カウントダウン(5/10)


リボーンに召集されて、それなりに急いで沢田少年宅に向かう。メールじゃなくて電話だったし、何かあったんだろうな。まぁ、継承式まであと2日だしな………ちなみに昨日、一昨日は特に連絡とかもなかったから行ってないんだよね。ほら、何か忘れ去られてそうだけど俺今をときめく受験生だし。未来に勉強道具持ってきゃよかったかなー………する暇なかったな、そういや。あとちょうどいいからみんなにあれも渡しておこうかな。あれってあれな、お守り。

「どっ、同盟ファミリーがやられたって!?」

階段を上がっていると聞こえた沢田少年の声。なるほど、だからリボーンは召集かけたのか。………とりあえず輪に入るか。

「お邪魔しますよっと」

「遅かったな」

「あ、有人さん!」

集まってんのはまぁぼちぼちって感じだな…………お守りはまた今度渡すか。何つーか、ね。みんな揃ってる訳じゃないし。それよりもやられた現場は工場跡地か………行ってみっかな、確認したいこともあるし。




「此処、か」

気配を絶ち死角から工場の敷地内へと入り込む。陣を組むように何人か立ってるからたぶん術師が幻術で何とかしてんだろうなー。いつも通り俺には効果ないけど。ん、昨日の今日だけど現場は保存されたまんまか。流石に仏さんはいないが………でも俺の予測通りか。状況証拠しかないから口外するつもりはないけど、でも彼等をマークした方がいいんだろうなー。さて、用も済んだしとっとと退散しますかね。





ついに明日が継承式かー。てか知らされたのが遅すぎて何の実感も湧かねぇんだけど………まぁ、何にも無いのが1番だな。つー訳で今日は予備校です。何度でも言うけど俺、今この瞬間に将来かかってるから!手遅れとか言うなよ、絶対に裏社会就職とかそういうフラグはバキバキに折ってみせるかんな………!!

「――――――つまり、ここで出た値を問題で与えられた式に代入し…………」


パ、キン。


「!」

何だ、今のは。どうして。まさかそんなことが、

お守りが、壊された?





ちょっと、いやかなり自分でも分かるほどテンパってる。前でもお守りを使いきる、ってことはあったが壊されるなんてことは無かった。壊れる要因として考えられるのは1つ………致命傷とも呼べる一撃をお守りで防ぎきれなかった。他には考えらんねーな………ちゃんと7属性の炎に対応するようカスタマイズは済ませてあるのに。どうしてお守りが壊れるんだ?とりあえず壊れたお守りを持ってた奴が死にかけなのは確定事項………最悪死んでるかもな。まぁそれを確認するため授業を脱け出し後は分身に任せて非常口から外へ出る。受付には監視カメラあるから映るとアウトなんだよ、場所は………並中か?とにかく急がねーと。




並中についてみれば場所を探らずとも血の臭いで特定出来た。こんだけ臭いが濃いってことは出血多量って訳で。頼むから死ぬなよ………!!

「!多村、」

「笹川兄か、ちょうどいい。救急車は呼んだか?」

「既に呼んであるぞ!!」

「そうか。無理に回復させなくていい、出来るだけで構わないから表面の傷だけとりあえず塞いでくれ。あとなるべく周り弄らないようにな」

「あ、あぁ。わかった!」

俺が現場に着くと既に笹川兄が居た。回復系がいるのは助かる。うーん、山本は何か書き残したみたいだけど……消されてんな。犯人にとっちゃ不味いこと書いてたんだろうけど。でもま、残ってるとこも僅かながらあるからそこから割り出すしかないよなぁ。んで救急車も呼んでるから一応は問題なし、あとは足と頭の位置上げておくか。保温は………流石にこの上に毛布掛ける気にはなんねーぞ……どうすっかな。あ、お守りは先に回収しておこう。色々調べられたりすると面倒だからな。




「ちゃおっス」

「おー、待ってたぜ。リボーン」

救急車が着たときに山本と一緒に笹川兄を付き添いで押し込んだ。救急隊員に状況説明したし、付き添いは必要だったろうし。何よりもあの時は早急に病院に連れてく必要があったから誰も文句言わなくて助かったわー。流石に笹川兄に詳しい状況説明させるのは酷だろうしね、特に目の前の赤ん坊はとことん追及するだろうから。

「………おめー、何か今失礼なこと考えてなかったか?」

「そこはかとなく気のせいだろ。現場はだいたい保存してあるぜ」

「何でだいたいなんだ?」

「そりゃ俺が来る前に笹川兄が居たからな。お察し」

「なるほどな」

そう言えばリボーンは後ろに控えてた奴等に入れと促す。もしかして噂のボンゴレ科学班か?ってーか、

「わざわざボンゴレまで行って連れてきたのか?」

「ちげーぞ。そもそもオレは連絡貰うまで9代目のところに居たんだぞ」

あー、それでついでに連れて来たってことか?まぁ遅かれ早かれ科学班は現場検証やらで此処に訪れてただろうな。

「9代目は………どうだった?」

「ピンピンしてたぞ。何だ、お前気にしてたのか」

「そりゃあんな遭遇の仕方すればなぁ……」

9代目はリボーンの話からするとしっかり回復したらしい。回復やけに早くね?晴の炎でも使ったんかな。

「つか何で9代目のところに?」

「ツナが10代目にならねーとか世迷い言吐きやがってな」

「それは俺にとっても願ったり叶ったりだけど………まぁ、時期が延びるだけで何も変わんねーよな」

「分かってんじゃねーか」

「まだ諦めた訳じゃねぇけどな………んー、やっぱ手掛かりになりそうなもんはほとんど無いなー」

「この血文字以外、か?」

「だな」

山本の血で書かれたであろうでりとと≠ニいう文字。あいつの指先にも血が付いてたから書いたのは山本…もしくは山本を襲った犯人、か。

「日本語じゃないんだよなー。古典にもそんな言葉聞いたことないし漢文も違う、英語で近いのはdeleteか?………でもスペルローマ字読みだと違うしなぁ……って、リボーン?」

それだとでれと、だもんなー。とか考えてたらリボーンがニヤッと笑った。何だ、その意味深なニヤリは。

「でかしたぞ、有人」

「マジでか」

どうやらリボーンには血文字の謎が解けたらしい。




「アーデルハイトの言う通りだ。だとすれば結局また犯人は分からずじまいか……」

「ちいっ!」

「くそ!!」

「いいや、犯人を見つけることは可能だぞ」

「どうもー」

「リボーンさん!!」

「有人さん、」

病院までリボーンと一緒に連れてきてもらい、沢田少年達と合流した。やれやれ、当然のことながら空気が質量持ってるんじゃないかってくらい重たいな。あ、シモンの奴等も来てたんだ。風見まりかもいるし………ふむ。

「山本が襲われた現場の部室へ行って犯人の手掛かりを探してきたんだ」

「手掛かり?」

「それであったんスか?」

「あった。………ただしすぐに犯人が分かる訳ではねーし、ちっとボンゴレの機密に関わるんでな。悪ぃがシモンは席を外してくれねーか?」

「ボンゴレの…機密?」

「我々も教えてもらった方が協力しやすいが、」

「もちろん協力が必要ならしてもらおうと思ってる。すまねーがここは外してくれ。気をつけて行動しろよ、お前達が狙われる可能性もある」

「わかりました」



「で…リボーンさん、どんな手掛かりがあったんスか?」

シモンの彼等が待合室から出た所で獄寺君が話を切り出す。念のため結界張っとくか、話聞かれるのもあれだし。まぁ盗聴器っぽいものは無いみたいだからそんなに心配してないけど。

「山本は意識を失う間際に血でメッセージを残してたんだ」

「!!」

「大部分消されてたんだけどね。たぶん犯人が証拠隠滅したんじゃないかな」

「ちっ……」

「だがその横に小さくひらがなで書かれたでりとと≠チて文字が確認出来た」

「でり…とと?」

「わけわかんねーだろ?消した奴もそのわけわかんねー文字は見逃しちまったんだな。オレも最初は分かんなかったが、ローマ字にしてみるとdelittoとなる。これはイタリア語で罪≠ニいう単語だ」

アルファベットの日本語読みは日本人ならではのことだよなぁ……つかリボーンよく気がついたなぁ。でもこれ英語だったら俺も気づいたかなー。流石に伊語話せるとは言え罪なんて単語必要無いから知らんかったし。

「しかし罪と言われても……どう手掛かりに?」

「ここからは一部のボンゴレ幹部しか知らない最高機密だ。罪≠ニいうのはボンゴレのボスが継承式で代々受け継がれる小瓶の名称だ。罪≠ニはT世が忘れてはならない戦いの記憶を後世に遺すために、ボンゴレリングと共に自分の後継者に継承させたボンゴレボスの証だ。伝承では小瓶に、その忘れてはならない戦いで流された血が封じられていると言われる」

「そんなものがボンゴレに…」

「だがなぜその文字を、山本は残したのだ…?」

「犯人は罪≠ニ関係している。恐らく奴の目的だな。そして罪≠ェ目的ならば、罪≠ェ表に出る……つまり第三者の目に触れるのは継承式の時だけだ。犯人は必ず継承式に現れる………もっとも、行われればの話だがな」

ボンゴレに罪なんて大層なもんがあったとはねぇ……てかやっぱり俺忘れすぎじゃね?何か……こいつ等と関われば関わる程忘れてるよな?だからこそ藤河茉莉の存在が必要、って考えられなくもないなぁ。そして沢田少年は本当に継承しないって言ったんだなー。ちょっと意外だ、いやだってすごい流されやすいじゃん?

「行わ…れれば?」

「何を言ってるんです?」

「ツナはボンゴレのボスを継がないと決めた。継承式は中止だ」

「「「!!」」」

「10代目…」

「沢田…?」

「オレ……9代目に継承式を開いてもらう。犯人はきっとまたオレの友達を…仲間を襲ってくる。それだけは許さない!山本をあんな目にあわせた奴を……絶対に捕まえるんだ!!オレは継承式へ行く!!」






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