なんちゃって家庭教師
時間軸は未来編のあとのどこか。
都立並盛高校。
「えー、今から前回の模試の結果を返却するので取りに来るように。取りに来なかったら廊下の掲示に晒すからなー。番号順で来いよ、麻田ー。井上ー…………」
「正直もう進路決まってるからどうでもいい………」
「あんまり悪いと取り消されるって聞いたが?」
「うっそマジ!?」
「噂だ、噂」
「………本ー、岡本ー。よし、岡本は晒し決定っと」
「わ、ちょ、タンマタンマ!前ちゃん待って!!」
「何をやってんだあのアホは………」
「そういえば聞いた話なんだけど、前ちゃん弟居るんだって」
「あ、そーなの?」
「しかもね、弟君も先生なんだって」
「兄弟揃って先公かよ………」
受験戦争の過渡期である今、先日………と言っても1ヶ月程前にあった模試の返却が行われていた。ちなみに前ちゃんとは彼等の担任前原のことである。
「須藤ー、瀬川ー、多村ー」
「多村、呼ばれてるぞ」
「分かってるって。はいはい」
多村も例に漏れず教壇の方へ赴き成績表を受け取りに行く。
「多村はまだ進路確定してないんだよなー………ま、この調子ならいいだろ。本番で油断したとか言って泣くなよー?」
「泣きません。ってか人の顔見てニヤニヤすんの止めてくれます?」
「おーおーウチのホープは手厳しいね。んじゃ次垂水ー」
半ば奪い取るようにして受け取り、多村は自分の席へと戻った。
「前ちゃん何言ってたの?」
「別に」
「んだよー。俺なんか顔見た瞬間ため息つかれたんだぞ!」
「何故そこで胸を張る」
「多村成績表見せてー」
「あぁ、いいよ」
成績表を佐藤に渡し、再び問題集に向き直る。そしていざ解こうとした時だった。
「えー!何これ!!」
「どうした、佐藤」
「何々?多村思いの外おバカだったり…………な、んじゃこりゃ!!!!」
「人の成績表見て奇声あげんなよ、不愉快」
あからさまにしかめっ面をする多村と、驚きの奇声をあげた岡本。怪訝に思った井上も件の成績表を覗く。
「………あれ、お前こんなに出来たか?」
「3桁!3桁だよこいつ!!」
「A判定って本当にあるんだ………」
見事に三者三様の反応をしてくれる愉快な級友達。多村は軽くため息を吐いて己の成績表を彼等から奪い取った。
「あと2ヶ月あるかないかだぜ?ちゃんとやらない方がどうかしてる」
「お前今まで手ぇ抜いてたのか………」
「ひどい!ひどいわ!!俺達を騙していたのね!」
「岡本キモい」
「ひどっ!!!」
「多村頭よかったんだー」
「それはちょっと違うんだが………」
多村はそう言って口ごもる。流石に、自分チートなんで☆とは言えないだろう。その時だった。
「本当にお前出来るんだな」
「どうして此処にいる。つーか何しに来た?」
多村の成績表を覗きこんでいる存在が居た。全身黒ずくめの赤ん坊である。
「ちょっとお前に頼みがあってな。授業態度を見て決めようと思ってたが、手間が省けたな」
「嫌な予感しかしないんだが。え、断っていい?」
「別にいいぞ。覚悟出来てんならな」
そう言って赤ん坊はジャコッとリボルバーの安全装置を外した。それを見た多村は悟った、拒否権が存在しないことを。
「あ!この前の赤ん坊だ!」
「ちゃおっス」
「ちゃお〜」
「最近冷え込んでるから、風邪ひかないように気をつけろよ」
「あぁ、分かってるぞ」
「いやいやいや、ちょっと待て!何でお前等そんなフレンドリーなんだ!?」
多村がつっこんだのも仕方ないだろう、誰1人として赤ん坊が2足歩行をして流暢に喋っていることにつっこまないどころか、仲良さげに会話しているのだ。誰だろうとつっこみたくなる。
「この間喫茶店で見かけて………そこからだな」
「この歳で1人で買い物ってすごいよね!」
「あぁ、うん………ソウダナ………」
本当に、普通の赤ん坊だったら買い物行けるのすごいと思うのに。と多村は思った。
「で、結局のとこ頼みって何だよ?」
「本っっっ当にすみません!!!」
「いやー、ま、うん。沢田少年のせいじゃないから」
沢田家に着いて、リボーンに連れられて入ってきた俺を見た沢田少年の顔がみるみる青ざめていった。まだ事情分かんないけど沢田少年の反応を鑑みるに厄介事の可能性が非常に高いよな。
「さっそく本題に入るぞ」
「あぁ、俺に頼みだったな。言っとくが出来ねぇこと頼むなよ?」
沢田少年の部屋に通されてテキトーに座る。ちょっと汚ねぇなぁ……チビ居ること考えたら仕方ない……か?
「実はな、9代目の要請でしばらくイタリアに戻らなきゃなんねーんだ」
「へー。それで?」
「オレが居ない間、ツナの家庭教師はお前に一任することにした」
「「ぶっ!!!」」
飲みかけのジュースを何とか堪えて噴かずに済んだ。沢田少年は見事に噴いてたが。いや、つーか、待て待て。
「何でそこで俺なんだよ?跳ね馬とか、探せばカテキョ候補山程居ると思うんだけど」
「ディーノはあれでいて一応マフィアのボスやってるからな。最近またシマを荒らす三下マフィアが出てきて手が放せないらしいぞ」
「マジか………」
まぁ普通俺に頼む前に跳ね馬に頼むか。てか、え、本当にやんなきゃダメなの?
「とりあえず先にこれを渡しておくぞ」
そう言ってリボーンが渡してきたのはアルミ製のトランクケース。とりあえず中を開けてみれば、そこには数えるのが嫌になる位の弾丸が入っていた。俺に、どうしろと?
「もし何かあったら、ツナに撃っていいぞ」
「んな―――――――!!!?」
「いやいや、撃たねーから。自力で出来るやつあっただろ?」
「あっ!そうだよリボーン!!死ぬ気丸あっただろ!?」
「ちっ」
軽く舌打ちしてリボーンは死ぬ気丸の入った小瓶を沢田少年に渡した。あるんなら最初から出せよ……………。
「まあ、家庭教師やるとしてよ、俺は何すりゃいい訳?」
「えっ!?有人さんやるんですか!!?」
いや、だって、なぁ?
「やんねーと殺されそうだし………… 」
「あぁ………」
沢田少年が憐れみのこもった視線で見てくる。そうだよな、一番の被害者沢田少年だもんなぁ……………。
「よっ」
「っんでてめーが居るんだ!!」
「何でと言われてもなぁ………」
「こんちわー」
沢田少年の部屋で彼が帰ってくるのを待っていれば、入って早々獄寺君に難癖つけられた。まぁ、いつものことか。
「そろそろラストスパートだからかな。センター試験に入試と受験生は忙しいんだよ。学校によるけど、俺のとこはもうしばらくは学校無いんだ」
「そんなんが理由になるか!!」
「もっと言うとリボーンが俺に無茶ぶりしてどういう訳か俺が沢田少年の家庭教師やることになったからかな」
「んなっ!?」
おーおー驚いてる驚いてる。こういうとこ面白いよね、獄寺君は。
「あれ?でもそれって有人さんも受験あるってことじゃ…………」
「確かに、そうだよな」
「おい風野郎!どういうことだ!!!」
「……………聞きたいの?」
そう言った瞬間、沢田少年達がピタリと黙った。流石に俺の重たい空気を感じ取ったらしい。
「えっと、あの…………」
「ん?何かな?」
「有人さんはもう受験終わった、ってことですか?」
「あ、聞くんだ?…………ま、いっか。俺、受験しないことにしたんだよね」
「えぇっ!!!?」
「……………理由は何だ?」
「簡潔に言えばヴァリアーの奴等による巧妙な罠ってやつ。これ以上の深入りは遠慮願おうか」
それに関してはまだ俺ヘコんでるんだよ…………もう、ホント、あいつ等信じらんねぇ…………。
「さてそんなことより沢田少年、今日の宿題は何かな?」
「あ、このプリントなんですけど………」
「どれどれ…………」
どうしてこんな高校レベルの宿題出すんだ並中の先公は!そろそろクレームつけてもいい気がするんだけど。んー、でもこんな感じのプリントどっかで見たような………。
「なぁ、これ出した先生の名前って何だ?」
「あ、前原先生です」
な ん だ と?
「確かあの先生兄ちゃんがいるらしいぜ」
「嘘っ!?」
「マジかよ………」
「あぁ。しかも兄貴の方も教師やってるらしいぜ」
「んなアホな………」
うおお、マジか!!つーことはあの前ちゃんの弟が並中で教師やってるってことだろ?…………ん、てことはあれか?間違って兄のプリントを弟が持ってったとかそういうオチか?………しかもこのプリント……どうやら次の小テスト用っぽいな………そういうことなら、
「このプリント、ちょっといいか?」
岡本の妹経由で上手く流すかな、ついでに模範解答も作って高めに売りつけてやるかね。それから沢田少年達に教えればバッチリじゃね?まぁこのプリント自体はほとんどオマケみたいなもんだし。沢田少年、近々テストがあるらしいしそれの対策とヤマ教えとけば何とかなんだろ。というか、何とかしてくれ。じゃないと俺がリボーンにどやされる。
後日。
「帰ったぞ」
「あ!リボーン!!」
「よぉ。もういいのか?」
「あぁ、助かったぞ」
沢田少年に数学を教えていれば窓からリボーンがやって来た。これでようやく俺もお役御免って訳だ。ちなみに先日のプリントはしっかり岡本妹に解答付で託しといた。いやぁ、いいことすると清々しい気分になるよな。前ちゃんざまぁ!
「ところで、オレのいない間にテストがあったみたいだな?」
「そうそう。で、沢田少年。結果そろそろ返ってきたんじゃないの?」
「あ、はい!………これです」
渡されたテストを確認してみれば…………半分ちょい、か。まぁ沢田少年にしてみれば頑張った方なのかな?
「オレ、生まれて初めてこんないい点取りました!!」
「あ、そう………なの?」
それは流石にちとやばいんでないの?沢田少年進学キツくないか……?
………………ん?
「リボーン?どうした」
「おめー、何したんだ?」
「テストのヤマ教えて、その辺りを重点的に叩き込んだ。根本的な解決にはなってない。まぁそこはほら、お前の領域だろ?」
「確かにな」
リボーンはそう言ってニッと笑った。ごめん沢田少年、何か火付けたかも。
「んじゃツナ。今日からまたビシバシやってくぞ」
「え………えぇっ!?」
沢田少年の驚愕に満ちた声。元はと言えば自業自得なんだけど………でも相手があのリボーンだから同情の余地は充分にあると思うよ、うん。
「じゃあ、俺はそろそろお暇するよ。これ以上長居すると迷惑になりそうだし」
「あぁ、またな」
「え!!ちょっと待って下さい有人さん!!!」
「ごめんな、沢田少年。俺も自分が1番かわいいんだ」
「そんなー!!!!!」
嘆く沢田少年をそのままに沢田家をあとにする。沢田少年の悲鳴が断続的に聞こえてくるが、まぁ問題ないだろ。………生きろ、沢田少年。
おわり。
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朝子様、大変お待たせしました!!リクエストは意外と勉強出来た空主に驚く話、でした。リクエスト内容に沿ってないような気がしないでもないですが、このような感じで如何でしょうか?
そしてどうでもいい新キャラがww担任の名前は前原なんですが、まぁ皆ナメてるんでしょうね………。本当はヴァリアーも出すつもりでしたが、収集が着かなくなってしまったので断念しました……。
ではでは、リクエスト本当にありがとうございました!!
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