差し迫っていた(3/40)
HRも終わり、あっという間に放課後。
「はー……やあっと終わった〜」
「これから予備校か……………はぁ」
「あ、俺掃除あるからちょっと待ってて」
「んー分かった」
授業の大半を睡眠に費やしたおかげかそこそこ眠気は吹き飛んだ。
どんな場所、時間、体勢でも寝れる特訓を昔にしたからだろう、うん。
自分の席に座って掃除が終わるまで待つ。
復習でもしとくか………。
「テメェこの期に及んでまだ悪あがきするつもりか?!」
「うるせ。文法とか得意じゃねーの俺は」
もちろん英語の話だ。古典なんて生きた時代が時代だから得意分野でしかない。
でも英語は口語的なものならまだ出来るけど、書くのはそんなに出来ない。つーか一廻りしてる間に忘れたわそんなもん。
だから熟語とかも得意ではないし、文法ならではの言い回しなんざ言うまでもない。
「………あーあ。それにしてもあと数ヶ月で此処ともお別れ、か」
「清々するな」
「しがらみから解放されるってことか」
「お前等何で俺を見ながら言うんだよ?!」
そりゃあお前が俺達に余計なことしたりなんか押しつけたりしまくったからだろう、jk。
言ってやるつもりは更々ないが。
「来年の今頃何してんだろ………」
「さーな。ま、生きてんだろ」
「多村氏アバウトすぎー。たぶん俺は来年受験の奴等にざまぁ見ろ!(^Д^)m9って笑ってると思う!」
「性格悪いな」
「最低だな」
てーか話かけてくんなよ。集中出来ねぇ。
いや、むしろそれが目的か。だいたい俺とお前志望する大学も学科も違うのに何なんだよいったい。邪魔したところで敵減らねぇだろ。
ただ邪魔してあわよくば引きずり落とそうって魂胆なのかそうなのかどうなんだ岡本よ。
………………それよりも、
「………佐藤遅くね?」
「今日に限って大掃除とか」
「それは無いだろ。ゴミ捨て押しつけられたとか?」
「あいつじゃんけん頗る弱さだもんな…」
余談だが佐藤は本当にじゃんけんに弱い。
あいつが勝ったところなんて3年間で片手で数えられる程度でしかしらない。
大人数でじゃんけんしてもまず負ける。
奴にとって一人負けなんて日常茶飯事、夢はじゃんけんで一人勝ちすることらしい。
なんて小さい夢だ、と思うかもしれないがそう言って夢を語る佐藤をその場にいた全員が哀れみの視線(という名のエール)を送る程に弱いんだ………。
むしろ奴にじゃんけんで負ける方が難しいから、佐藤にじゃんけんで負けるといいことが起こると密かに噂されていた。
そんな理由によりこの学校で佐藤を知らない奴はいない。佐藤と言ったらまずこのじゃんけんに弱い佐藤が挙げられる位には。
「いい加減にやってるとこ先生に見られた……とか?」
「あぁ、それはあり得る」
「はぁ……ったく……………ん?」
「どーしたよ多村」
「!ま、まさか持病の「まず俺に持病は無い」聞けよ最後まで!!」
希薄だが、なんか凄い気配がしたけど……気のせいか?何て言うか常人の出すそれじゃない…………まさか、昨日の?
でもあの二人とはまるで違う気配だからな……いったい何なんだ?
「廊下がざわついてるな」
「有名人来校ー、とか?」
「そしたらざわつきかたが違うだろ。廊下出てみるか?」
「面倒くさそうだから却下」
「面白そうじゃん行こうぜ!」
「よし1人で行け岡本」
「この薄情者共ぉ!ウサギは寂しいと死んじゃうんだぞ?!」
「お前兎じゃねーじゃん」
「で、どっかの誰かが馬鹿やってる間に教室の手前までざわつき始めたぞ」
うちの学校にざわつく要素あったか?有名人の母校、って訳でも無し。他には……まぁ受験前ってんでストレスに弱い奴がぶっ倒れた、とかか。
むしろこっちの可能性のが高いな……この階3年の教室しかないし。
それにしちゃざわめきかた変だけど。緊迫、というよりは戸惑い的な感じ。
あと誰か倒れたような気配も雰囲気もしない。
← →
もくじ