PM12:04

「よいしょー!」

「その掛け声はどうにかならないの?」

「その場の気分だよ、気分。では、諸君等の健闘を祈る!」

有人がそう言ってビシッと敬礼をすると、先程有人が呼び出した分身が四方へ飛び去っていった。

「うーん、そろそろ飯食っとこうかなぁ。しばらくは分身に任せとけば何とかなるだろうし」

「何処で食べるんだい?」

「それなんだよね、何処にしようかなぁ」

財布の中身を確認し出した有人は、ある物を見つけた。それは、

「ファミレスのクーポンか。よし、じゃあ此処に行こう」




PM12:35

「貴様!見つけたぞ!!」

「げ」

街中を彷徨いていた有人を見つけたのはレヴィだった。彼を目視した有人は嫌そうな顔をし、すぐさま走り出した。

「逃がさんぞ!!!」

当然レヴィは有人を追いかけていった。




PM13:06

「っはぁ………はぁ………ついに!ついに捕まえたぞ!!!」

30分の逃走劇を見事征したのはレヴィで、彼の下には何とか逃げ出そうと有人がもがいていた。あとは日暮れまで捕縛していれば自分の勝利である。オレを褒めてくれ、ボス!今の彼の頭にはそれしかなかった。

「あらぁ?まぁ!レヴィが捕まえちゃったのね!!」

身体を器用にくねらせつつ現れたのは別の場所で有人を探していたルッスーリアだった。

「あとは日が沈むのを待つだけだ。フン!スクアーロめ、ざまぁ見ろ!!!」

逃げ出せないようレヴィが有人を縛り上げている最中、もう1人の人間が現れた。

「あん?…………此処にも居たのかよ」

チッと舌打ちを隠さずやって来たのはベルフェゴール。彼は今中々にイラついているようだった。

「あらベルちゃんじゃないの!有人ちゃんなら見ての通りレヴィが捕まえちゃったわよ」

「バーカ。お前等気づいてねーのかよ?」

ベルフェゴールはそう言うと有人に向かってナイフを投げつける。成す術もなく取り押さえられている有人はそれに当たり、消えた。

「ぬっ!?」

「あら!」

「ニセモノだっつーの。さっきからこれしか居ねーし、あいつどっかに隠れてるんじゃね?」

「ならば、奴はいったい何処にいるというのだ!!?」




PM13:37

「イチゴパフェうまー」

「よく食べるね………」

「腹が減っては戦は出来ぬって言うだろ?今のうちに食べとかないと途中で腹減るじゃんか。まぁそろそろ出るけど」

たまたま財布に入っていたクーポンが使えるファミレスにてマーモンと有人は腹拵えをしていた。

「何かあったのかい?」

「分身3体ベルにやられたんだ。レヴィとルッスーリアもその場に居合わせてたみたいだからもうこれは使えねーや」

「他に残ってたりしないの?」

「あと3〜4体残ってるけど消されるのは時間の問題だな。元々囮程度の逃走能力しかないし」

くるくるとパフェ用の柄の長いスプーンを回しつつ有人は答える。つまり、ここからがある意味本番ということだろう。




PM14:15

「あら、この子も外れみたいねぇ」

「ぬぅ………奴は何処にいったのだ……」

有人にレヴィの電気傘が突き刺さったが、その有人もまたしても消えた。これで2体目である。

「やっぱり有人ちゃん建物の中なのかしらねぇ………」




PM15:13

「鮫特攻!!!」

放たれた渾身の一撃は空間を抉りついにスクアーロは有人の作った異空間からの脱出に成功した。が、辺りを見回しても人っ子1人居やしなかった。

「チッ、あいつ逃げやがったかぁ!」

悪態をつくスクアーロだが、視界の端を横切ったそれを見逃しはしない。注意深くそれを目で追い、その正体を突き止めた。

「ノコノコ戻ってきたかぁ。次は逃がしゃしねぇぜぇ!!!!」

それは己を忌々しい空間に閉じこめた張本人で。漲る殺気を抑えつつスクアーロは有人の後を追った。




PM15:49

「げ。全滅した」

町全体が見渡せる小高い丘陵。そこにマーモンと有人はいた。
彼等以外誰もいないこの場所で、唐突に呟いた有人にマーモンは尋ねる。

「君の分身かい?」

「そうそう。しかもスクアーロ出てきちゃったよ………これはちょっと不味いかもなぁ」

「すぐに来そうかい?」

「結構距離あるからそれはないと思うけど……あいつ等時に予測不能なこと仕出かすからなー………何とも言えない」

ヴァリアークオリティを備えている彼等がいつ、どんな奇襲をかけてくるのか………想定するのは容易ではない。

「でもま、そう簡単には此処に辿り着けないだろうけど」

この開けた場所に来るまでの道には有人が嫌という程罠を張り巡らせた。それ等に引っ掛からないように来てもある程度のタイムロスは否めないだろう。

「あと約2時間か…………」




PM16:00

「――――――――――――カス共が」




PM16:21

「チッ、いったい何だったんだぁ……?」

スクアーロが有人に剣を突き刺すと、有人は消えてしまったのだ。そんな時、

「あら!スクアーロじゃないの!」

「ルッスーリアかぁ。あいつは見つけたのかぁ?」

前方からルッスーリアがやって来た。あいつとは言わずもがな有人のことである。

「偽者なら見つけたけど本物はまだよぉ。本当に何処行っちゃったのかしらねぇ」

「他の奴等はどうしたぁ?」

「みんな手分けして探してるわ。…………そういえば、マーモンちゃんは見てないわね」

「あ゙ぁ?マーモン?」

ルッスーリアの言葉を受けてスクアーロは暫し考え込む。確かに、今日マーモンを見た記憶は無い。

「あいつ何処にいるんだぁ………?」




PM16:47

「うーわ来たよしかも仲良く全員で来るとかマジ無いわー」

町を展望できる高台にて有人はものすごく嫌そうな顔をしていた。そんな彼にマーモンが訪ねる。

「時間稼ぎの罠は張ったんだろう?」

「対単騎用ならなー。でも全員で来られたら張った罠の意味が薄れてくる」

「フォローが入ると無意味ってことかい?」

「そういうことー。現に予想してたよりも断然来るの早いからな。ま、二手に分かれて来なかっただけまだマシか」

「逃走経路は確保してあるんだ?」

「当たり前だろ?じゃなきゃどんだけ自信満々だって話。これはさっさと退散した方がいいかな」

そう言って有人は立ち上がり歩き出そうとして………止まった。一部始終を見ていたマーモンは怪訝そうに有人を見る。心なしか彼の顔はうっすらと青ざめていた。

「どうかしたのかい?」

「こ……の………気配、は……………」

「気配?何のこと…………あ」

数拍遅れてマーモンも気がついた。限り無くかき消えているが、この何とも特徴的な気配の持ち主を、自分達は知っているではないか。

「え、やばくね?つか、え?何で居んの?何で居んの!?」

後からやって来たレヴィとルッスーリアに有人は本格的に頭を抱えた。何だってこんな時に全員集合するんだ。有人の率直な感想である。

「どうするんだい?退路絶たれたよ」

「…………強行突破?」

「強行突破?この状況で出来るのかい?」

目の前の幹部達は各々の武器を構え殺る気満々といった様子であった。この中を突破するのは中々に辛いだろう。

「つっても4対1も無理あるじゃんか。マジで緊急事態とか笑えねー」

「本気出したら?」

「何でやねん。こんなアホみたいな事態に本気出すとかバカみたいじゃん!限りなくくだらねー!!」

「ごちゃごちゃうるせーぞぉ!!!!」

「スクアーロに煩いとか言われたくない!くっそこのまま挟み撃ちとか回避出来ないフラグは嫌だ!!」

「諦めるのかい?」

「まさか。退路が絶たれたなら、血路を開けばいいじゃない!」

そう言う彼の手にはヴァリアーステッキが。もう片方の手には符を数枚携えていた。

「しししっ、ハッタリだろ?」

「さーね。そいつは自分の目でとくとご覧あれってヤツだな」

有人は護符を手に構えたが、何かに気づいたのかその場を飛び退いた。すると一瞬の間を置かずそこへ銃弾がめり込んでいた。

「「「「「!?」」」」」

「最悪の事態発生とか…………」

無いわー、と呟きながら有人は弾丸の飛んできた方を見た。そこには予想していた人物がその手に銃を携えてかなり不機嫌そうにただずんでいた。

「…………ボス、」

「カスが」

XANXUSはピストルの照準をしっかりと有人の眉間に定めた。相当ご立腹のようである。そのあんまりな対応に有人は抗議の声を上げた。

「ちょ、俺被害者なんだけど!?むしろ標的にすべきはスクアーロとかスクアーロとかスクアーロとかそれからスクアーロがいるじゃん!!!」

「う゛お゛ぉい!!!!全部オレじゃねぇかぁ!!!!!」

「スクアーロうっさい!冗談じゃねぇ、俺イチ抜けた!」

有人は言うや否や目にも止まらぬ速さで何らかの印を結ぶと片足を踏み鳴らす。と、間髪を入れず辺りに地響きが鳴り響いた。

「なっ、」

「リボーンいつか必ずヘコますからな!そんじゃアディオス!!」

「んだこりゃあ!!?」

「鳥居か!?」

「地面から生える鳥居があるかっつーのバカムッツリ。てか何これ」

踏み鳴らした地面から朱塗りの鳥居が地響きと共に形成され、有人はそれを潜るとその場から消えてしまった。突如現れた鳥居も有人が潜ると同時に役目を終えたとばかりに空気に溶け込んで消えたのである。

「時間だぞ」




PM17:34

「!リボーン、」

「結局誰も捕まえられなかったか」

いつの間にかその場にはリボーンがいた。有人に逃げられたというのに、彼の顔はひどく満足そうである。

「ちぇ、有人コキ使いたかったのによ」

「そうねぇ。あーんなことやこーんなことさせたかったのにぃ〜」

「お前あいつに何させるつもりだったんだぁ……?」

「あいつの本気は引き出せなかったが、それなりに実力が見れたからな。相応の報酬は払うぞ」




所変わって、並盛神社。

「…………よし、おっけ」

周囲の気配を探り誰も居ないと分かって、有人はやっと安堵の息を吐いた。

「まさか、神の領域を使うはめになるとはね…………」

神の領域とは鳥居を潜ることで入れる彼の前世の時から存在する未知の領域である。鳥居同士で繋がっているので中を潜り抜け移動することも可能だが、神の領域に入ると人型のよく分からない物体が襲いかかってくるのだ。しかもそれが尋常じゃない程強い。実力の無い者が入ればあっという間に御陀仏、例えある者でも運悪く2体で襲いかかられたりかなり強いのにあたるとさようならというはっきり言えばリスクの方が断然高いハイリスクローリターンなとてもじゃないが喜べない場所。しかし使いようによれば己の修行の場として利用出来たり長距離移動の手間と時間が省けるのだ。とは言え好んで使う者はまず居ない。

「たぶんもう追ってこないよな………日、暮れてるし。はーぁ。やっぱ鈍ってんのかなぁ…………ちょいショック」

人気のない神社の境内で項垂れる彼の様子は誰がどう見ても異様でしかないだろう。

「…………つか、俺何だかんだ逃げ切ったけど報酬とかない訳?」

こうして、彼のやるせない逃亡劇は終幕を迎えたのである。


おわり。


―――――――――――――――――


えー、リクエストは『前世の忍スキルを駆使しつつヴァリアーから逃亡する空主』とのことでしたが……………ほとんど活躍の場がなかった前世スキルたちよ、安らかに眠れ(おい
ちなみに神の領域は実際にバサラのアイテムで存在します。それ装備して合戦に行くと敵が無茶苦茶強くなるので、そういうニュアンスをテキトーに使わせて頂きました。

というか最後の方本当にグダグダで申し訳ありません!返す言葉もございません!


そして更新も遅いとか救いようのないバ管理人ですね全く。


これからも当サイトをよろしくお願い致します!

リクエスト本当にありがとうございました!




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