継承、騒乱(7/10)
「受け継いでもらうよ、]世」
9代目がそう言って沢田少年に例の小瓶を渡そうとした。途端、会場に響き渡る嫌な高音。あー耳再起不能になりそうな位痛いんだけど!耳が良すぎるのも考えものだなこりゃ……そして続く爆発。もうどうにでもなーれ☆って感じ?……ま、目と耳封じるのは常套手段だよなぁ。そんでもってこの状況は俺にとっても都合が良かったりする。いやだって流石にこの世界じゃあり得ないことするからね、しかも1人でする訳だから印を組みながら詠唱が必要になっちゃうから誰かに聞かれたり見られたりされないこの状況はやっぱり俺にとっても嬉しい訳さ。
「9代目!!」
どうにかこうにか収まったみてーだな、あー耳痛ぇ……9代目がちょっと軽傷負ったか。まぁ結界は張り終えたし、あとは様子見で大丈夫かな……俺今動けねぇし。
「た、大変です!!金庫が…破られています!!」
「なに!?」
「そんな!!」
「ありえん!!7属性の炎のシールドはどうした!?」
「破られたようです!!」
敵の目的は罪の奪取、か。そして7属性の炎に対抗する手段を持つってことか。…………要するにお守りを7属性対応版にしなかったら山本は無事だったかもしれなかった訳で。え、何この釈然としない気分……せっかくカスタマイズしたのに全部パァかよ。うわぁ凹むわこれは………。
「7属性の炎で守るなど罪の場所を教えているようなもの」
「え…?エンマ…君…?」
「罪≠ヘ返してもらうよ。この血は僕らシモンファミリーのものだからね」
「何を…言ってるの?」
「聞いての通り罪≠手に入れるために、我々はこの継承式へ来た」
「罪≠ェ…目的……!?」
「…ま…まさか……山本をやったのって………」
「そう、僕らだよ。どうしても必要なものだったんだ。……力を取り戻して…………ボンゴレに、復讐をするために」
「お前達が…山本を!!」
沢田少年が死ぬ気になったってことはここから戦闘開始ってことだよなー。でもまだ戸惑いは隠せてない、か。さっきの友が今は敵状態だからしょうがないんだろうけど。まぁ最終的に彼等は俺かヴァリアーの奴等で始末するとして、今は沢田少年達に任せるか。あとでやりきれない思い抱えられるよりは全然いいし。
「初代のシモンボスは……ボンゴレT世に裏切られ、見殺しにされたんだ。ボンゴレファミリーはこの戦いの記録を隠すため抹消した。しかもそれだけに飽き足らず、シモンの独断行動により戦局が劣勢になったと敗戦の責任を全て生き残ったシモンファミリーに被せ戦犯扱いした」
「ま…待ってくれ。そんな話は聞いとらん!!シモンファミリーとは大昔に友好があったが、自ら海外へ向かったファミリーだとしか…!!」
珍しく9代目が焦ってんな、たぶん超直感で何か感ずるところがあったんだろう。確かに、奴等が嘘を言ってる感じはしない。ただこれは奴等が真実だと思い込んでる嘘も入っちまうんだよなぁ……つか正直T世は意味深なとこあるけど、そういうことするような人間には見えないし。仮にもしそれが事実だとしたらシモンは相当やばいことしてたんじゃないか?謀反でも計ってたとかさ。
「どうだいツナ君、君の体には裏切り者のボンゴレの血が流れているんだ」
「なっ、てめーなんてことを!!」
「ボンゴレの血が流れているのは否定しない。過去にボンゴレファミリーとシモンファミリーの間に起きたことも今のオレには確かめられない。絶対ないとは言い切れない……だが、それでも1つだけ命をかけて言えることがある。ボンゴレT世は、そんなことをする男じゃない!!」
「ふざけたことを!!まるで会ったことがあるかのような物言いだな!!」
「貴様等ボンゴレの話などに耳を貸すつもりはない。話のは我々だ」
「シモンファミリーは、ここに宣言する。古里炎真が10代目のシモンボスを継承し、ボンゴレへの復讐を果たすことを誓う。そして世界中のマフィアを再組織化し、マフィア界の頂点に君臨する。この戦いは、シモンの誇りを取り戻すための戦いだ」
そりゃ会ったことあるからな。てか古里がボスなのか……いやそれよりも力を取り戻す、ってどういうことだ?罪は何かしらの力を秘めてんのか?………って、は?指輪に罪垂らして………あ、これはあかん。
「何で初代ボンゴレが、私達シモンをこの世から抹殺したか分かる?」
「それは我々の先祖が持っていたボンゴレに対抗しうる力を恐れたからだ。それこそが大空の7属性に対をなす、大地の7属性!!!」
っ……おー、ギリセーフ。獄寺君が匣兵器を出して最悪の事態は免れたっぽい。そしてやっぱりこれ1人でやるべきじゃないな!まだ動けないんだけど!!破壊光線ですら1ターンしたら動けるっつーのに……どんだけー。
「大地の7属性!?」
「そうだ。この力ゆえシモンはボンゴレの兄弟ファミリー足り得た。そして、この力ゆえボンゴレに恐れられ裏切られた。この炎はシモンの誇りを取り戻すための炎」
「……お前は、間違ってる。お前達の辛い過去も、怒りの理由も分かった。だが人を傷つけることは誇りを取り戻すことじゃない!!」
……あれ、あの指輪もしかしてボンゴレリングと同等かそれ以上の力持ってないか?そして風見まりかは特に何も所持してないけど、あの子何で居るんだ?大地の炎は7種類なんだろ、ハブじゃねーか。
「アーデルハイト、下がっていて。僕1人で充分だ……ツナ君と守護者を潰すのは」
そう言って古里が指をくいっと動かすと沢田少年以外が壁や天井に減り込む。……遠隔操作?たぶんと言うか確実にあの籠手のおかげだろうけど。そして風の指輪が微妙に反応してるんだけど……まぁまだ隠せそうだな。つか皆の指輪ぶっ壊れたし。あ、もしかして、引力の操作が出来るのか?グラビデ的な感じで。てかお守りェ………完全にただのストラップじゃねーか!お、そろそろ動けそうだな。
「やめろ!!!」
「最初に会った時は封印をし忘れていてね。僕も驚いた」
「なぜだエンマ!!お前みたいな奴が何故こんなことを!!」
沢田少年が本格的に戦い始めると彼の指輪と古里の指輪、そして俺の持つ風の指輪が共鳴し出した。うん、隠してた意味皆無だわこれ。懐から取り出せばやはり完全にリンクしている。俺は炎灯してないのに……てか、灯したらどうなるんだ?
「やっぱり貴方が持ってたのね」
「は?」
「惚けないで、風の指輪のことよ。それはシモンの物よ、返しなさい」
そう言って風見まりかは俺に掌を向ける。ちょい待てツッコミが追いつかん!とりあえず、だ。
「この指輪は、ボンゴレのだろ」
「ボンゴレが奪ったのよ!元を正せばシモンの、」
「それだけは無いな。あり得ない」
「そんなの根拠も無しに……!!」
「逆を言わせてもらえば、シモンの物だという根拠も無いだろうが」
「あるわよ。シモン=コザァートの遺品の内、1つだけ空きがあった……それが今貴方の持っている風の指輪よ」
嘘を言ってるようには見えない。が、仮にシモンの物だったとしてどうしてこの指輪はハーフボンゴレリングの形を取っていた?そしてシモンの物だったら、T世の手によって覚醒する訳がない。ただ確かに、今の原型に戻った風の指輪はボンゴレリングよりもシモンリングによく似ている……本当に、どうなってやがる……。
「ツナ!!」
「う゛お゛ぉい!!そこまでだぁ!!」
「外野はひっこんでろ」
「チッ、」
天井から迫る氷柱は結界で、床から迫る氷柱はヴァリアーステッキで薙ぎ払う。つか沢田少年だいぶ劣勢……というか本気で戦えてんの?あれ。
「!有人!!」
「悪いこた言わねーからマジ下がっとけって」
「貴様…!!」
「帰ろうアーデルハイト、簡単に殺しちゃいそうだよ。一瞬で殺してしまったら、シモンが背負わされたのと同じ苦しみを味わわせられない」
沢田少年が完全にダウンしたか……まさか大空の指輪も壊されるとはなぁ………7^3って特別なもんなんじゃないの?まぁ、そんなことよりあいつ等はまだ帰す訳にはいかねぇんだよ。
「………?何だ……外に出れんぞ!?」
「どういうことだ?」
「何で……こんなこと、なか……まさか、貴方!」
風見まりかがハッとして俺を睨めつける。あーぁ、やっぱりこいつ俺とおんなじイレギュラーかよ。とりあえず、だ。
「態々敵地に乗り込んではい、さようならって帰してもらえるとでも思ったか?」
「何だと……!?」
「ま、せっかく乗り込んだ敵地だ。ゆっくりしてけよ」
風の指輪についてじっくり聞かせてもらおうか。
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