▽05:あとひとつ残っているものは



「まだ足りない」

そう言う君の表情はどこか真剣で、僕はあと何があっただろうかと考える。
足りないはずなんてない。
だって君に、グリーンにあげられるものはぜんぶあげたんだから。
なのに、足りないって、何が。

「あとひとつ残ってるだろ」

そしてグリーンはそう言って僕の心臓あたりをトントンと指でつついた。

「え…?」
「目に見えない大事なもんがあるだろ」
「…っ、し、心臓?」
「ばか。ばかレッド。
んなもん貰っても困るわ」
「え、じゃあ…?」

首を傾げる僕にグリーンは大きなため息をつく。

「…心をくれよ。
それも、おれのことが好きだっていう心を」