空模様番外?並盛、未来編の前。
「多村!大変だ!!」
「………………何が?」
〜迷子デリバリー〜
[タムラタイヘン!タムラ、タイヘン!]
岡本が両手に包んでいたのは小さな黄色い鳥だった。此処は、並盛高校。取り立てて目立ったところのない極々普通の、平凡な公立高校である。
そこで残り少ない高校生活を満喫するのは不本意ながらも仕方無く已む無く渋々裏社会を束ねる巨大組織ボンゴレファミリーに入ることとなった多村有人だ。
「何だこれ?ひよこ?」
多村と共にいた井上が岡本の手のなかのそれを見て呟く。確かに、黄色くて小さいそれはひよこにも見えるだろう。しかし、多村にはその鳥に見覚えがあった。
実際に見たことは無かったが、まさか実在するとは。彼は多少確信があった、こいつヒバードだろ、と。喋ってるからほぼ確定だよな、とも。
「カラスが大勢でつついてたんだよ!今にもハンティングされそうだったんだぜ?」
「しかも怪我してて飛べないみたい」
ただいまの時間帯は昼休み。購買という戦場に赴いた2人の戦士………佐藤と岡本は教室に戻る途中偶然カラスがハントしているのを目撃したらしい。
言われてみれば2人の制服は若干解れたりしている。ちなみに多村と井上は母親の愛情籠った弁当を所持している為戦地に赴くことは無かった。
「どれどれ?あーこの程度ならしばらくすれば治るだろ」
多村が鳥の羽根を軽く触って持ち上げる。すると確かに羽根の付け根に傷口が見えたが、あまり酷い怪我では無いようだ。
「んで、お前等はこいつを拾ってどうするつもりなんだ?」
「「……………………………」」
井上の言葉に岡本と佐藤が押し黙る。拾うのは簡単、問題はその後である。だが2人の様子からその後のことは何も考えていなかったようだ。その時であった。
[ミ〜ドリ〜タナ〜ビク〜ナミモリノ〜]
「「「歌った!!?」」」
そら歌うよなぁ、何せヒバードだし。多村は口には出さなかったが思った。これは、ヒバードを返しに行かなければいけないのかもしれない、と。
だが自分は彼とこれと言った接点が無い。同じ組織と言えばそうだが、ついこの間敵として戦ったばかりだ。まぁ対峙した訳ではないが。
[ヒバリ!ヒバリ!]
ヒバードがそう言った瞬間、教室の空気が凍りついた。並盛中風紀委員の話は此処、並盛高校にまで届いている。
つまり、ヒバリという名を指すのは1人しかいないわけで。
「ヒバリ………ってあれか?並中で不良のトップの」
「他にヒバリはいないだろ。しかしまぁ、あのヒバリがこんな小さい鳥を………」
「実はかわいいもの好きとか?」
「ヒバリのイメージが音を立てて崩れるからそういうこと言うな」
「で、この鳥どうすんだ?」
「「「…………………………………」」」
多村の言葉に3人共口をつぐんだ。誰だって好き好んで咬み殺されたくない。しかし少なくとも1人は咬み殺されるだろう。
「……俺、知らね。そもそも佐藤と岡本の問題だろ?」
「井上貴様!俺達を見捨てるって言うのか!?」
「多村…………」
正直、岡本が咬み殺されるならなんら問題無い。むしろ喜んで差し出したいくらい。
しかし、どちらかと言えば佐藤の方がどんくさい分咬み殺される確率が高いだろう。ならば、
「俺の知り合いに頼んでみようか?」
「「是非ともよろしくお願い致します」」
「と、まぁそういう訳なんだよ沢田少年」
「は、はぁ…………」
所変わってただいま沢田家にお邪魔している。いやね、リボーンにメールしたら来いってさ。ちゃんとヒバードの写真も添付したんだぜ?
「ファミリーの悩み事を解決するのもボスの役目だ」
「リボーン!またお前はいつもそうやって!!」
「まーまーいいじゃねぇか、ツナ。この鳥をヒバリのとこに持ってきゃいいんだろ?」
「野球バカは黙ってろ!だいたいそんなこと10代目に頼んでんじゃねぇ!!」
「確かに俺はヒバリの噂は聞いてるけど、何処にいるかとかは知らないんだよ。だから並中生である君等に頼むのが一番早いと思ったんだけど」
応接室に絶対居るとも限らないだろ?見回り行ってるかもしれないし。あとは屋上とか?群れてたら寄ってくるかな。
「んじゃツナ、お前が責任持ってきちんと有人をヒバリのとこまで届けろよ」
「んなー!?何でそんなことに!!?」
「よろしくなー、沢田少年」
「10代目とこいつを一緒にしちゃおけねぇ!10代目!!オレもお供いたします!!」
「ははっ。なんだか面白そうなのな」
「おらツナー!あそべゴラァ!!」
「◎×*#☆□!!!」
「なっ!てめえアホ牛!!」
おぉ、ランボとイーピンだ。並盛チビーズあとはフゥ太か。今度探してみよう。あ、ちなみにイーピンは「ランボ、邪魔しちゃダメ!」って言ってたんだぜ。
俺中国語は出来るんだ、前世的な意味で。
「なぁツナー。こいつだれ?オレっち、見たことないじょ」
「えーっと、それは…………」
「はじめまして、俺は多村有人。君は?」
「オレっちはぁ!!ランボさんだもんねー!あ!さてはお前、ランボさんの子分に「図に乗んな」ぐぴゃ!」
飛び上がって空中宙返りを華麗に決めたリボーンがランボの上に着地した。満点だ、でもランボ泣き出したぞ。
「が・ま・……………うわぁぁあぁあぁあああん!!!!!!」
「リボーン!何してんだよ!!?」
「目障りだったから踏んだだけだ」
「流石っス、リボーンさん!!」
「*☆◎□#?」
ものすごくさらりと悪びれもせずに言い切ったよ!獄寺君と別の意味で流石リボーンというか何というか。
イーピンは「ランボ大丈夫?」って言ったんだ、本当にいい子だなこの子は。それよりも先に泣き止ませるか。
「泣くの我慢出来たら俺がいいものあげようか?」
言えばピタリと泣き止んだ。よし、掴みは上々だな。
「なにくれんの?」
「じゃじゃーん」
「!アメ玉だもんね!!ちょうだい!」
「もう泣かない?」
「ランボさん大人だから泣かないもんね!アメ玉よこせ!!」
「いいよ。ほら、君も」
「&☆◎*?」
「うん、いいよ」
「え、有人さん中国語分かるんですか!?」
「多少だけどね。ま、泣き止んでよかったぜ」
「有人、あんま甘やかすんじゃねぇ」
あんなの甘やかした内に入らんだろうよ。しかし飴1つで泣き止むなんて……………チョロいな!んで、
「案内してくれるかな?沢田少年」
「だああああっ!!此処もいねぇのかよ!」
「今日はヒバリが見つからないのなー」
「おかしいな、だいたいこの辺りにいるはずなのに………」
今並中の屋上にいるんだけど、面白いくらいに雲雀がいないんだよね。さっき応接室も見てきたし校内もほとんど回ってきたけどやっぱりいなかった。
「ごめんなさい有人さん、あの………」
「あぁ、いいっていいって。もしかしたら今日はそういう日なのかもしれないし」
「チッ、あいついつも嫌な時に限って出てきやがって…………」
「ははっ、獄寺はいろいろやらかしてるもんなー」
「うるせー野球バカ!10代目、今日のところはもう…………」
「う、うん…………でも…………」
あ、ちょっと待て。……………誰かこっちに来て、
「ねぇ」
「「「!!?」」」
「君達、何してるの?」
噂をすれば、ってヤツだな。そういう訓練受けてないだろうに気配消すのも上手だ、荒削りだけども。確かあの学ランは気合いで肩にくっついてるんだっけなぁ。
「!見たことのない顔だね、部外者は立入禁止だよ」
俺を見た瞬間トンファーを構える。え、何お前並中関係者の顔全部覚えてんの?それ何て記憶力。並盛愛の成せる技?
「ちょ、ちょっと待ってくださいヒバリさん!」
「嫌だ」
雲雀の振りかぶったトンファーを片足を軸にして避ける。が、雲雀もすかさず振り下ろしたトンファーを横凪ぎに払って対応。
反応速度がいいよね、それを一歩後ろに下がって再び回避する。あんまり大袈裟に動けないんだよ、ほら今ヒバード持ってるからさ。ちゃんと籠に入れてるけど。
籠っつーかバスケット?それにシュレッダーに入ってた紙屑入れてクッションにしてある。うん、かなりどうでもいい。
「ワォ。君、いいね」
「そらどーも」
「なっ!あいつ………」
「すげー………」
「すごい!ヒバリさんの攻撃全部かわすなんて………」
さてそろそろ本題に入るか。これ終わったら俺もようやくお役御免って訳だからな。持っていたバスケットを雲雀の前にずいっと差し出す。
「………………何?」
「こいつがお前の名前を言っていたから、沢田少年達に頼んで入れてもらったんだ」
「意味が分からないな」
「お前のじゃないのか?………この鳥」
バスケットをパカッと開ければヒバードが[ヒバリ、ヒバリ]と喋りだす。羽をぱたぱたと動かすがまだ傷が治っていないため飛ぶ様子は見受けられない。
「!……………何処に、」
「並盛高校。俺のダチがカラスにハンティングされそうなところを救出したんだと」
「……………ふぅん」
雲雀がトンファーをしまい片手をヒバードに添える。するとヒバードはその掌の上に収まった。
「………礼は言わないよ」
「んなっ!ヒバリてめえ………!!」
「代わりに、今此処にいることは見逃してあげる。早く出てってよ」
「あー、うん、おけおけ。把握した」
ツンデレ乙!おいしいです本当にありがとうございました。もう用は無いしそろそろ退散しようかな。しかしこの学校本当に何も変わってないんだな、逆に驚いた。
「3人共ありがとな。おかげで助かった」
「い、いえ!あんまり力になれなかったし………」
「そんなことねぇよ。んじゃ、またな」
「ケッ、もう二度と来んな!」
「まぁまぁ獄寺。そんじゃ」
「あ、はい。また………」
「そういや多村さ」
「んー?」
「あのひよこどうなった?」
「あぁ、渡してきたよ」
「マジで!?やべぇお前勇者だよ!」
「しかも無事生還してきた勇者じゃん!」
「いや、そんな大したことじゃなかったし………………それに、俺も1つ楽しませてもらったからな」
「「「?」」」
「……………ねぇ」
「へ、へい…………」
「これ、どういうこと?」
「自分にもさっぱり…………」
2人の見つめる先には、先日回復し元気に飛び回っている黄色い小鳥。
「ふぅん………そう、使えないな」
「あ、あの委員長!お待ちぐはぁっ!!」
制止をかける草壁を無視し、雲雀は自前のトンファーで殴りつけ応接室から出ていった。残されたのはヒバードと草壁だけで。
「しかし………何処でそんな言葉を……」
[モアイ、モアーイ!モア――――イ♪]
おわり。
―――――――――――――――――
樂亜様ー!ここここんな風でよろしかったでしょうか!!?駄文ですみません!
頂いたリクエストは、『空主と10代目ファミリーの絡み、雲雀多めで』と解釈させて頂きましたが!
冒頭に何故か高校生トリオが………すいません、私の趣味です←
しかも肝心の雲雀は中々出てこなくって、出てきても最後の方にちょこっとだけ……かなり逸れた感半端ないです。
そして10代目ファミリーのパイナポー達がいませんね!笹川兄もいない!+かなり雲雀さんとランボが偽者くさいとか………。
「こんなもん受け取れるかぁ!もっぺんやり直せボケ!!」と言って頂いても構いません………書き直し受け付けます。
それでは、一万打企画参加ありがとうございました!!
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