10年後設定な感じでヴァリアーと。


「今日はスクアーロをボッコボコにしようと思う」

「急にどうしたんですかー?」


〜だいたいいつも通り〜


ヴァリアー本部の談話室、そこで唐突に何の前触れも脈絡もなく有人は宣言した。到底理解し難いその言動に同じ幹部でたまたま居合わせたフランが尋ねた。

「最近スクアーロの仕事が何故か俺に回ってきてるんだよね、それもデスクワーク系のだけ。ただでさえ仕事しないどっかの王子とどっかのカエルの分もやってる俺にこの仕打ちはどうかと思うんだ」

「耳の痛い話ですー」

「で、憂さ晴らしと運動不足解消を兼ねてスクアーロボコそうかなって訳よ」

「堕王子じゃダメなんですかー?」

「それお前がボコしたいだけだよね。まぁベルもなしでは無いけど、ラリったあとの事後処理面倒なんで却下。幻術師であるお前は言うまでもなく論外」

「スパッと切り捨てましたねー。心にザクッと刺さりましたー」

「そういう小芝居はいいから」

有人は本当に苛ついているのだろう、僅かではあるものの彼から怒気が滲み出ていた。ヴァリアーに強制就職させられた挙げ句仕事はデスクワークのみ。だったら俺じゃなくてもよくね?とは彼の言葉である。

「でも何でこのタイミングなんですかー?」

「確か明日お前と一緒にボスの護衛でどっかの式典に出席するだろ?スクアーロが」

「………本当嫌な性格してますねー」

「誉め言葉として受け取っとくわ。んじゃレッツフルボッコターイム!」

意気揚々と談話室を出ていく彼の背中が非常に楽しそうに見えた、と後にフランは語った。




「よっ、スクアーロ」

「あ゙ぁ?お前かぁ。どうかし、っ!?」

廊下で後ろからやって来た有人をスクアーロは軽く一瞥しそのままスルーしようとしたが、突然ヴァリアーステッキを振りかぶってきた彼に驚きが隠せなかった。

「ゔお゙ぉおい!!!てめー何しやがる!!」

「んー?何がー?つーかそれむしろ俺の台詞だよねー」

間一髪避けたものの有人の攻撃は休まることがなかった。しかも先程からずっとニコニコと笑いつつヴァリアーステッキを振り回してくるので若干気味が悪い。

「ゔお゙ぉい!!てめーいったい何にキレてんだぁ!!?」

「さぁ?とりあえずお前の全てかなー、うん」

相変わらず笑顔で攻撃してくる有人にスクアーロは何か地雷でも踏んだのか?と思案し、そしてようやく思い当たった。ヴァリアー幹部達の中で比較的温厚の部類に入る彼は大抵のことを「やれやれ」「仕方ないなぁ」「貸し1つな」と言い許す人物なのだが、如何せんその配分を誤ってしまったようである。

「ッチィ!」

振り落とされたステッキを愛用の剣で受け止め、押し返して後ろに飛び退きある程度距離を取る。そうでもしなければあっさり不意討ちをくらうだろう。多村有人はそういう男だ。

「っと……一筋縄じゃいかないか」

距離を取られたことに心の中で舌打ちする。が、この程度で自分の怒りが収まるかと言えば答えはノー。まだまだ甚振り足りないのだ。自分で言うのも何だが生来、基本的に沸点は高い方だが、どこかで怒りが振り切れた後はそれはもう気が済むまで執拗に責める攻める、そういう人間だ。まぁ、今はスクアーロをボコせればそれで良し。

「開匣!おいで!!」

[めぇ!]

「来ぉい!!アーロぉ!!!」

雲羊がその身を震わすと周囲にばら蒔かれる目に見えないほど細かい綿毛。この綿毛に死ぬ気の炎が触れればその炎を吸収し、あっという間に増殖するだろう。

「面倒くせぇことしやがって………」

「あっはっはっは。お前こそ面倒くせぇこと押し付けやがってよ」

相変わらず有人の目は笑っていない。しかも基本的にものを無駄にすることを嫌い、XANXUSが投げ割れる運命となった高級食器達を幾度となく救済してきた彼がヴァリアー内で暴走。普段なら欠片も考えられない状況だ。

「ゔお゙おい!!覚悟は出来てんだろうなぁ!!」

「そりゃこっちの台詞だ。遺言は纏まったか、スクアーロ」

「笑わせるぜぇ!!!」

そこから始まる目にも止まらぬ高速バトル。道行くメイドや隊員達も足を止めその戦いを見ていた。何故なら普段トレーニングルーム以外で武器を手にせず戦わない有人が珍しく戦っているからである。しかし、その戦いも唐突に終わりを告げる。

「鮫特攻!!!」

「おいおい、そんな大振りの技が当たると思ってんのか?」

その言葉通り有人はスクアーロ渾身の一撃を軽く避ける。さて、ここで思い出して頂きたいのは今、彼等が戦っているのは何処か…………………そう、ヴァリアーの本部である。ただの偶然かはたまた運命のいたずらか、その一撃の直進方向はとある人物の執務室であった。

「…………あ、」

「ゔ………ゔお゙、お゙い……」

「………………………………………」

すっかり風通しの良くなった執務室には、今まさにデスクワークの最中であっただろう人物がいた。その人物は壁を突き破り転がり込んできたスクアーロと未だ戦闘態勢の有人をゆっくりと一瞥し、ゆらりと立ち上がる。

「や、やあボス!ご機嫌如何かな?」

「いよぅ、ボスさんよぉ!!元気かぁ!?」

水を打ったような静寂に堪えきれず2人は比較的大きな声で喋る。ちなみに2人の戦いを観戦していたギャラリーは既に各々の職分に戻りこの場から脱していた。これぞヴァリアークオリティである。

「あ、ちなみにこれやったの見ての通りスクアーロな。俺無関係だから。所謂通りすがりってヤツ?」

「ゔお゙おい!!てめっ、汚ねーぞぉ!!!」

「俺のどこが汚いんだよ!スクアーロが突っ込んでくるから避けただけ、ただの正当防衛だろ!?」

「それが汚ねーって言ってんだぁ!!だいたい仕掛けてきたのはてめーだろぉ!!」

「それだってスクアーロが俺にいらん仕事回してくるからじゃねーか!即ち元を辿ればお前のせいだっての!!」

「何だとぉ!?表ぇ出やがれぇ!!!」

「上等だゴルァ!!その剣プライドごとへし折ってやんよ!!」

「…………………この、」

ドスの利いた低い声にスクアーロと有人はピタリと止まった。ゆっくりと、それはもうとてもゆっくりと2人は声の主の方へ振り返る。銃口が、こちらを向いていた。

「ドカス共がぁ!!!」

「ちょ、ボスー!決別の一撃はやめたげて死んじゃう死んじゃう!!」

「ゔお゙おい!!落ち着けぇ、クソボスゥ!」

「るせぇ!かっ消えろ、カス共が!!!」




翌日。

「あれー?今日のボスの護衛、アホのロン毛隊長だったと思うんですけどー」

「お前それ昨日の大惨事知ってて言う?」

「一応念のための確認ですよー。ちなみにアホの隊長はどうしたんですかー?」

「全治2週間だと。まぁボスの攻撃まともにくらって死なない辺り流石スクアーロだよなぁ」

あの後、XANXUSが暴れだしヴァリアー本部は半壊した。しかしヴァリアーの者は皆半壊を嘆くよりも、全壊しなかったことに喜んでいた。スクアーロはその尊い犠牲となったのである。そしてスクアーロがとても護衛可能な容態ではなかったため急遽有人が代わりを勤めることになったのだ。

「よかったじゃないですかー、デスクワーク以外の仕事が回ってきて」

「両手をあげて喜べねぇよ………」

「それにしてもー、よくボスに攻撃されて無傷でいられましたねー」

「ん?あぁ、スクアーロ盾にしたしそれにボスがべスター出さなかったからな。あと分身とか結界とかいろいろやってたらボス面倒くさくなったんだろうねー、標的スクアーロに絞ってたわ」

「…………センパイってよく鬼とか悪魔とか言われませんー?」

「お前は善良な一般市民に何てことを言うんだ」


おわり。


―――――――――――――――――


咲世様、大変長らくお待たせ致しました!

リクエストはヴァリアーの誰かと戦う、とのことでしたのでスクアーロにしてみました。あとは私の気分で何故か10年後です、すみません。いや、現代空主がヴァリアーとガチバトルっていうのがあまり想像出来なかったので………。10年も経ってたら容赦なくタコ殴りとかするかなー、と思った結果です。そしたら何故かボスにタコ殴りにされましたね、どうしてこうなった。しかも途中から匣兵器が空気になってしまいました………。

あとタイトルが迷子ですね。いや、空主が戦うってこと以外で考えたらヴァリアー的に日常茶飯事なんじゃないかな、と思ったらこんな風になりました。ちなみに最後の方でロン毛が抜けてますがわざとです(笑)


それでは、リクエスト本当にありがとうございました!




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