メローネ基地最深部(20/64)


「沢田綱吉、大空のボンゴレリングをこちらに寄越しなさい。さもなくば毒ガスを注入します」

「無駄な時間稼ぎはやめなさい。あなた達に選択権は無い」

「これは交渉ではない、命令だ」

銃口を向けられ、仲間達の命を握っているスイッチに手がかかる。この状況でツナに為す術は無かった。

「3つ数える間に大空のボンゴレリングを渡しなさい」

「ちょっと待ってよ!君達チェルベッロでしょ!?なんでミルフィオーレに味方してんのさ!」

「3」

「このクソ女が!オレ達を人質に取ったつもりなら大間違いだぜ!!10代目!オレ等に構わずそいつ等をやって下さい!!!」

「で、でもそんなこと出来るわけ……」

「2」

「うわっ!」

「やれ沢田!どうせそいつ等は大空のリングを奪ったあとオレ達を始末する気だ!」

「っで、でも………」

「10代目ぇ!」

「オレ達に構うな、やれ!!」

「1」

「ひぃっ!……………あれ?」

沢田に向けられた銃口が火を吹くことは無かった。何故なら、その銃身にはいつの間にか棒状の刃物が突き刺さっていたからである。

「な…………あっ!」

「!?………何者だ!!?…………うっ!」

「え?え?何これ!!?」

「……………どうやら、味方みてーだな」

するといきなりチェルベッロの2人が呻き声をあげて倒れた。しかし、何処にも人影等見当たらない。

「大当たりー」

「え?……………あ、」

背後から声がして沢田がそれに振り向いてみれば5日前に映像で無事を確認した人物だった。

「ゲームオーバーにゃまだ早いだろ?沢田少年」

「有人さん!!…………あ、そういえばチェルベッロは…………」

「あぁ、大丈夫。気絶させただけだから。…………それより、」

有人の目が今の今まで対峙していた入江正一に向く。そう、まだ油断は出来ない状況なのだ。

「もたもたするな!早く入江を倒せ!」

ラル・ミルチがカプセルから叫ぶ。しかし有人はその声に応えなかった。

「入江正一…………君?さん?まぁどっちでもいいか。安心してよ、俺結構把握してるからさ」

「!?てめえ、裏切んのか!!?」

「とんでもない。とりあえずチェルベッロは外に放り出しとくよ?」

そのまま有人はチェルベッロの2人を担ぎ上げて研究所の外に文字通り放り出した。
誰も有人の意図が読めず、疑心暗鬼にも陥る。

「有人、さっきの言葉の意味はどういうことだ?」

「うーん、そこら辺の説明は全部入江君に一任した方がいいと思うよ。まぁ今俺がこの時代にいるのは10年後の俺の指示だから………としか言えないな」

「その指示にいろいろ書いてあった訳か?」

「その通り。でもごめんなー、本当はちゃんとアジト行くつもりだったんだよ。思わぬ邪魔が入ってさぁ、スクアーロとかスクアーロとか」

「い、いえ来てくれただけで嬉しいです………」

「入江君、非常用電源入らない限り此処の音声とか画像は送られないから………話してくれるよね?」

有人が入江を見る。その視線を受けた入江は上着を脱いで地面にへたりこんでやっと口を開いた。

「ふぅ………よく此処まで来たね……。君達を待ってたんだ。僕は君達の味方だよ」

「お、オレ達の味方って…………」

「うん、そうなんだ。………こういうのは本当は苦手なんだよ…………堅苦しくて」

「じゃあ、味方ってどういうこと?だってあなたはミルフィオーレの幹部で、オレ達の敵で………」

「落ち着け、ツナ」

「だって…………」

「油断しないで下さい!10代目、また罠かもしれません!」

「そうだ、奴を拘束しろ沢田!」

カプセルに囚われた獄寺とラル・ミルチが叫ぶ。

「あーもう………急に信じろって言っても無理なのは分かるよ…………だけど、話を聞いてほしいんだ」

場の流れはかなり入江に対して不利に働いていた。それを見かねた有人が口を開く。

「とりあえず、先に俺が来た経緯でも話しとこうか?」

「頼んでもいいかな、有人さん………」

「年上の人にさんづけされるとむず痒いなぁ。そんじゃ俺が何で10年後のこの時代に来たか………話してあげるよ」






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