「…んー…」

まずい。これは非常にまずい。
いまおれの目の前には、すやすやと天使みたいな寝顔のレッドがいる。
おれの狭いシングルベッドにふたりで寝ているわけだけど、いつもと違うのは部屋のなかに敷かれた布団にヒビキがすやすやと眠っているということだ。

(…いや、いいんだけど。別にいいんだけど…いいんだけど…)

ぶつぶつと心のなかで泣きながら呟いてみる。
今日は久しぶりにレッドが下りてきたからうちに泊まって、で、久しぶりだから思春期真っ盛りな身としてはヤリたいわけなんです。
だから部屋の床に布団を敷いていたレッドを後ろから抱きしめて、いろんなとこにキスして、とろんと蕩けさせたところでインターホンが鳴った。
だいたい深夜にくる訪問者にろくなやつはいないと思ってたけど、まさかのヒビキで。
しかも泊まらせてほしいとお願いされて、ポケセンに行けと言うのもなんか気が引けて仕方なくヒビキを泊めることになったわけなんですが。

(ヒビキに布団を譲ってまさかレッドがこっちにくるとは…)

布団が一組しかないから、三人いれば布団とベッドだから一人余る。
ヒビキはソファーを使うって断ってたけど、レッドがせっかくだから布団で寝なよ、と言ってヒビキが布団に寝ることになり、残った二人でベッドに寝ることになった。
いや、いいんだ、それは。先輩二人が狭いシングルベッドで我慢して、可愛い後輩に布団で寝てもらっても。
話は、おれのスイッチが入ったままということだ。

(だって久しぶり…1か月ぶりぐらい?そりゃ、ちょこちょこシロガネ山行って顔は見てたけど、こうゆっくりするっていうか、うん、セックスするのはまじで1か月ぶりぐらいなんだっつーの)

思春期真っ盛りが1か月放置されたらエライことになる、のはシロガネ山の仙人なレッドには伝わりにくいけど、エライことなんだよ、今まさに。
つーか、レッドだって結構ヤる気でいただろ。とろんと蕩けたえろい顔してたし、おれに抱きついてきたし。
それがよくもまあ何事もなかったかのように、すやすや寝れるよな…まあシロガネ山の仙人だから仕方ないか。

「……んん…」
「!」

するとレッドが眉間にシワを寄せたかと思うと、おれの胸元に顔を擦り寄せてきた。そして、頬をすりすりと擦りつけると、またすやすやと規則正しい呼吸音を奏で始めた。

「〜〜っ」

それに悶絶しないわけがない。
なにいまの。すげー可愛いんですけど…!!
気絶まではいかなかったものの、魂が口から出そうな勢いだった気がする。

(くっそー、こんな可愛いレッドを前におあずけとか厳しすぎる…)

別に今日じゃなくても、2、3日はいるってレッドが言ってたからチャンスはあるけど、そうじゃないんだ。
このいま高ぶっている熱をどう下げていいかわからない。だけどだからってヒビキが寝てる横でセックスするわけにはいかないし、レッドにいたずらとかするわけにもいかない。

「…」

(…よし、寝よう。寝れば熱も治まるよな)

最初からそうしていれば問題はなかったようなことを今さら思うと、すっと目を閉じてみる。

「…」

部屋はとても静かで、レッドの寝息が聞こえるぐらいだ。

「…」

…そうでした。いま、レッドの顔はおれの胸元にくっつけられているんでした。
そのレッドの髪が鼻先をくすぐって、それが眠気を拒む。と。

「…っ?!」

レッドがおれの服を握ってきた。
すやすや寝てるから無意識なんだろうけど、これじゃあ眠れるわけがない。

(いや、レッドは実は起きてて、おれにこういうちょっかいというか試練を与えているんじゃ…?)

疑心暗鬼でそんなことを思うと、せっかく閉じた目を開け、おれの胸元にくっついているレッドの頭を引き離すようになるべく優しくゆっくりとレッドの体を少し引き離した。
だけどそんなことされてもレッドはすやすや寝ている。

(…やっぱり寝てるか。
つーか、あれ全部ねぼけてるってことか…?
くそっ、可愛すぎる…!)

今までこんなの見たことない。というか、二人でベッドに寝るのはたいていセックスしたあとだからレッドはねぼける暇もなく寝てるよな…。
そして、そんなレッドの頭をもとの位置な枕に乗せたところで、

「………ん〜…」

またレッドが眉間にシワを寄せた、かと思うと。

「……えへへ…グリーン、すき」
「?!!」

寝顔がふにゃりと笑うと、また規則正しい呼吸音を奏で始めて、おれの熱はトドメをさされた。












駆け落ちるシューティング・スター




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