「ねぇちょっと何これどういうことなのいったい何なの誰か説明プリーズ!!!」

「ししししっ、逃げんな!」


〜逃亡なう!〜


それは、昨晩にまで遡る。

「有人の実力が知りてぇ」

「それで何で此処に来るのさ。君の生徒にでもやらせとけばいいだろ」

「ツナ達じゃダメだ、有人の本気を引き出せる筈がねぇ。ヒバリが上手くやっても、一瞬本気出す程度だな」

ヴァリアーが取っているホテルに1人で堂々とやって来たのは次期ボンゴレ10代目の家庭教師にして晴の虹の赤ん坊、リボーンである。

「じゃあてめーがやればいいだろうがぁ」

「それじゃつまんねーだろ」

オレが、とリボーンはつけ加える。しかしそれは彼等の怒りを誘う言葉でしかない。

「ゔお゙ぉい!!!!てめえの茶番に付き合ってられる程オレ達は暇じゃねぇんだぁ!分かったらとっとと消えろぉ!!!!」

「そこでオレは考えた、ヴァリアーの幹部クラスが本気で追っかけたら有人の奴もちったぁ本気出すんじゃねーかと」

「無視かぁ!!!」

「報酬は高く積むぞ」

「僕はやろう」

「それだけかよ?何かしらこっちにメリットねーとやる気しねぇって」

「んじゃ捕まえた奴は有人を1日奴隷にしていいぞ」

「しししっ、オレ乗った♪」

「1日だけかしら?」

「じゃあ1週間だ」

「「「乗った」」」




そんな訳で、リボーンにより簡単なルールも作られた。それは、

・期限は有人が外出してから日の入まで。(外出時間が午前中の場合)もしくは翌日の日の出まで。(外出時間が午後の場合)
・その間に有人を捕獲出来た者が命令権を手にいれる。
・但し、有人が期限以内に再び逃走したら命令権は失効する。
・手段問わず。但し、殺さないこと。

以上の4点である。
ちなみにこの事実は有人に一切伝えられておらず、また知るよしも無いのであった。




AM09:00

「行ってきまーす」

「行ってらっしゃい」

久々に何もない休日、ボンゴレ関係も岡本達に振り回されることもない。つまり完璧なオフだ。何で外出てきたかって言うと天気いいからね。雨だったら部屋でゲーム三昧だろうけど、雲1つ無い快晴ならテキトーに出掛けてぶらついててもバチあたんねーだろ。勉強はまぁ、ね。何とかなるようにしてるし、たまには身体動かさないとさ。そういや何か新刊出てるかも、あとで本屋にでも……!え、あれ?

「…………ベル、フェゴール?」

有人の真正面の方向から全速力で走ってきたのはヴァリアー嵐の幹部にして某国の王子、ベルフェゴールだった。いったい何を追いかけているのだろうかと有人は辺りを見回すが、それらしき影は見当たらない。そして、

「ししししっ!オレの勝ちっ!!!」

「はぁぁああ!!?え、何?何で!!?」

あろうことかベルフェゴールは有人に向かってあの特徴溢るるナイフをぶん投げたのである。有人も咄嗟にそれを避ける辺り、流石元忍者といったところだろう。

「避けんな!!!」

「避けるわぁ!!!!何で俺にナイフ投げんだうわっ!今度は何だよ!!?」

「ゔお゙ぉい!!ベル、てめえ抜け駆けたぁいい度胸してんじゃねーかぁ!!!!」

「ししっ、うっせ!」

「スクアーロ!?何でスクアーロもいるんだよ!!?」

ベルフェゴールと言葉の応酬を交わしていた有人は再び気配を感じ、その場から飛び退いて距離を取った。すると、さっきまで立っていた場所にはスクアーロが剣を振り下ろしていたのである。そしてこの状況で彼に理解出来ることはただ1つ。

「あ!見つけたわよん、有人ちゃん!!」

「貴様!こんなところにいたのか!!」

(レヴィとルッスーリアまで来た!!!そんでどういう訳か全く理解出来んが……………狙われてんのは、俺か!!!)

「ミッションスタート、だぞ」

悪夢の始まりである。




AM09:31

「っはぁ………はぁ……何とか振り切った……けど、」

せっかく今日は晴天だから、と思って出掛けたのに何と幸先の悪いスタートなのだろうか。とりあえず白昼堂々剣やらナイフやら電気傘やら振り回す彼等を全力で殴り飛ばしたくなる衝動に駈られても致し方無いだろう。

「つーか、何で俺を追っかけてくるんだ?ボンゴレ式の何かか?」

「気になるかい?」

「!マーモン、」

「安心しなよ。僕は君を捕まえるつもり、無いからさ」

「捕まえる…………?」




AM09:47

「えーと何?つまりはリボーンによる策略だってことなの?」

「平たく言えばそうだよ」

「どうしよう、マーモン…………今すごいリボーンに対して殺意が湧いたよ」

「リボーンはそういう奴さ、相手にしたら負けだよ」

某カフェテリアの外からちょうど死角になる席に、マーモンと有人はいた。事の経緯を聞いた有人の手に握られた空の紙コップがぐしゃりと潰れる。

「あれ?でもそうなると、マーモンも金積まれたから俺を捕まえなきゃいけないんじゃね?」

「本当はそうなんだけど、君に僕の技は効かないだろ?だったら君が逃げ切る方に賭けた方が足しになる」

「うん、いろいろ聞き捨てならない言葉があったんだけど。賭けって何?」

「ヴァリアーの平隊員達と誰が有人を捕まえるか賭けをしていてね。僕は君が誰にも捕まらず逃げ切る方に賭けたんだよ。だから有人には頑張ってもらわないと」

「どんな不純な動機であれ、俺の味方してくれるのはすっげぇ嬉しいよ!だけど、今俺はヴァリアーステッキを持ってないのがネックだよなぁ……………」

「そう言うだろうと思って、僕が事前に持ち出しておいたよ」

マーモンのマントの下からするりと見慣れた棒が出てくる。紛うことなき有人のヴァリアーステッキだ。

「うっそマジで!?じゃあ俺んちに不法侵入したことはとりあえず見逃すよ!マーモンありがとう!!大好き!愛してる!!」

「僕はそんな言葉よりお金が欲しいんだけどね」

「俺大してお金持ってないんだけど。あ、何か奢ろうか?」

「じゃあキャラメルマキアート、一番大きいヤツね」

「げ………まぁ、いいや」




AM10:33

「それで、これからどうするんだい?」

「んー………まぁ、リボーンのお望み通り本気出してやろうかな」

「ふうん」

「ちょっとだけだけど。それよりもほら、マーモンあれやってくれない?何だっけ、あのずびーっとやるヤツ」

「粘写のことかい?」

カフェテリアを後にしたマーモンと有人は工場跡地へと来ていた。どうせ最後は戦闘に縺れ込むだろうから人がいない所で、という有人なりの保身である。

「そうそうそれそれ。よろしくな」

「本当は別料金貰いたいところだけど……君が逃げ切らないと話にならないからね、今回は特別だよ。いくよ………粘写!」

ずびーっ、とマーモンが鼻をかみペーパーを広げる。そこには地図のようなものが映っていた。

「ム、こっちに誰か来ているな」

「マジかー。初っぱなから戦闘フラグとか無いわー…………」

「本気出すんだろう?」

「それでもちょこっとだけだってば。あ、マーモン援護頼む」

「これ以上は別料金だよ」

「えー………何か奢るから、さ。な?頼むよー」

「じゃあ今度はフラペチーノにしようか」

「勘弁してくれー。…………この気配、は……………スクアーロかな」

有人がそう言った瞬間、物陰から何かが飛び出してきた。とてつもなく耳障りな音と共に。

「ゔお゙ぉぉい!!!!見つけたぜぇ!!!」

「うわ、見てよマーモン。あの悪人面」

「有人、それ元からだよ」

「そういえばそうだった」

「ゔお゙い!!ぶっ殺すぞてめえ等ぁ!!!!」

「え、流石の俺もスクアーロに殺される程落ちぶれちゃいないぜー?そんな訳で、」

一瞬で素早く印を結ぶ。それはかつて自国を守るため国境付近の森に張り巡らせていたものと同じで。

「!?何処に消えやがった!!?」

「しばらくさ迷っててなー。行こ、マーモン」

「へぇ、面白い術だね」

「久々に使ったからちゃんと出来るか微妙だったけど、杞憂みたいだったなー。とりあえず、スクアーロ撃破っと」


つづく




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