっとそう言うとグリーンが苦い顔をしている。
なにと比較していいかわからないし、どれが基準かだなんて僕にはわからない。
だから僕は役に立たないって言ったのに。

「あ、でもグリーンの真剣な顔、久しぶりに見た」

役に立たないのはわかってるけど、グリーンのためだと思って、思ったことを口にしてみる。

「は?」
「ちょっとかっこよかったよ」
「…!!」

笑ってそう言ってみたけど、確かに今まで見たことないぐらい真剣な顔をしていたグリーンは、バトルをしてるときの真剣な顔とはまた違った顔でかっこよかったと思う。
僕、バトルをしてるときのいまのグリーンの顔、好きなんだよね。
バトルを純粋に楽しんでいて、それでいて強くて、こっちまで楽しくなる。
だからそう言ってみれば、グリーンは顔をぼっと一気に茹で上がったみたく赤くしてしまって。そしてテーブルに突っ伏した。

「…?
どうしたの?」

グリーンの行動に、僕は首を傾げる。
普通って言ったのがやっぱりまずかったんだろうか。
だけどやっぱり恋愛のことはよくわからないし、グリーンは僕ぐらい鈍いひとの心に響けば大丈夫みたいなこと言ってたから、僕がどきっとすればいいってことなのかな。
今更ながらに悩んでみると、グリーンのが頭を抱えていた。

「…強敵すぎる…」
「え?なに?」
「…それに本人目の前にしてこれは拷問にちかいな…」
「?
何の話?」

ぶつぶつとなにか言ってるグリーンになんのことかと首をまた傾げてみると、かわいすぎんだよばか!と怒られました。
何の話?














ハートに火をつけろ!


「…なに、お前の心はてっぺきでも使ってんのか?」

そしてしばらく告白の練習をしていたけど、グリーンが音を上げました。



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