真実(32/40)
「………と、まぁそういう経緯を経て俺は君のこと知った訳だ」
「……そん、な…………」
少女の顔は青を通り越して土気色になっていた。青年はそれを笑みを浮かべつつ見ているだけで。
ボンゴレの古参の同盟ファミリーが、ボンゴレを乗っ取ろうとしている。その資金援助を裏社会進出を目論む財閥がしていた。
さらにその財閥自体も兵力を集めていた。いくら9代目が穏健派と言われていても見過ごせる事態では無かっただろう。
「違う………違うの、あたしはただ、」
「そうだよね。君が戦力を集めた理由は他にあるんだから」
青年の言葉に少女はただただ目を見開くばかりだった。そんな少女を横目に青年はまた口を開く。
「危惧してただけなんだよね………いるかもしれない自分と同じ人間をさ」
「な、に……を…………」
「ここまで情報が入ってくるとね、簡単に推測がつくよ。その古参のファミリーはどういう訳か知らないけどきっと古い時代に
ボンゴレから託されたであろう風のリングを持っていた。それを知った君は自ら風の守護者に立候補した。
守護者っていう正当な理由があればいくらでも君はボンゴレの近くに居れるからね。そして古参のファミリーと君の財閥はそれを好都合と取った訳だ、
娘が親身にしてれば疑いの目を向けられることも無いだろうって具合にさ。
それから古参のファミリーが風のリングを君に託そうとイタリアから日本へ移動する途中何者かに襲われ風のリングを盗まれそうになった。
死に物狂いで奪取したもののそれは完全な風のリングではなくハーフボンゴレリングという形だった……ってことだろ?」
ヒクリと少女の喉がなる。それに対し青年は「あ、図星なんだ?」と呟いただけだった。
「何で………どうして?どうしてそんなことあなたが知ってるの…………」
「どうして、か。さっきも言った通りこれは俺の憶測でしかない。君がどういうつもりでボンゴレに近づいたかは知らないけどね………まぁ知る気も無いんだけど。
ハーフボンゴレリングを手渡された君は相当焦ったはずだ、自分も争奪戦に強制参加なこと………いや、それよりも相手が予測不能なことにかな?
知らない上に、知りようもなかっただろうし」
青年は徐に立ち上がり少女を見下ろした。暗闇で顔は陰り青年の表情は伺えない。
「君は恐れた。知っている通りに事が済めばいいけどそれを保証するものは無い上にその通りになるとは限らないからね」
その言葉で少女は弾かれたように顔を上げ青年を見上げる。毒に侵され思考が鈍っていたが、青年は何度も言っていたではないか。
「まさ、か………あなた………!!」
「そして、」
少女の言葉を遮るように青年は声を発す。例え少女がそれに気づいたとしても………もう、遅い。
「君はもし自分が守護者になれなかった時の保険として戦力を集めた。相手の風の守護者を………………」
少女の首に青年の武器があたる。
「消すために」
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