暴かれるもの(27/40)
カツ………カツ………と鳴る靴音。はしたなくも地べたに座り込んだ少女はそれに恐怖しずるずると後退る。程無くして背中に感じる違和。
自らを追い詰めてしまったことに後悔しても今更、である。
「やだ………来ないで………!!」
恐怖のあまりか出す声もほんの小さいもので。気づいてもらいたくても誰も気づかないだろう。手に持つそれの弦は切れ、既に弓としての機能を失っている。
矢も全て射尽くしその体は正しく絶体絶命と言ったところだろうか。腕に装着したそれにも自分の姿が映る様子は無い。
「あぁ、この辺りを映すカメラはさっき全部壊したから。今此処は完全な死角だよ」
「気づかなかった?」と、そう言ってにっこりと笑う青年。最早彼女には死神にしか見えない。
そしてその瞳は絶望に塗り潰されており身体は毒に侵され思考も儘ならなかった。
しかしそれは向こうも同じと思っていた。だが、違った。
「俺、さ。毒に耐性あるんだ。だからこの程度なら特に問題無いんだよね」
そう言いつつも近づいてくる青年―――多村有人は、自身の武器である棒を片手で弄んでいた。
「リストバンドのマイクも壊したし………友達を助ける為に奔走してる君の仲間達は気づかないだろうね」
手を伸ばさずとも触れる距離まで来て彼はしゃがみこんだ。ちょうど、彼女と視線を合わせるように。
「君のこと、実は人伝に聞いてたんだ」
何を考えているのか伺えない、闇を凝縮したような瞳を向けられる。彼女は彼から何も感じ取ることが出来なかった。
「君………財閥の御令嬢なんだってね?」
ヒュッと息が鳴る。
どうして、それを。
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